AS/400展望台

特別インタビュー:フランク G. ソルティス氏
米IBM AS/400(iSeries)チーフ・サイエンティスト



解説・対談者:Seamus Quinn(ベル・データ株式会社の独占ライセンス契約先、Duke Communications Inc. UK首席編集者)

iSeries界でのフランク・ソルティスは、ビル・ゲイツ、ステイーブ・ジョブ、そして ラリー・エリソンにすら匹敵すると言えます。彼は多くの人からAS/400の「父」とみなされていますが、それ以前からIBMロチェスターにおいて、ビジネス・コンピューターのシステム 3Xシリーズ、とりわけAS/400の前機種であるシステム/38で目を見張る職歴を経験してきました。
たとえば、エリソンのように、フランクもコンピューター分野以外にその情熱を注いでいます。フランクの場合、ハイパフォーマンスなスポーツ・カーのレースに熱中しているのです。ただし、違いはあって、これら比較的若い理想家たちが、自社企業の著名な表看板なのに対し、フランクは60年代に大学を卒業して以来の生っ粋のIBMer(IMB社員)なのです。もちろん、IBMのような巨大企業にそれほど長期にわたって勤務していなければ、「オブジェクト指向」という用語が流行語になるずっと前に、システム/38の礎を築いた高レベルのマシン・インタフェースのような理想的なアイデアが浮かぶチャンスなどなかった、ということは覚えておかなくてはなりません。事実、彼の近著『Fortress Rochester』では、ユニークなアイディアや革新性に溢れたミネソタ州にある一種の社内企業が、誹謗・中傷と闘うという内輪話が描かれています。
多くの最近のIT革新者と同様、フランクは優れた伝達者であり、どんな技術レベルにある聴衆でもiSeries ― これまでで最も成功したビジネス・コンピューターであることに異論はないと思いますが ― に夢中にさせてしまう術を持っています。彼の著書『Inside the AS/400』は2版に達し、AS/400の分野を始める人たちにとってのバイブルとなりました。筆者が10月にロンドンで彼と最後に会ったとき、『Inside the AS/400』の続編、『Fortress Rochester』が出版されたばかりでしたが、フランクもまた翌日に控えたPower4チップ・テクノロジーに関するIBMの発表におおわらわでした。

SQ:『Fortress Rochester』と、『Inside the AS/400』の先の2版とはどのように違うのですか?

FS:システムの初期の歴史や従事した多くの人たちのことを繰り返して描くことだけは避けたかったのです。これらについては『Inside the AS/400』で十分説明したからです。近著では、もっとiSeriesの観点から描きたいと思いました。ですから、前著の時点ではまだ開発すらされていなかった新しい話題をいくつか取り上げたいと思ったのです。そういうわけで、たとえばLinuxに関してまるまる1章を当てたいと考えました。多くの人が「なぜLinuxにまるまる1章を当てたのか。このことは、本当にそれほど重要なことなのか。」と疑問をぶつけてきました。
このことに注目すると、2つの点が挙げられると思います。私にとって、当システムの最も重要な部分のひとつとは、他社製オペレーティング・システムの稼動を可能にするいわゆるハイパーバイザーと呼ばれるものに構築したという事実です。他社製オペレーティング・システムの最初のものが、たまたまLinuxであったわけで、将来どうなるかは誰も分かりませんが、このまま行けば、現在のOS/400の下のWindows NTやWindows 2000とは対照的に、OS/400と並行して稼動する他社製オペレーティング・システムが現れるだろうと予測しています。Windows NTやWindows 2000は専用の個別プロセッサー上で稼動していますが、実際にはOS/400の下で稼動しているのです。それに対して、Linuxは事実上対等です。つまり、両方(OS/400とLinux)とも対等なオペレーティング・システムであるからこそ、Linuxに対して1章すべてを費やしたかったのです。

