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IBMiコラム2020.02.25

その44:新人にIBM i を教えるには

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。皆さんはIT未経験の新人にIBM i を教えるのに、どのようにされていますでしょうか。こうすれば上手く行く、といったパターンをお持ちの方がいらっしゃったら是非教えを乞いたいと思っております。決定打が無いままに何となく試行錯誤を繰り返している、という方には親近感を覚えます。実は私もより良い方法を未だに模索しているところです。

新卒の方はもちろん、他社から弊社ベル・データに転職される方の中には、IT業界とは無縁だった方も少なからず含まれています。営業であれSEであれ、何らかの形で製品知識を必要とする業務に携わる限り、IBM i の基礎を理解いただく事は入社時の「必須科目」の一つです。主に受入部門の社員が講師役を務めており、人によって多少のバリエーションはありますが、IBM i の特徴や主要アーキテクチャーを説明する、という点は変わりません。網羅されるのは概ね、TIMIによる資産継承性、単一レベル記憶による運用の容易性(当初の設計の目的はパフォーマンス向上でしたが)、オブジェクト・アーキテクチャによるセキュリティ、統合性やオープン性によるアプリケーション・テクノロジーの多様性、などといったところでしょうか。これらは IBM i を特徴付けるテクノロジーである事は間違いないのですが、「IBM i の基礎」の「一時間目」に、IT未経験者を相手に全てを教え込もうという取り組みは上手くいくものだろうか、という漠然とした疑問を持っています。説明内容全てを吸収・理解してもらえないかもしれない、という懸念がつきまとうのは致し方ないとしても、製品の基礎を理解している事とは、テクノロジーを知っている事と同義なのだろうか、という問いです。テクノロジーに精通すればシステムの操作はできるようになるでしょうが、それは基礎として学ぶべき最初の一歩であるべきかと言うと、ちょっと違うかもしれません。

一歩

技術論を展開する前に、システムの価値は何をもって評価されるべきか、という点をきちんと議論する必要があると最近は強く感じています。例えば機能・性能の高さとか、セキュリティ、低価格、などといった属性の重要性に疑問を差し挟む余地はありません。どの様な製品・商品においても共通項と言えるものであり、ITに無縁の方でも想像に難く無いはずです。これらはIBM i においても追求されてはいますが、おそらくこの製品に携わっている方が特徴として最初に挙げる点ではありません。一方IT経験者であったとしても、レガシー系とオープン系の両タイプのアプリケーションを同時稼働できる統合性や、資産継承性などを思い付く方は、なかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。いきなり統合性を訴求したところで、そもそもレガシーだのオープンだのというのはどのように定義されるのか、何故これらを統合すると良い事があるのか、誰もが理解している事だとは言えそうにありません。資産継承という特性が世間で話題になることもまずありません。

製品を評価する上での基準はどのようなものであるべきか、という点の検討をおろそかにしたまま、IT未経験者に向けてIBM i の優位性を訴求しても、聞いている側は「そういった見方も一理はあるかもしれないな・・・」といった感想に落ち着くのがせいぜいになってしまいます。これらの評価基準は通常は存在しないか、少なくとも意識される事は無い、もっと言ってしまうと、世間はIBM i として最も訴求したいポイントについて、耳を傾ける準備ができていないと考えた方が良さそうです。

聞く

かつて大学で授業を受け持った際の第一回目のテーマは、ITの歴史を概観しながら製品の生き残り戦略を探る事にしておりました。相手はIT系学部の大学生ですから、コンパイラの構造に関する知見やプログラミング経験はあるにしても、市場とかビジネスにおける利用シーンに全くと言って良いほど馴染みがありません。学部のシラバスを見ても、こういった内容をカバーする講義は見あたりませんでした。業界の「常識」は存在しないと考えるべきなので、いきなり資産継承性だのオープンだのと議論を展開する前に、歴史的にITを捉えてみようと試みたわけです。単に過去の事実を追跡するに留まるのではなく、市場において生き残るためには何が必要だったのかという問題意識を持ち続けるようにしました。着目したのは、製品カテゴリが市場の中で確立されようとしていた時期に実在した、汎用機、UNIX、PCの様々な製品群です。授業の第二回目以降ではさらに、ビジネス用アプリケーションの特徴、アプリケーションを支えるテクノロジーの変遷、インターネットがビジネスに与えたインパクトなどを検討しました。この過程において導き出される要件は製品の評価基準に通じるものでもあり、IBM i が備えるアーキテクチャーの中に具現化されていたり、製品戦略の柱に据えられていたりします。

ビジネス用システムに対する評価基準を検討してからようやくIBM i を眺めてみる、といった手順を経ることができればそれに越したことはありません。しかしながら私の授業の場合には、このパートだけで90分×4コマ分相当の分量がありましたので、目一杯端折るにしても全体を通した説明をする時間を確保するのは通常は不可能です。ですが先日の新入社員向けの製品研修の場で、超短縮版としてわずか1時間ながら、IBM i そのものに言及する前に部分的にもIT市場を歴史的に眺める機会を確保してみて、この様に製品を俯瞰するのも悪くないな、と感じた次第です。

IBM i をご利用中のお客様に製品を説明する際にも、似た様な思いを抱く事があります。今後も継続的にIBM i を利用するべきか判断したい、社内ではオープン系システムに移行するべきという意見が多数派になりつつある、という状況に遭遇するケースが特にそうです。名目上はIBM i を継続的に利用いただく上での根拠を提供するため、となってはいても、実情は製品を評価する基準に対する意識が薄れてしまっているか、他人にそれをうまく伝えることが困難になってしまっている事が多いようです。IBM i が登場した時期には存在していなかった、オープン系という何となく明るい響きを持った製品群が市場での存在感を高めるにつれ、さらにIT担当者の世代交代と共に、業務システムとはどうあるべきなのかという意識が風化しつつあるのかもしれません。

交代

私が最近読んだものの本に、人間は社会的生き物なので、行動を決めるのは個人の合理性ではなく集団の理解である、といった主張があったのを思い出しました。自社の業務アプリケーションを支えるためのインフラストラクチャー選択、という極めて論理的に判断するべき状況下においても、自社の利益を最大化するために自律的・合理的に考えるのではなく、何となく脱レガシーだからオープン系を採用しておこうという具合に、世間の風潮に流されてしまう可能性は排除できないという事になるのでしょう。私ごときが何をやっても無駄だというようにも聞こえますが、それでも何らかの対策を考えなくてはなりません。そこで2020年は少しずつではありますが、サーバーの評価基準を考えるきっかけにしていただくために、かつて大学授業用に作った資料の埃を払い、IBM i の要素を加え、焼き直しながら何らかの方法で、e-BELLNET上に公開してゆこうと考えております。分量は多目になるかもしれませんが、IT未経験者向けにIBM i の基礎を伝える教育資料にでもなればと考えております。

というわけで、年頭のコラムは安井の所信表明での締め括りとしたいと思います。気が変わらない事を願いつつ ・・・

ではまた

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社パワーシステム製品企画より、ベル・データ株式会社東日本サービス統括部に転籍。日本アイ・ビー・エム在籍時はエバンジェリストとして、IBM i とパワーシステムの優位性をお客様やビジネス・パートナー様に訴求する活動を行うと共に、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わり合いを論じる講座を担当しました。ベル・データ移籍後は、エバンジェリストとしての活動を継続しながら、同社のビジネス力強化にも取り組んでいます。

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