AS/400展望台

OS/400 V5R2におけるiSeriesの論理区画化



1台のiSeries上で複数の独立したワークロードごとにプロセッサ、メモリ、ディスクを割り当てて実行させる方法
エイミット・デイブ著

企業向けサーバーのパフォーマンスが向上し続けるにつれて、複数のワークロードを独立して実行できるようにパフォーマンスを分割させたいという要望も増えてきています。こうした理由により、サーバー統合を可能にし、iSeriesユーザーがサーバーの稼働率を最大限にするための鍵を握るソリューションの1つとして論理区画化 (LPAR) が急速に注目を浴びています。論理区画は1台のサーバーを複数の独立した仮想サーバーに切り分け、それぞれの仮想サーバーに自身のハードウェア、オペレーティング・システム、アプリケーション環境を与えるものです。

1998年にLPARがAS/400サーバーに導入されてから、840や890を使用している顧客の48%以上がこの技術を利用しています。OS/400 V5R1のリリース以後、単一プロセッサ・モデルを含む820サーバーおよび270サーバーでのLPARの利用は急激に増大しています。iSeriesのユーザーはLPARの適用に関していろいろアイデアを練り始めたようです。ここでは、LPARの最も一般的な使用方法をいくつか紹介します。

オンデマンド区画パフォーマンス

LPARを利用することにより、1台のiSeriesサーバー上で複数の独立したワークロードに、それぞれ別々のプロセッサ、メモリ、ディスクを割り当てて実行させることができます。OS/400 V5R1はプロセッサおよび他の入出力資源を動的に移動させる機能を導入し、さらに1つの物理プロセッサから複数の仮想プロセッシング・ユニットを持った区画を作成する機能も備え、iSeriesのLPARにとってはブレークスルーとなるリリースでした。この機能は共有プロセッサ・プールと呼ばれる革新的な機能強化であり、これによって、iSeriesのユーザーは1つのプロセッサを最大で10個の区画、1プロセッサあたり最大4個のOS/400区画で共有することができます。しかもLinux区画の作成時には0.01プロセッサしか必要としません。

区画が共有プロセッサ・プールを使用できるようになれば、わずか0.01プロセッサで仮想プロセッシング・ユニットを区画間で移動することができます。さらに、(820などの)単一プロセッサ・モデルを利用しているiSeriesのユーザーは複数の区画を作成して追加のプロダクション用ワークロードやテスト用ワークロードをサポートすることができます。共有プロセッサ・プールの考え方は(AS/400上ではなく)iSeriesサーバー上でのみサポートされています。したがって、AS/400のユーザーは論理区画あたり最小1つのプロセッサを必要とすることに変わりはありません。

iSeriesのナビゲータ・グラフィカル・インタフェースで提供されている簡単なツールを使用すれば、プロダクション区画でワークロードがピークに達している間に、プロセッサ全体やプロセッサの一部をある区画から別の区画に移動することができます。特定の時間に資源の移動をスケジュールして、たとえば、一日の終わりや週末、月末のタスクなどといった重要なワークロードを管理することができます。

たとえば、システム管理者は、毎週金曜日の夜にプロセッシング資源とメモリ資源をテスト区画からプロダクション区画に移動して、週末のプロセッシングが完了した後の月曜日の朝に、資源をテスト区画に戻すスケジュールを組むことができます。

同様に、区画間でテープ資源を切り替えることによりテープ・バックアップの並列性を最大限にすることができ、全体のバックアップ保存操作を大幅に削減することができます。

LPARのサポートはキャパシティ・アップグレード・オンデマンド (CUoD: Capacity Upgrade on Demand) オプションと統合されています。CUoDを利用すると、iSeriesユーザーは、予想外のパフォーマンス要求に対処したり、各段階におけるCPUプロセッシング・パワー全体を増大させるためにさらなる細分性を必要とした時、特別なプロセッシング・パワーに即座にアクセスできるようになります。
仮想プロセッシング・ユニットの資源を動的に移動する機能はV5R1でOS/400区画に導入され、V5R2ではLinux区画にも拡張されました。こうした資源の他にも、iSeriesユーザーは仮想OptiConnectを有効にしたり、仮想イーサネットLANを有効にしたり、バスの所有権を変更したりするといったことを、それによって影響を受けるOS/400区画を再起動することなく行うことができます。

