AS/400展望台

iSeries版Linuxでファイル・サーバーを統合



アーウィン・アーリー著

企業が蓄える情報量は増大の一途をたどっているため、各企業のIT管理者は、信頼性が高くスケーラブルでコスト効果の高い記憶装置を提供することにより、ファイル・サーバーに求められる要件を満たさなければならない、という強まりつつあるプレッシャーの下におかれています。Linuxはファイル・サーバー機能用として柔軟な環境を提供し、iSeriesはその資源の仮想化機能と、Linuxファイル・サーバーに資源をダイナミックに追加する機能とにより、Linuxの柔軟性をさらに拡張しています。

LinuxはiSeriesの最先端の論理パーティショニング(LPAR)テクノロジを活用して、eビジネス・ソリューションのための、柔軟で堅牢な環境を提供しています。本稿では、Linux版iSeriesを使用して、企業のファイル・サーバーに対するニーズをどのように統合するかについて説明します。まずLinuxの一般的なファイル・サーバー機能について述べ、次にiSeries版Linuxのファイル・サーバーのユニークな機能をいくつかご紹介します。

サポートされる機能

iSeries版Linuxは、他のすべてのLinuxプラットフォームがサポートする機能と同じ機能を備え、同じプロトコルやオープン・ソースのアプリケーションをサポートしています。これは何を意味するのでしょうか。基本的には、お客様が選択できるファイル・サーバー機能が豊富であるということです。Linuxがサポートしている従来のファイル・サーバーは、ネットワーク・ファイル・サーバー(NFS)、ファイル転送プロトコル(FTP)、サーバー・メッセージ・ブロック(SAMBA)の3つです。

通常NFSは、UnixやLinux環境でファイル・サーバー機能を提供するのに使用され、システム間でファイルを共用するためのクライアント/サーバー・モデルをサポートしています。一方FTPは、通常クライアント/サーバー間でファイルを転送するのに使用しますが、Webベースのファイル・サーバーをサポートするために使用することもできます。

この2つの機能は確かに重要ですが、通常、iSeriesのお客様は、クライアント側がWindowsベースであるクライアント/サーバー・モデルでファイル(おそらくプリンタも)を共有しなければなりません。したがって、ここではWindowsベースであるSAMBAファイル・サーバー・プロトコルに焦点を当てます。

ファイル・サーバーになぜiSeriesか

iSeriesはその柔軟性と資源の仮想化により、理想的なファイル・サーバーとなっています。iSeries版Linuxではダイナミックなファイル・サーバー環境を構築することができ、時間の経過とともにファイル・サーバーを大規模化するのに費用のかかる、停止時間やハードウェアのアップグレードを必要としません。プロセッサを共有できるというiSeriesの機能があるために、他のファイル・サーバー環境にありがちなファイル・サーバーに対する過剰なプロセッサ資源の割り当てをせずに、負荷に応じた適量のプロセッサ資源を割り当てることができます。

iSeries版Linuxには、企業向けファイル・サーバーの実装(または統合)のための重要な利点があります。SAMBAをファイル・サーバーとして使用すると、エンド・ユーザーに影響を与えることなくWindowsベースの複数のファイル・サーバーを置き換えることができます。別の言い方をすると、Windowsクライアント/サーバーを使用している場合、Windowsクライアントに影響を与えることなくWindowsサーバーをLinuxサーバーに置き換えることができるということです。このことは、簡単なファイル・サーバー環境においても、高度なWindowsファイル・サーバー機能を使用している環境においても当てはまります。

Linuxはアクセス制御リスト(ACL: Access Control List)とWindowsのドメインをサポートしています。ユーザー認証にWindowsドメインを使用している場合、ファイル・サーバーをLinuxサーバーに置き換えても、ドメイン・コントローラがすべての認証を今まで通りに提供することができます。LinuxのSAMBAを使用してWindowsのドメイン・コントローラをLinuxベースのドメイン・コントローラで置き換えることもできます。ここでも、エンド・ユーザーのクライアント・システムには影響を及ぼしません。SAMBAの将来のバージョンでは、アクティブ・ディレクトリもサポートされる予定です。まずはアクティブ・ディレクトリ・クライアントとして、そして最終的にはアクティブ・ディレクトリ・サーバーとしてサポートします。

