2018.07.26
 

その25: サーバー比較の観点から見たIBM i -6

皆さん、こんにちは。これまで汎用機の後継機を選定するために、移行の安全性、オープン化、将来性の観点からその検討プロセスをたどってみました。IBM i が有力な候補になり得る事は理解いただけたとして、今回はもう少し多角的に眺めることで、次期システム候補絞り込みの妥当性を検証してみましょう。

パフォーマンス

新サーバー上でアプリケーションを稼働させられるようになったとしても、必要な性能を発揮できなければ移行プロジェクトとしては失敗です。汎用機とIBM i とはどのように比較できるのでしょうか。

かつては汎用機の性能を測る尺度として、MIPS値(Million Instructions Per Second : 一秒間に実行できる命令数を、百万を単位に数値化したもの)が使用されていました。例えば一秒間に一千万回実行できれば、10MIPSというわけです。マシン同士の性能比較の目安としてシンプルでわかり易い反面、あまりにも単純化され過ぎており、実態を反映しているとは言い難いのも事実でした。多数あるプロセッサ命令には、内部クロックが数サイクルで済む単純なものから数十サイクルを要する複雑なものまで、個々の実行時間には幅があります。最大のMIPS値を叩きだそうとしたら最も単純な命令だけを実行すれば良く、結果的にクロックのスピードがMIPS値を決定する事になります。実際のアプリケーションは様々な複雑さの命令が多数組み合わされて稼働しますので、MIPS値のみで性能を把握しようとするのは少々無理があるのです。

コラム01

現代のプロセッサにおいては、クロック・スピードを高速化しなくても、様々な技術的工夫を施す事でその処理能力を向上させています。並列処理を行う、複雑な命令を実行するのに要するサイクル数を削減する(例えば、内部の制御プログラムに依存せずに、できるだけアクセラレータなどのハードウェア演算回路を利用する、など)、演算回路に待ち状態が生じないよう支障ない限り命令の処理順序を入れ替える、などといった事が行われています。そこでMIPSという字義を離れて、ベンチマーク・プログラムによる性能測定を行い、その結果を旧来のマシンとの整合性をとるためにMIPS値に換算する、といった事も行われています。一般に公表される値ではないようですが。

一方のIBM i では歴史的にCPW(Commercial Processing Workload)値が使われている事はご存知のとおりです。メモリやディスクが性能の決定要因(ボトルネック)にならないようにシステムを構成し、ビジネス用アプリケーションを稼働させ、その全体処理量を相対的に表した値、すなわちプロセッサのスループットの指標値です。基幹業務をその主な用途として想定したシステムですので、典型的な利用シーンに合わせて性能が測定されています。

コラム02

MIPS値と同等の性能を表すCPW値をどのようにして求めるべきか、メーカーとしての明確なガイドラインはありません。経験的にMIPS値を7倍した値をCPWとする、といった換算が行われています。ただし汎用機上のアプリケーションをツールによって移行する場合は、無駄が生じますので、安全係数としてさらに10倍の掛け率を適用し、MIPS×70=CPWとしています。これは目安に過ぎず、保証されるものではないのですが、70という係数は十分に大きく、まず問題になる事は無いようです。

最新の4コアPOWER9プロセッサ搭載Power S914のCPW値は52,500です。1コアのみを使用する場合のCPW値は13,125、これを70で割り算すると187.5になります。すなわちIBM i のコアあたり性能は約190 MIPSであり、最小のPower Systemsでも、かなり大きな汎用機モデルをカバーできます。ただ気を付けておきたいのは、システム構成はプロセッサ能力だけで決まるのではないという事です。特に搭載可能なディスク・ドライブ数に制約があるなど、4コアPower S914のI/O能力は限定的です。接続するべきI/O機器次第では、上位のPower Systemsモデルが必要になりますし、多くのケースではそうなります。それでもマシンのコストは大幅に削減できるでしょう。

コラム03

システムのコスト

導入済み汎用機本体について発生するコストには、概ね以下があります。

  • 買い取りでなければ、ハードウェアとソフトウェアのリース料金
  • 上記の保守料金
  • 多くの場合、オペレーティング・システムの月額ライセンス料金

IBM i に置き換える場合に発生する主なコストは以下の通りです。

  • ハードウェアとソフトウェアの新規購入費ないしリース料金
  • 上記の保守料金
  • アプリケーションの移行費用

移行に伴って不要になるのは、月額ライセンス料金です。IBM i ライセンス料金は一括払い方式なので、初期またはリース料金に含まれます。一方で新たに必要になるのは移行費用です。仮にツールを使って移行するにしても、テスト工数はかかりますし、言語やユーティリティ・ソフトウェアなどの移行元テクノロジー次第ではその変換精度に幅があり、補完的手作業が必要になります。これらの総額はマシン購入の初期費用を上回る事が多く、一括払いで賄いきれなければリース扱い、すなわち移行費用総額をリース期間均等払いにするなどして、支払額の平準化を図ります。いくつかの事例を見ると、これらを総合して、移行前後の月額費用は概ね30-40パーセント程度削減されるようです。再リース期間に入ると移行費用の支払いは完了するので、コスト・ダウン幅はさらに大きくなります。

運用のためのワークロード

他のどのシステムからの移行であっても、直ちに違いを体感できるのが、ディスクやデータベース周りの運用・管理の簡素化でしょう。これはIBM i 独自のファイルシステムである単一レベル記憶によってもたらされる効果であり、ワークロードを従来比3ないし5分の1にまで削減できた事例もあります。元々はディスク・アクセスの性能向上を目指した仕組みだったのですが、現在では運用ワークロードの削減という、その副次的効果の方が高く評価されているようです。この詳細については、当コラムの第6回目以降にありますので参照いただければ幸いです。

かつてのAS/400ないしその前身のSystem 38は、IBM汎用機を参照して開発されていますので、似たような機能が盛り込まれています。最大の違いは、中堅・中小のお客様を、その主要顧客ターゲットに据えている事です。まず必要となるのは低価格化ですが、多くのIT要員を割く事ができないという事情も考慮しなければなりません。上記単一レベル記憶以外にも、システムを省力運転する、例えば各タスクに割り当てるハードウェア資源量を自動調整し最適化する機能などが、あらかじめ基本機能の一部として盛り込まれています。IBM i が放置運転型システムと呼ばれる所以でもあります。

セキュリティ

IBM i におけるセキュリティの強靭さは、オブジェクト・アーキテクチャー採用に由来しています。システムの全ての振舞いはデータ中心、すなわち処理対象のデータとその属性により決定されており、定義外の動作はできない、という制約があります。このアーキテクチャー採用の背景や、他システムとの比較など詳しくは、当コラム第4回目を参照いただければと思います。

セキュリティの強靭さは、その脆弱性報告件数の多寡をもって測る事ができます。Quark+Leptonという調査会社のレポート「IBM i 搭載 Power Systems は中堅企業の多様なニーズに対応」の、ページ8表1「オペレーティング・システム脆弱性データの比較 — 2008年1月~2017年3月」によると、IBM i 7.2ないし7.3における脆弱性報告件数はゼロです。これに対して例えばWindows 2016は出荷開始後の約半年で、100件近くもの報告があります。

これまで見てきたように、IBM i はパフォーマンス、コスト、運用のワークロード、セキュリティの観点からも、基幹を担うシステムとしての適性を備えているのです。もっと多くの方にこのシステムを知っていただければと思います。ではまた

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