柔軟なワークロード管理

LPARは、複数のアプリケーション、オペレーティング・システム、タイム・ゾーンを、1台のサーバーに統合するための堅牢でコスト効果の高いソリューションを提供します。通常は、別々の区画を使用して異なるタイム・ゾーン、言語、システムおよびネットワーク属性、多重階層アプリケーション、オペレーティング・システムからなる複数の地理ロケーションを統合します。また、区画を使用して1台の企業向けサーバーで複数のビジネス・ユニットや複数の企業に対してサービスを提供することもできます。

OS/400 V5R2でのLPARの柔軟性に関する主な機能強化の1つとして、IBM WebSphere Commerce SuiteとWebSphere Application Server (WAS) 用の新しいサブ・キャパシティ価格設定があります。従来、WASはプロセッサ単位の価格設定になっていたため、32ウェイのマシンでは単一プロセッサ・マシンの32倍の料金を支払うことになっていました。新しいサブ・キャパシティの価格設定では、WebSphereを実行している区画で使用しているプロセッサ数分 (フル・プロセッサ単位に切り上げ) だけ支払えばよいことになりました。

たとえば、4ウェイの820で0.9プロセッサ・ユニットと0.8プロセッサ・ユニットのサイズの2区画でそれぞれWASを実行させている場合、割り当てられているプロセッシング・ユニットの総数は1.7になります。この場合2.0プロセッサ分のライセンスが必要となり、プロセッシング・ユニットの総数が2.0を上回らない限り、2つのWebSphere区画間で資源を柔軟に移動させることができます。
この柔軟な価格設定により、iSeriesのユーザーはWebSphereを大規模な統合iSeriesシステム上に導入して、Webトランザクションを提供するのに必要な要件を最小限のプロセッサで満たすことができます。

LinuxとLPAR

LPARのもう1つの主な使用方法は、WebSphere技術、Lotus Domino、受賞歴のあるIBMのPowerPC Linuxインプリメンテーションなどといった新規技術や新しいオペレーティング環境の利点を活用する方法です。

LinuxサーバーをiSeries上に統合することの最大の利点は、管理がより簡単になり対費用効果も高くなるということです。1台のiSeriesサーバー上に、最大で31の別々のLinux環境をサポートすることができます。iSeriesのLinux区画には専用入出力、仮想入出力の両方のオプションがあり、柔軟性に富んだ入出力を提供しています。

専用入出力では、Linux区画は、ディスクやLANアダプタなどといった資源を所有し、管理します。専用入出力を使用するのが適しているのは、(ファイヤウォールなどといった)完全に別の資源管理を必要とするような区画です。

一方、仮想入出力はコスト効果のよりいっそう高い統合入出力戦略を提供し、記憶装置やLANアダプタはOS/400が所有し管理するものの、Linuxが「仮想的に」利用することが可能になっています。仮想入出力を利用することにより、LinuxはOS/400が持つRAID-5やミラーリング、バックアップなどといった記憶装置管理上の恩恵を得ることができます。また仮想入出力は、専用のハードウェア資源を必要としないような、小規模で柔軟性の高いLinux区画から始めるような場合にも適しています。

OS/400 V5R1では、iSeriesのLinux区画は、OS/400区画上の仮想ディスクへのアクセスや、OS/400区画に直接接続されている入出力機器へのアクセスなどがすでに例外的にサポートされています。OS/400 V5R2も読み取り専用の共有仮想ディスクをサポートしており、アプリケーションやデータのコピーを別々のディスク上に複数持たなくても、複数のLinux区画がそれらのアプリケーションやデータへのアクセスを共有できます。さらに、iSeriesのLinuxディストリビューションではファイバー・チャネル・ドライバ用やマルチポート・シリアル・デバイス・ドライバ用の直接入出力サポートが追加強化されています。

OS/400 V5R2は仮想プロセッサ・ユニットをOS/400区画とLinux区画間で動的に割り当てる機能をサポートしており、iSeries上のLinuxをさらに機能強化しています。この機能強化により、iSeriesユーザーは小規模なLinux区画から始めて、Linuxサーバーやアプリケーションを再起動することなく、必要に応じてキャパシティを動的に追加することができます。

V5R2では、Linuxアプリケーション開発者のために、64ビットLinuxアプリケーション用のLinuxライブラリ・サポートなどさまざまな新しいオプションが提供されています。LinuxアプリケーションのiSeriesデータとアプリケーションへのアクセスをすでに提供しているJDBC接続がサポートされているのに加えて、V5R2ではiSeriesのDB2 UDBへのODBC接続もサポートされています。さらに、LinuxのSAMBAファイルシステム・アクセスが、iSeriesのWindows Network Neighborhood (iSeries NetServer) 経由で、IFSや出力キューでも利用できるようになりました。iSeriesのLinuxインプリメンテーションもまた、IBM Java 1.3.1をサポートするようになりました。