SQ:ご著書を拝読する限り、Linuxにはかなり否定的だと思っていました。

FS:うーん、全く否定しているというわけではないのですよ。現時点でのLinuxに対する私の見方とは、その本来の価値がまだ証明されていない、ということなのです。そうは言っても、Linuxの存在と同様、Linuxに対する活用もまだ見られます。たとえば、ファイアウォール・サポートは、多くの顧客が実行している重要事項のひとつと見て取れます。使おうと思えば、実に多くのインターネット関連のサポートが存在します。たとえば、ウェブ・サービング、ファイアウォール、メール・サーバーなどが挙げられます。そして、確かにLinuxのその分野での価値は実証済みです。私が抱いている疑問 ― これは私だけでなく、多くの人も同様だと思いますが ― とは、これがどこまで行くのか、ということなのです。現在、明らかにIBMや他社は莫大な数のアプリケーションをLinuxで稼動させようと躍起になっています。中には成功するものもあるでしょう。これがAS/400やiSeriesのショップでどれだけ成功を収めるかは、まだ未知数です。ですから、まったく否定するつもりはない一方で、大きな可能性を秘めてはいるものの、システムに構築できるものとして ― 私がお話しできるのはこのハイパーバイザーについてですが ― もっと注目される価値があるかもしれないものが他にもたくさんあると申し上げたいのです。
この本のどこかで簡潔に記述したポイントのひとつで、多くの人たちが気づいていることとは、我々の息子の一人が、こともあろうに頑固なUnixで、ストレージ・エリア・ネットワーク向けのソフトウェアを開発する自身のソフトウェア会社を経営している、ということです。今日、ほとんどのストレージ・エリア・ネットワークはUnixシステムを使ったもので、その結果、そのソフトウェアはオペレーティング・システムに完全に沿ったものとなるため、文字どおりすべてのUnixオペレーティング・システムを牛耳ることになります。私はこれを私流に「では、Linuxはどこの身内になるのか。」と人に喩えて使うのですが、Linuxの立場というのは非常に単純です。Linuxは、5〜10年前にAIX, Solaris, HP UXなどがあった家系に属するのです。もちろん成熟の必要はあります。そこで私はこう尋ねます。「これが何を意味するのかい。つまり、何が足りないのかね。」すると、彼は答えます。「そうだね、もしAIXのような特定のオペレーティング・システムを選ぶつもりだったのなら問題ない。その重要な部分はLinuxとまったく違うわけではないからね。しかし、AIXやSolarisなどに構築されるツール、インタフェース、ユーザー機能のすべては、どんなLinux製品で見られるものよりもずっと先進的だろう。これこそが、我々がLinuxとともにやらなければならない分野なのだ。もうそういう段階に入っているのだ。後2、3年もすれば、どうなるかが分かるだろう」

SQ:Linuxとの問題はクライアント側にあるように思われます。業界の弱さにかかわらず、たとえばSMEに対しては、たとえサーバー側がどういう状態にあっても問題はないと思います。しかし、たとえば、AS/400ではLinux向けのクライアント・アクセスは存在しませんね。

FS:ええ、まだです。まったくおっしゃるとおりです。クライアント側だけを見れば、Windowsはデスクトップになるでしょう。これを変えるには、大改革が必要になると思われます。が、私はそのようなことが起こるとは思いません。確かに、個人的に、またIBMの多くの人間にとってLinuxはサーバー・オペレーティング・システムです。そこがぴったり来るところなのです。

SQ:この本で大変興味深く思うことのひとつが、孤立した『Fortress Rochester』精神について驚くほど率直に語られているという点なのです。まったく手心を加えていらっしゃいませんね。なぜ今がそのことを世間に明かし、語るべきときだと感じられたのでしょうか?

FS:1996年当時を振り返って ― 実際には1995年の終わりに始まったと記憶していますが ― 我々が現在使用している共用ハードウェアや共用プロセッサーを導くことになった大掛かりなタスク・フォースについて少し立証してみたのです。当時起こったことのひとつに、IBMがプロセッサーの設計などについては他社と競合できる立場にないということが、多くの取締役たちにとって明白であったということが挙げられます。当社には卓越したセミコンダクターの技術こそありましたが、それを流通させる能力がなかったのです。その原因の一部は、創立者のトム・ワトソン・シニアーが当社の設立当時に作り上げた体制でした。

