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IBMiコラム2023.03.23

IBM i のウンチクを語ろう
~ その81:新しいNavigatorのススメ

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。突然ですがIBM i を運用するにあたって、どのようなテクノロジーを日常的に利用されていますでしょうか。圧倒的多数の方は、5250エミュレータをご利用中なのではないかと思います。主要なコマンドは憶えているので迷うことなく使えるし、何よりもエミュレータ画面はサクサク動くから効率が良い、といった点が主なメリットなのではないでしょうか。そこでお客様に最新のIBM i の動向に関して説明する際に、「今はブラウザで使えるNavigatorという製品がありますよ」(ちなみに正式な名称は「IBM Navigator for i」)と紹介すると、「あれはちょっと・・・」といった反応が返ってくることが多いようです。

Navigatorは、1995年の「iSeries Navigator」に始まります。当時は個々のクライアントにインストールする必要がある、WindowsのGUIを活かしたシステム操作環境でした。ブラウザで稼働するインストール不要のバージョンが登場したのが2007年、その後多少の画面デザインの改善が図られながら進化を続け、2021年9月に全面的に刷新されるに至っています。

進化

私が紹介するのはブラウザ版でも全面刷新後のNavigatorであるのに対して、お客様の「あれはちょっと・・・」はそれ以前の製品に対する印象のようです。これについては実は私自身もかつては同様の感想を持っておりました。デザインがあまり洗練されていないのもさる事ながら、環境によるのかもしれませんが応答時間が非常に長くて使用に耐えないと感じたので、直ぐに使うのを止めてしまっておりました。同じ製品名を踏襲しているのがよろしくないためか、応答時間と見栄えが圧倒的に改善され、その後も継続的に機能が充実してきているにも関わらず、残念ながら刷新版はほとんど注目されていないのが実情です。そこで今回のこのコラムでは、最新のNavigatorがどう変わったのかについて取り上げようと思います。なお、英語では刷新前の製品を「Old Nav」、刷新版を「New Nav」と呼んで区別していますので、ここでもこの俗称を用いて書き進めてまいります。

New Navに触れた際の第一印象はとにかく速くなった、次いでデザインが洗練され、機能が豊富に揃っている、というものです。応答速度はエミュレータを凌ぐわけではありませんが、充実した機能群はエミュレータから乗り換えるための十分な動機になりそうです。日常的にIBM i を操作しておらず、ろくにコマンドを憶えていない私でも、かなり直感的に操作できそうだという印象を持っています。特にシステム管理者の世代交代を見据えた時に、New Navのメリットが活かされるのではないでしょうか。

IBM i のお客様は様々な課題をお持ちですが、最も高い優先順位にあるものの一つは後継者育成、ないしは技術者の世代交代にあるとされています。ベテラン技術者はエミュレータ操作に慣れていて、「手がコマンドを憶えている」としても、若年層のほとんどはそうではありません。スマートフォンやWindowsなどGUI操作が当たり前の今日において、黒画面とも称されるエミュレータでシステムを操作する環境は、大袈裟に言うならば時代錯誤的なのかもしれません。システムは内容が大事だと主張したところで、自分達だけがトレンドから取り残されている、と感じられてしまうようでは、若年層の方を惹きつけるのは無理があります。JAVAやCしかご存知ない方でも抵抗なく学べるプログラム言語がフリーフォームRPG(FF RPG)ならば、GUIに慣れた方向けのIBM i 操作環境がNew Navだというわけです。初めてIBM i に触れる方向けの操作環境として最適だと言えるでしょう。

ハナマル

ちなみに私は年齢だけはベテランの域にありながら、IBM i の操作スキルは初心者レベルに留まっておりますので、Navigatorはかなり重宝しております。

New Navの中身については開発部門から公開されているドキュメントに述べられています。採用するテクノロジーをOld Navから一新したと説明しているわけですが、クライアント側のGUIを記述するのにAngularというJavaScriptフレームワークを使っている点が目を引きます。Googleが開発したオープンソース製品で、JavaScriptフレームワークの中ではメジャーなものの一つとされています。これの採用が画面の見栄えとパフォーマンス向上に大きく役立っているのではないかと思います。