さらに、Linux区画上でのビジネス・アプリケーションの増大を促進させるために、IBMはPowerPC Linuxインプリメンテーション上でWASとDB2 UDBをサポートすることを表明しました。こうした主要なミドルウェア製品を使用することにより、ユーザーは、LinuxとOS/400をより緊密に相互運用させるアプリケーションを持つLinux上に、堅牢なビジネス・ソリューションを構築することができます。iSeriesの内部仮想イーサネットの超高速接続性は、アプリケーション接続性に必要な接続構成を既に提供しています。

高速な区画間通信

LPARで複数のワークロードを統合する際に重要となる要件は、ワークロード間での高速なデータ・アクセスを提供する機能です。iSeriesサーバーは、仮想イーサネットおよび仮想OptiConnectと組み合わせることにより、高速リンク (HSL: High Speed Link) の帯域幅を最大限に活用して、データ・アクセス用やデータ転送用の高速でセキュアな最適化された区画間通信を提供します。

こうした仮想ネットワークは、相互に通信を行う複数のホストに関連した外部ネットワーク・トラフィックの低減に大きく寄与するばかりでなく、Webサーバー、ODBC、JDBC、ジャーナル管理、分散データ管理(DDM: Distributed Data Management)、ファイル・サーバー、プリント・サーバーなどといった高速なデータ・アクセスに依存したアプリケーションに対して大幅なパフォーマンスの向上をもたらします。

OS/400の有料オプションである仮想OptiConnectは、OS/400の区画間をポイント・ツー・ポイントで高速にシングル接続します。仮想OptiConnectはDDM用に最適化されており、SNAとTCP/IPの両方をサポートしています。仮想OptiConnectはソフトウェア構成の設定で有効になり、LPARと組み合わせて実装するときは特別にハードウェアを必要としません。

これとは対照的に、仮想イーサネットでは最大で16の高速仮想LANを確立することができ、これは1ギガビット・イーサネット・アダプタを使用しているのと同様の機能になります。仮想イーサネットはOS/400 V5R1で導入され、仮想OptiConnectを補完する役割を果たし、OS/400区画とLinux区画のあらゆる組み合わせ間の通信を可能にします。

LPARでビジネス継続性を探る

LPARアーキテクチャでは、高可用性とビジネス・インテリジェンス・ワークロードの両方が組み合わされ、重要なプロダクション区画が複数のシステムに渡って展開されているような場合もあります。たとえば、LPARと複数のプロダクション・ワークロードを実行しているサーバーが2台ある場合、ビジネス継続性を実装する方法は(少なくとも)2通りあります。

1つ目のアプローチは、まったく同じ資源とまったく同じ数の区画を持つように構成された2種類のサーバーを用意して、主とするサーバーのクローンを作る方法です。このアプローチでは、多数のソース区画におけるデータベースやアプリケーションの更新を、ターゲット区画へ複製する必要があります。

もう1つのアプローチは、重要なワークロードを両サーバー上に分散して、残りの区画はソース区画のバックアップ区画として動作させることによって、高可用性を実現するというものです。たとえば、システムA上でビジネスの継続性を保証する区画は、システムB上の区画に対して高可用性の複製サービスを可能にします。同様に、システムB上の重要な区画は、ビジネス継続性用のシステムA上の区画を選択することができます。

この実装方法は、重要なワークロードを2台のサーバー上に展開するだけではなく、一方のサーバーにシステム障害が発生したときの回復作業の手間も低減します。こうした実践から、LPARユーザーは、十分な資源を持った高可用性区画を最適化してジャーナルの更新を記録し、必要に応じて重要度の低い区画から高可用性の区画に資源を動的に切り替えることによって、ビジネス継続性を提供することができます。

図1はこれら2つのアプローチを組み合わせたものです。IASP36は切り替え可能な入出力タワーに格納されたディスク・ユニットで構成されています。独立したディスク・プールを2つの論理区画間で切り替えるのは、入出力プロセッサ・レベルで実行できる点に注意してください。入出力タワーは、独立したディスク・プールを2台のサーバー間で切り替えるときだけに必要となります。この例では、入出力タワーは2つのシステムと同じ高速リンク (HSL: High Speed Link ) ループ上にあり、一方のシステムは4つの論理区画で構成されています。ノードC、ノードDおよび2台目のサーバーであるノードEが同じデバイス・ドメインにあると定義されていると仮定すれば、独立ディスク・プールをこれら3つのノード間で切り替えることができます。