ワトソンは、競合する製品が社内に複数あるべきであると堅く信じていましたから、ある市場に2つの開発グループを参入できそうだと思えば、これら2つの開発グループを前後して市場に参入させ、まったく同じ製品を出すようにしてきたのです。すると、場合によっては、これら製品のうちのひとつだけしか日の目を見ない、ということが起こりました。つまり、社内に競合が存在したのです。本書で挙げた一例がシステム/3モデル15です。(システム)370ラインのロー・エンドとシステム/3ラインのハイ・エンドとの間で、皆さんが呼ぶところの競合交換が起こったわけです。

別の状況で言うと、4つの製品を発売して、どれを選択するかは市場に任せるというのがワトソンのやり方でした。その結果、我々は常に社内競合精神を持たされることになったのです。つまり、ロチェスター研究所はオースチン研究所と競合し、オースチン研究所はエンデコット研究所と競合し……という具合でした。どう説明して良いか難しいのですが、社内でIBMが社外のことについて話し合うことはありませんでした。しかし、とにかく、社内的にはそういう立場をとっていたのです。

ガスナーの経営参加でその状況が変わったのですが、彼の改革のひとつが、ゲリー・ヨークという財務の専門家を連れて来たことでした。彼はさまざまな問題を解決するためにクライスラーから引き抜かれたのです。彼の理念のひとつは、収入をベースにした開発に資金を投じるべきである、ということでした。このようなことがきっかけになって、社内でのメンタリティーが変わり始めたわけです。

そして、1996年当時、我々全員は依然として自分たちの作業に没頭していました。Rochesterに居座り、独自のハードウェアやすべてのソフトウェアを開発していたのです。その他の事業所も同様でした。我々は業界では競合していなかったのです。この特別なタスク・フォースで次のように結論しました。「いいですか、特にハイ・パフォーマンス・プロセッサーの設計分野で競合力をつけるつもりなら、その最も強力な競合相手はIntel、というかIntelだけですが ― 他社は脱落しましたから ― 当社の全研究所は一致団結して作業にあたらなければなりません」このレポートは1996年に経営陣に戻され、承認されました。ここでの最初のステップとは、RS/6000を担っていたテキサス州オースティンの製造部門を実質的に、また開発部門を現実に閉鎖し、そのすべてをロチェスターに移行することでした。その当時、我々は実質的にはAS/400を担っており、1997年にはAS/400のハードウェアに着手していました。AS/400上でAIXをロードし、そのボックスの名称をRS/6000と変更したのです。我々は1997年以来この作業を続けています。このこと、つまりこの要塞のようなメンタリティーに対する理由の一部はこういうことであり、だからこそ我々は非常に優れた製品を開発してきたわけですが、それと同時に、企業としても変わらなくてはならないことが多々あるということも強調しているのです。

SQ:ご著書の中で、IBM内の全プラットフォーム上で稼動するような製品を作るという初期の試みをかなりこきおろしていらっしゃいますね。

FS:AS/400を最初に発売したときのプランのひとつは、システム・アプリケーション・アーキテクチャーと呼ばれるようなものだったのです。これをSAAと名付けていました。SAAは、ユーティリティー、ツール、アプリケーションなど、何でも構いませんが、ソフトウェアのある一部を取り出し、当社のプラットフォームすべてで作動させるというアイディアだったのです。ここでの誤算とは、4台の別個のインプリメンテーションがあるとすると、それらを同様に維持しておくチャンスはゼロである、ということです。そこで私は ― 私のバックグラウンドは常にエンジニアとしてのものなのですが ― 同じハードウェアさえあれば、問題は解決すると理由づけたのです。私が90年代初頭にPowerPCに進むべきだと強く推した理由のひとつは、これこそが答えであると本当に確信していたからです。その答えこそチップそのものなのです。PowerPCにいったん書き込めば、それをどこででも稼動させることができます。今日の一例を挙げるとPASEの稼動になります。PASEはUnixのランタイムです。純粋なAIXランタイムなのです。したがってAIX上で稼動するものであればすべて ― 文字どおり何でも ― AS/400とiSeries上でも稼動することになるわけです。

SQ:あなたは、IBMの中でiSeriesとpSeriesが事実上同じものであるとおっしゃっている数少ない人たちのひとりです。この2つが収束することはあり得ますか?