もう一点はIBM i サービス、すなわちIBM i の運用・管理を行うためのSQLインターフェースの採用です。システムを操作する際に、オンラインならばIBM i に向けてコマンドを投入、バッチならばCLプログラムを記述するのが良く見られるやり方だと言えるでしょう。他のサーバーから操作するのであれば、IBM i が提供するAPIを利用したプログラミングが必要になるかもしれません。これだとちょっと難易度が上がりますね。この技術的ハードルを下げ、汎用性の高いSQLを通じて同様のことを実現するのがIBM i サービスです。New Navは、ブラウザ画面上で選択・入力された各種のオプションに基づいてSQL文を自動的に生成し、IBM i に投げ掛け、返ってきたデータをAngularを通じて表示してくれます。そしてそのSQL文は参照可能ですので、必要であれば他の環境で再利用することもできます。

IBM i サービスと聞いて、ACSを思い出される方もいらっしゃるかもしれません。ACSを起動すると最初に表示される、ACS GUIと呼ばれるウィンドウから「SQLスクリプトの実行」メニューを選択すると、SQL文を組み立て実行する環境が利用可能になります。サンプルが豊富にありますし、アシスタント機能を使えば効率的にSQLを生成できますので、SQLプログラミングに慣れていない私でもある程度のことはできます。New Navが生成したSQL文を自動的にここに連動させ、実行結果を確かめることも可能です。見栄えは違ってはいるものの同じ結果を得ているにすぎないとも言えますが、IBM i サービスの汎用性は感じていただけるのではないでしょうか。

提案

New Navが目指したもう一つの大きなポイントは、複数システムの管理です。複数台のマシンをお持ちの方もいらっしゃるでしょうし、一台であってもその上で複数のLPAR区画を構成されている方も多いのではないでしょうか。どちらであっても論理的には複数のIBM i システムが存在しているのと同じで、これら全体を単一のインターフェースから一括管理できれば効率的です。Navigatorではそれぞれをノードと呼んでおり、Old Navが想定する管理対象ノードの数は基本的に1でした。ノードの切り替えはできなくはなかった、といったレベルの応答性と使い勝手でしたので、同時に複数ノードの稼働状況をモニターしようとしたら、何か別のソリューションを検討しなければいけません。これに対して、New Navはそもそも複数ノードを同時に管理する前提で設計されていますので、わざわざ別のソリューションを検討する必要性はまず無くなるのではないかと思います。

New Navは既に豊富な機能を備えているわけですが、これで終わりではなく今後の機能強化計画も明らかにされています。英語ページではありますが、IBM Navigator for i - Roadmapというサイトの中にその一覧があります。お気に入り登録からパフォーマンス分析やジョブスケジューラに至るまで、その内容は多岐に渡っていることが見て取れます。一点だけ気に留めておきたいと思ったのは、データベース関連の機能強化はACSに実装するとあることです。先に述べたとおり、ACSにはSQL関連の様々な機能が実装されているだけでなく、New Navが自動生成するSQL文を受け取って再実行する機能も提供しています。New Navはシステム管理者向け、ACSはデータベースのプログラマや管理者向け、という具合に少しずつそれぞれの位置付けを明確化しながら進化してゆくのでしょうか。今後の展開が楽しみですね。そして最後になりましたが、是非皆様にNew Navを試してみていただきたいと考えています。

ではまた。

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社パワーシステム製品企画より、ベル・データ株式会社東日本サービス統括部に転籍。日本アイ・ビー・エム在籍時はエバンジェリストとして、IBM i とパワーシステムの優位性をお客様やビジネス・パートナー様に訴求する活動を行うと共に、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わり合いを論じる講座を担当しました。ベル・データ移籍後は、エバンジェリストとしての活動を継続しながら、同社のビジネス力強化にも取り組んでいます。

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