2017.10.26
Dan Burger 著

自動車サプライ チェーンにおけるIBMi議論の応酬

米国の製造業は、いくつかの大変革を経験しつつあります。IBMのミッドレンジ コンピューターは、サプライ チェーンにおける制御装置の役割を果たしてきました。自動車産業のサプライ チェーンがその良い例です。しかし、この伝説的なITプラットフォームの車輪は、脱輪しかけているのでしょうか。先のことを考えている下請け製造業者は、モダナイゼーションか、マイグレーションか、という問題と、頭の中で激しく格闘しているところです。

テクノロジーとアーキテクチャーとコストは、バランスのよい組み合わせが必要です。それから、意思決定に影響を及ぼす、協力会社、信頼できるアドバイザー、顧客フィードバック、および企業合併・買収という不確定な要素もあります。IBM iは、この変化の海をどのように旅して行くのでしょうか。

IBM iは、かつてほど支配的な存在ではなくなっているように思われます。ほんの10年足らず前には、1次請けおよび2次請け自動車部品製造業は、ほとんどがIBM iの顧客でした。けれども、インストール ベースは浸食されつつあります。X86上で稼働するSAPやMicrosoft AX(旧Microsoft Dynamics)へのマイグレーションは増加しつつあり、IBM iと、MAPICSやFuture 3などの従来のERPシステムがその犠牲となっています。何年か前、Infor社はMAPICSをXAという名前にリブランドしましたが、今でも広くMAPICSと呼ばれているようです。同社はまた、Future 3についてもリブランドを行い、AutoReleaseという製品名に変更しています(同製品は、自動車産業向けに特化して開発されたInfor Automotive Essentials製品スイートの一部になっています)。

これは奇妙な話です。というのも、このシステムは、 Infor、 Epicor、 JD Edwards、 SAP などのソフトウェア ベンダー製のERPと組み合わせて使用することで、自動車サプライ チェーンに属する企業が、より正確かつタイムリーな資産管理を利用して、在庫を削減し、輸送費を削減し、材料不足によるライン停止を削減し、輸送ミスを削減し、応答時間を向上させるのを支援してきたからです。要するに、このシステムはサプライ チェーンを円滑に動かすという最も望ましいメリットをもたらすということです。パフォーマンスについてはしっかりした実績があります。

「私はERPを変更しようとする企業を何社も見てきました。他システム上でより安価でより良く稼働できるからというのがその理由です。しかし、マイグレーションを行った結果、より安価にまたはより良くなったというケースは実際、目にしたことはありません」と、Laura Ubelhor氏は先週の『 IT Jungle 』との電話インタビューの中で述べています。Ubelhor氏は、自動車サプライ チェーンに属する部品メーカーに対してコンサルタンティング業務を行っている Consultech Services社のオーナー兼シニア コンサルタントです。「後になって企業が実感することが多いのは、以前のシステムに比べて機能性が低下してしまったというものです。調達のプロセスでは、機能性は見落されてしまいます。実装のためにより多くの資源が投じられる程、より長い期間が掛かるのが一般的です。そして、完了したら、それをサポートするためにさらに多くの人員が必要になるのです。」

SAPではEDIコンポーネントが弱点であると彼女は指摘します。また、ほとんどの企業が行っているカスタマイゼーションの多さがしばしば問題を引き起こしている、と言います。そうした問題は、ERPシステムのマイグレーションを進めている間、軽視または無視されています。彼女は、ある企業が7年間に及ぶMAPICSからAXへのマイグレーションの泥沼にはまり込むのを見てきました。未だにマイグレーションは完了しておらず、AXシステムが以前のシステムのカスタムメイド機能に匹敵するほど十分には堅牢でないことも明らかになりました。そうこうしているうちに長年アップグレードを行ってこなかったせいで傷んでいたMAPICSシステムのサポートのために、彼女の会社にお呼びが掛かったということです。また、別の企業では、X86上のSAPへのマイグレーションを計画し、2年間そのプロジェクトに取り組んだところでプロジェクトの無期限延期を決め、IBM i上でのJD Edwardsの稼働へ戻したというケースもあります。 大混乱が予想できるのにもかかわらず、企業はSAPやMicrosoftが描いたERPの虹を追い続けています。IBM iとIBM iベースのERPは、iと強い結び付きを持ち、手持ちのもので十分間に合ってきたと認識している自動車サプライ チェーンのメーカーのもとに残されます。しかし、流出は続き、ERPベンダーもIBMもそれを食い止めることはできそうにありません。Infor社およびJD Edwards社には大きなIBM iインストール ベースがありますが、それぞれの製品ポートフォリオで重きを置いているのは、両社とも、非IBM iソリューションです。そのため、IBM iが提供するメリットを説明するための努力はほとんどなされません。

これはIBM iの側の問題です。IBM iのいわゆるマーケティング戦略の多くは、ソフトウェア ベンダーをはじめとするビジネス パートナーに押し付けられてきました。IBMは、大きなIBM iインストールベースを持つERPベンダーにIBM iの販売を促進してもらうことには成功していません。ずっと以前には、ベンダーとIBMミッドレンジとの間に、今よりはるかに密接な結び付きがありました。

自動車サプライ チェーンをめぐっては、もうひとつの大きな動きがあります。企業の合併・買収が世界規模で繰り広げられるようになったことで、ITに関する意思決定権は、IBM iをよく知らないことも多い、これまでとは異なるエグゼクティブたちの手に移ってしまっています。

「IBM iからのメッセージを聞く必要があるのは、忠実なIBM i支持者だけではありません。メッセージは、iを知らない、あるいはiを理解していない聴衆に届かなければならないのです」とUbelhor氏は述べます。「IBMとIBM i ERPベンダーには、進んでこの難題に取り組む気概があるでしょうか。」

2008年、IBMは「 The Smarter Supply Chain of the Future」と題するレポートを発表しました。レポートの結論は、グローバリゼーションの傾向について取り上げ、それに備えるよう組織に助言するという内容でした。

「今日、自動車会社は、世界的な業界の大転換の渦に巻き込まれています。事業に関するほとんどすべてのことが変わりつつあります。製品やサービス、販売形態、法規制、さらには業界の基本的なビジネス モデルまでもがそうです。こうした巨大な変化の渦中に置かれているのが、自動車サプライ チェーンなのです。自動車会社が、健全な活力ある企業としてこの転換期を切り抜けられるかどうかは、サプライ チェーンがどの程度適応できるかによるところが大きいと言えます。スピードと効率性の向上は助けになりますが、それで事が足りるわけではありません。自動車サプライ チェーンが必要としているのは、どのような将来シナリオがもっとも起こりそうであるか予測するための事実をベースとした知見であり、また、前もって自らの態勢を整えられる柔軟性なのです。今は、これまで以上に、スマートさが成功を勝ち取るために求められる時代になっています。」

モダナイゼーションかマイグレーションか。組織は、どちらを選ぶにせよ、成功を勝ち取るのに十分なくらいスマートさを持ち合わせているでしょうか。

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