SAMBAの機能

SAMBAにはLinuxがネットワーク・サービスを提供する上での支援をする機能があり、それには以下のようなものがあります。

・ユーザー間でのファイルの共有
・ユーザー間でのプリンタの共有
・SAMBAサーバーによるシステム間の時刻同期
・ユーザー間のメッセージの送信
・システム管理者によるリモート・パスワード管理
・NetBiosネームサーバーを提供し、ブラウジング機能などをサポート
 (ご希望であれば、SAMBAはLAN上のマスタ・ブラウザとして使用できます。)
・FTPに似たSMBクライアントを使って、Linux、Netware、その他のオペレーティング ・
 システムからPC資源(ディスクとプリンタ)へアクセス可能
・クライアントにtarの拡張機能を提供し、PCのバックアップが可能

仮想ディスクを利用する

iSeries版Linuxの強さの1つに、Linuxのディスク資源を仮想化する機能があります。仮想ディスクはLinux用に抽象化したIFSオブジェクトで、Linuxから見ると実在する物理ディスク・ドライブに見えます。さらにV5R2では、Linuxの稼動中にLinuxパーティションに追加のディスクをリンク(関連付け)して、OS/400やLinuxを再起動しなくてもその追加したディスクを使用することができます。この機能により、iSeries版Linux上でファイル・サーバー機能を実行させる上で大きな利点が加わります。

従来のWinTel環境でファイル・サーバー機能を実行しているとしましょう。いずれはファイル資源を格納しているディスク資源が一杯になります。通常の環境では以下の作業が必要になります。

1. 新しいディスクを購入する
2. システムを停止する
3. システムの筐体を開ける
4. システムに問い合わせて、追加のディスクをシステムに追加できるかどうか判断する

新しいディスクを追加できるのであれば作業は終了したも同然です。ディスクを追加して(つまり配線を接続して設置場所にボルトで留める)、カバーを閉じ、システムを再起動して、追加したディスクをフォーマットして、パーティションを作成します。こうして、ファイル共有用の、追加された新しいディスク資源を使用することができます。

しかし、たとえば、追加のディスクを設置する場所がない場合や、接続ケーブルや電源ケーブルがない場合はどうでしょう。これらの場合、以下の作業をする必要があります。

1. 追加のディスクを一時的にケーブル接続します(接続ケーブルがあると仮定して、
  システムに「Y」電源ケーブルを接続できます)。
2. 元のディスクからすべてのファイルを新しいディスクにコピーします。
3. 元のディスクを取り除きます。
4. 新しいディスクを設置します。

この場合にも、システムを再起動して通常運用に戻ります。また、上記のいずれのシナリオにおいても、ファイル・サーバーをかなりの時間停止しなければなりません。iSeries版Linuxのソリューションでは、以下の例に示すように、停止時間は数秒に抑えることができます。



ここで示す例は、2台の仮想ディスクを搭載したiSeries版Linuxです。1において、Linuxからは2台のディスクが「見えます」が、これら2台のディスクは、実際には、iSeriesのシングル・レベル・ストアのすべてのディスク・アームに渡って広がるIFSオブジェクトになります。したがって、このソリューションには、複数のディスク・アームでデータを探すというパフォーマンス上の利点があります。

Linuxインスタンスは、論理ボリューム・マネージャ(LVM: Logical Volume Manager)を使用することで、2台のディスクを結合して1つのファイル・システムにしています。このことは、3台目の仮想ディスクを同じファイル・システムに追加してファイル・サーバーが利用する記憶装置のサイズを増加できるので重要なことです。

さて、ファイル・サーバーが記憶容量の上限に近づき始めたら、以下の手順でファイル・サーバーが利用できる記憶装置のサイズを増加することができます。

1)ADDNWSSTG(Add Network Storage)コマンドを使用して仮想ディスクをもう1台作成します。

2)ADDNWSSTGL(Add Network Storage link)コマンドを使用して新しい仮想ディスクをネットワーク・サーバー記述子にリンクさせます。ネットワーク・サーバー記述子にディスクがリンクされると、そのディスクはすぐにLinuxから利用することができます。その結果は図2のようになります。これで3台目のディスクがLinuxから利用できるようになった点にご注意ください。このディスクも元々装備されていた2台のディスクと同じ恩恵(つまりすべてのディスク・アームに渡って広がること)にあずかることができ、Linuxを再起動せずに利用可能になりました。

3)Linuxで、「fdisk」コマンドを使用して、新しいディスクの上にある既存のパーティションを削除します。

4)Linuxの「pvcreate」コマンドを使用して、新しいディスクをLVM用に初期化させて使用できるようにします。ディスクがシステムにとって3台目のディスクである場合、ディスクを初期化するコマンドは次のようになります。
pvcreate /dev/hdc

5)Linuxコマンド「vgextend」を使用して、新しい物理ボリュームを論理ボリュームに追加します。ボリューム名を「vol1」とすると、コマンドは以下のようになります。
vgextend vol1 /dev/hdc