たとえば、プログラム修正の適用やオペレーティング・システムのリリース・アップグレードなどで主システムを定期的にメンテナンスする必要があるときに、この利点が生かされます。ある種の計画性を持って、アプリケーションがオペレーティング・システムの更新から独立していることを確認すれば、ユーザーやそのユーザーが使用しているデータを別の区画や別のシステムに切り替えることができます。

たとえば、図1の区画Dがテスト用区画で、そこにはOS/400の最新のリリースが含まれているとしましょう。区画Cは1つ前のリリースのOS/400を実行しています。新しいリリースが区画D上で検証されたら、区画Cのユーザーとそのユーザーが使用しているデータを区画Dに切り替えて、区画C上で予定されているリリース・アップグレードを開始することができます。最新のオペレーティング・システムへのアップグレードを正常に行ったら、区画Dのユーザーとそのユーザーが使用しているデータを区画Cに戻すことができ、リリース・アップグレードの実行に関連したダウン時間を最小限に抑えることができます。

グラフィカルな区画管理

OS/400 V5R1では、iSeriesナビゲータのセキュアなグラフィカル・ユーザー・インタフェースにより、日々のLPAR管理業務が劇的に簡素化されました。新しい区画の作成や削除、動的資源の移動、およびこれらのタスクへのアクセスをユーザー認証に基づいてセキュアに提供するなどといったOS/400 LPAR管理タスクは、iSeriesナビゲータ内に統合された新しい機能強化のほんの一部です。

iSeriesナビゲータによって提供されるグラフィカル・インタフェースを使用することにより、iSeriesユーザーは、信用されたユーザーがプロセッサ、メモリ、対話型パフォーマンスなどの資源を移動できるように割り当てることができます。こうした資源の移動は、動的に行ってもスケジュールして行っても構いません。これにより、たとえば夜間のバッチ処理や週末のタスク、月末のタスクなどといった重要なタスクの途中に、テスト区画の資源をプロダクション区画に割り当てることができます。
iSeriesナビゲータで資源移動を実行する利点の1つは、(専用サービス・ツール [DST: Dedicated Service Tools] やシステム・サービス・ツール [SST: System Service Tools] を使用する場合のように)資源を一旦ステージング・エリアにリリースする必要がなく、資源を別の区画に直接移動することができる点にあります。またiSeriesナビゲータは、オペレーション・コンソール経由でTCP/IP接続性を利用することにより、主区画と副区画の両方のLANコンソールとしてデスクトップを使用することも可能にします。

資源移動をスケジュールして行う代わりに、新しいハードウェア資源管理 (QYHCHCOP) APIを使用してアプリケーション・イベントやシステム警報に基づいた資源管理を自動化することができます。たとえば、アプリケーションは、月末のルーチン処理を起動する前にこのAPIを呼び出して、区画間で資源を再割り当てすることができます。ルーチンが完了したらもう一度APIを呼び出して、資源を元に転送することができます。テープ入出力プロセッサが保存/復元操作に切り替えられた場合も、この方法で割り当てを行うことができます。

iSeriesナビゲータにおけるV5R2の特徴には、Linux区画の作成、管理機能があり、Linux区画とOS/400区画間の仮想プロセッシング・ユニットの動的資源移動をサポートしています。また、V5R2には、区画構成データをHTMLフォーマットにエクスポートおよび保存して、印刷や復元操作を容易にする機能も追加されています。

理想のソリューション

V5R2でも、iSeriesのLPARサポートは引き続き優れた柔軟性を保ち、iSeriesユーザーは、地理的条件、アプリケーション、オペレーティング・システムの属性などに基づいて、区画を独特な構成に簡単に設定することができます。LPARは複数のオペレーティング環境をもった多国籍企業やデータ・センターにとって、理想のソリューションです。LPARにより1箇所での集中オペレーションが可能になり、しかもユーザーが必要とするアプリケーションの独立性も提供できます。

LPARにより資源をすばやく再割り当てすることができるので、企業規模のサーバー統合プロジェクトへの最初の一歩が踏み出しやすくなりました。

*著者エイミット・デイブはミネソタ州ロチェスターにあるIBM eServer iSeriesのシニア・テクニカル・スタッフ・マネージャです。エイミットは製品マーケティング・グループの一員として、iSeries上のLPAR、オートノミック・コンピューティング、グリッド、記憶装置などといった企業向けテクノロジーに着目しています。



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