SF:そうなるのを見てみたいものです。技術的に言うと、この2つにはハードウェア ― I/Oプロセッサーですが ― にわずかな違いがあるため、現時点でその段階にはないのです。ですから、技術的な機能から見て18ヵ月以内かそこらでこれら2つの製品をひとつに収束することは可能です。今のところIBM内では収束するという決定はありません。現時点では、別々の製品のままにしておこうということになっているのです。

SQ:iSeriesに従事している人たちが心配していることのひとつとは、実際にこれら2つの製品ラインが統合されたらどうなるだろうか、ということだと思うのですが。

FS:これらが統合されたらどうなるか、ですって。そうなったらもっと多くの可能性が実際には出てくるでしょうね。我々はOS400がどうなるか、zOSがどうなるかについてお話ししているわけではありません。後2、3年もすれば、これら3機種(iSeries、pSeries、zSeries)をすべて統合することすら可能になるでしょう。統合できないのは、IntelベースのxSeriesだけということになります。しかし、他の3機種はすべてPowerPCの方向で稼動しています。したがって、簡単な見方をすれば、近い将来訪れるものとはPower4に関する発表であると言えます。これは、新規のプロセッサー・テクノロジーを使った通称Regattaと呼ばれる新しい物理ボックスのpSeriesの大型発表のことです。ところで、これこそが、来年早々iSeriesに導入されるまさにボックスとプロセッサーのテクノロジーなのです。

ここに注目すればお分かりのように、pSeriesも論理区画への第一歩を踏み出すことになります。pSeriesがiSeriesやzSeries並みの論理区画レベルに達するには、まだリリースを何度か改訂する必要があるでしょう。では、4つの論理区画を持つpSeriesとiSeriesがあるとしましょう。まずは第1次区画が必要であるということはお分かりですね。その1次区画を特定のオペレーティング・システムでロードすることで、システム全体の個性を決定することができるのです。もし私がiSeriesの顧客だとして、IBMがこれらを統合するとすれば、すぐにボックスを ― 小型、中型、大型のうち好みのものを ― 買いに行きます。そのボックスをビジネスに取り入れて、こう言うでしょうね、「これはiSeriesになるんだ」と。1次区画をOS/400でロードするだけで放っておきます。2次区画はOS/400でも、Linuxでも、AIXでも構いません。好みのものを選べるのです。しかし、そのボックスはiSeries風になるわけです。

同様にpSeriesにすることも可能です。「これをpSeriesに変えたい」と思えば、まず1次区画をAIXでロードし、2次区画にOS/400や他の任意のものを入れればよいのです。したがって、お客様には膨大な数の可能性を提供できることになります。この著書で私が見てみたいものとして指摘したもう一つのこととは、今すぐ始まるプランではありませんが、Windowsです。実際、私はここ何年かMicrosoftの社員と共同で、いわゆるサーバーとかグッド・サーバーとか呼ばれる64ビットのインプリメンテーションをPowerPCに移行しようとしているのです。

SQ:なぜそんなことをやりたいのですか?そうなったら、Microsoftが本当に世界を征服してしまいますよ!

FS:いいじゃないですか。これについては、当社の取締役たちと社内で話し合ったことがありますが、その結論とは「なぜ我々はそれをしたいのだろうか。」ということでした。テクニカルな詳細部分をお話しするつもりはありませんが、PowerPC側と同様、Intel側も一定の基準では評価できない部分があるからです。私が常にとってきた見方というのは、どこかで誰かがやったことだとしても、その誰かではなくIBMの社名をそれに付ける方がいい、ということなのです。

ですから、もし世の中で巨大なWindowsサーバーを望んでいるお客様がいるとしたら、IBMにはそれを供給する義務があるのです。さらに、我々に託されているもうひとつのこととは、iSeriesのお客様が区画にWindowsを入れられるようにすることなのです。今日では、区画をインストールするダイナミックな機能があるということはお分かりでしょう。この作業の大部分は向こう数年間で自動化される予定ですから、我々は自動化したロード・バランスなどを実現しなければなりません。それをお使いのWindowsサーバーに適用することもできるでしょう。



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