6)Linuxコマンド「lvextend」を使用して論理ボリュームを増加させて、新しい物理ボリュームを利用できるようにします。サイズを500メガ・バイト増加させるコマンドは次のようになります。
lvextend -L+500 /dev/vaol1/data

7)実際のファイル・システムのサイズを増加させます。このステップにおいて、ユーザーはファイル・サーバーを一時的に利用できなくなります。まずファイル・システムをアンマウントします。
Umount /mnt/vol1/data

8)次にファイル・システムにエラーがないか調べます(このステップはオプションですが是非行ってください)。
e2fsck -f /dev/vol1/data

9)ファイル・システム自体のサイズを増加させて、元々の論理ボリュームに追加されたスペースを利用します。
Resize2fs /dev/vol1/data

10)ファイル・システムを再マウントし、ユーザーがファイル資源に格納、アクセスできるように利用を再開します。
Mount /dev/vol1/data /mnt/data

SAMBAのWindowsドメインのサポート

Linuxパーティションは、ドメインへのログオン認証にWindowsサーバーを使用している環境においても、ファイル・サーバー機能を提供することができます。Windowsのドメイン・コントローラとの統合により、Linux上にユーザー・アカウントを作成しないでも、Linuxのファイル・サーバー機能が利用できます。SAMBAの「winbind」機能を使用すると、ユーザー・アクセスにWindowsのドメイン認証をサポートするようにLinuxを構成することができます。

ドメインをサポートしたことで、Linuxファイル・サーバーのファイル資源を要求しているユーザーは、そのドメインに対して認証されます。認証に成功すると、ドメイン・コントローラはユーザーIDおよびグループIDを返します。Linuxはこの情報を使用して、既存のファイル資源へのアクセス権限だけでなく、新しいファイルの所有者を判断します。

ドメイン・コントローラに対する認証だけでなく、SAMBAを使用して(iSeriesパーティション内の)Linuxサーバーがドメイン・コントローラになるように構成することもでき、これによって、Linuxパーティションがログイン要求を処理してローミング・ユーザーのプロファイルを格納することができます。SAMBAを使用して自社のファイル・サーバーを置き換え、または統合できるだけでなく、ドメイン・コントローラを置き換え、または統合することもできます。

移行プロセス

サーバー移行のプロセスと同様で、(1台または複数台の)ファイル・サーバーをLinuxに移行するには、以下の点を考慮して事前に計画した通りに実行しなければなりません。

・現在展開されているWindows(またはその他のファイル・サーバー)のレベルを調べます。現在使用しているファイル・サーバーはWindows NTなのかWindows 2000なのか。
・SAMBAサーバーをプライマリ・ドメイン・コントローラー(PDC)とするのか。
・既存のWindowsファイル共有の数とサイズを調べます。ファイルの格納に使用している共有は1つか複数あるのか。ファイルはタイプ別に格納されているのかそれとも部署や機能別に格納されているのか。
・既存のファイル・サーバーに依存しているアプリケーションを分析します。
・どのような作業負荷データがあるのか調べます(この情報はパーティションのサイズを決定するのに役立ちます)。以下の項目を調査してください。

○ユーザー数
○ 利用のピーク時間
○ ピーク時間中の同時接続数
○ ファイル・アクセスのスループット
○ 毎秒のファイル操作数

・サイズを限定したパイロット実装を実施します。SWAT(SAMBA Web Administration Tool)を使用して既存の数個のWindows共有から限定数のSAMBA共有を作成し、SAMBAサーバーの機能と性能を検証し、パイロットの結果を分析してサイズを検証します。
・すべてのWindows共有をSAMBAに移行します。

移行プロセスを計画する際には、複数のファイル・サーバーをより少ない台数のLinuxファイル・サーバーに統合することも検討してください。

説得力のある選択肢

iSeries版Linuxは、ファイル・サーバー機能の統合用としては、驚くほど堅牢で柔軟なソリューションを提供します。LVMや、iSeries上のダイナミックな仮想ディスクの多用性などといったLinux機能により、iSeries版Linuxは、企業用の統合ソリューションとして説得力のある選択肢となっています。

アーウィン・アーリー氏はIBMのアドバイザリ・ソフトウェア・エンジニアで、1996年からミネソタ州ロチェスターの開発研究所に勤務しています。同氏はiSeriesのテクノロジ・センターでiSeries版Linuxの教育および実装サービスを行っています。同氏はIT業界で24年にわたって携わり、LinuxおよびOS/400だけでなく、さまざまな版のUnixの経験があります。また地域の大学でLinuxの教育クラスも担当しています。



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