IBM i コラム

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IBM i コラム 著者紹介

安井 賢克(やすい まさかつ)

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社パワーシステム製品企画より、ベル・データ株式会社東日本サービス統括部に転籍。日本アイ・ビー・エム在籍時はエバンジェリストとして、IBM i とパワーシステムの優位性をお客様やビジネス・パートナー様に訴求する活動を行うと共に、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わり合いを論じる講座を担当しました。ベル・データ移籍後は、エバンジェリストとしての活動を継続しながら、同社のビジネス力強化にも取り組んでいます。

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その36:IBM i 7.4登場

皆さん、こんにちは。IBM i コミュニティにおける最近の大きなニュースと言えば、4月23日に発表され、6月21日にGAを迎えるIBM i バージョン7.4でしょう。先のバージョン7.3の発表とGAが2016年4月でしたから、3年ぶりの登場です。

新バージョンは概ね2年間隔で登場する、というのがIBM i の旧来の標準的なサイクルでした。ところがバージョン7.2の登場には4年間を要し、バージョン7.3では元に戻って2年間とその間隔は変動します。それぞれ長過ぎる・短過ぎるという批判があったので、製品開発元のIBMロチェスターでは、今回はこれらの中間をとって3年間隔にしたと説明しています。ちなみにGAとはGeneral Availabilityの略で、直訳的には広く世間で利用可能になる事を言います。IBMのWebサイトからダウンロードする手段もありますが、DVDなどのメディアを発注した場合は、実際にユーザーの手元に届くには数日を要します。いずれにせよ今度の6月末には新バージョンを入手する事が可能になります。

新機能もさる事ながら、IBM i の将来が気になる方にとっては、ライフサイクル(製品寿命)がどのようになるのかが気になるのではないでしょうか。今回も製品発表と同時に新しいチャートが公開されています。

最新バージョンを基点にして二世代先までのライフサイクルを公開する、という従来からの慣習は守られています。以下チャートの左端中央よりやや下にあるIBM i 7.4が新たな基点になり、次世代のIBM i Nextと次々世代のIBM i Next + 1が示されています。チャート上部の数字は2000年代の年号、各バージョンの横棒ないし矢印は、IBMがサポートする期間を表します。今回新たに付け加えられたIBM i Next + 1のサポート期限、すなわち少なくとも2031年以降のように見える10年間以上はIBM i を利用できることがチャートから読み取れます。もちろんそれで終わりではなく、IBM i Nextが登場したらこれが新たな基点になり、IBM i Next + 1のさらに下に新しい行が付け加わるはずです。

ライフサイクル(製品寿命)のチャート

ここで念のために矩形と矢印という横棒の端の形状の違い、濃緑色と薄青色の使い分け、の意味を確認しておきたいと思います。

矩形は各バージョンの登場ないしサポート終了のタイミングが明らかである事、矢印はおおよその時期は決まってはいるものの未だ明らかではない事を意味します。バージョン7.4のGA予定は2019年6月21日と確定していますが、サポート終了日は未発表です。右向き矢印の端の三角形の頂点付近なのか、重心付近なのかは現時点では定まっておらず、計画に幅があるというわけです。

横棒の濃緑色は標準のテクニカル・サポート、薄青色は延長サポート期間を表します。バージョン・アップグレード作業が期限に間に合わないなどの理由で、やむを得ずしばらくの間は旧バージョンに留まらざるを得ないお客様向けの特別対応として、延長サポートの期間を設けています。例外もあり得ますが、標準サポート期間は7年以上、その後の延長サポートに3年間以上、がここ数世代の実績です。標準サポート終了の発表は、その発効日の1年以上前に発表されます。延長サポートの期間と料金は、標準サポート終了日前までに発表されます。バージョン7.2以降の標準サポート終了は発表されていませんので、延長サポートも同様に未発表、結果的にその計画も未だチャートに示されていません。

IBMのテクニカル・サポートを得るためにはソフトウェア・メンテナンス(SWMA)契約が必要になりますが、延長サポート期間に入ると標準のSWMAに加えて有償契約が別途必要になります。Q&A対応や障害対応がそのサポート内容です。障害は既知・新規を問わず対象になりますが、障害未然防止のための修正は提供されません。製品提供側としては、できる限り標準サポート期間内に、最新バージョンにアップグレードいただきたいと考えております。他のサーバーに比べれば、アプリケーション資産の継承性ゆえに、アップグレード作業の期間・負荷は圧倒的に小さいはずですので。なお、ライセンス料金無償でアップグレードするためにも、SWMA契約は前提として必要になります。標準のテクニカル・サポート期限が終了した後であっても、問題はありません。

IBM i の機能は同一バージョンにおいてもほぼ半年毎に強化されています。強化部分に相当する差分のモジュールを、TR(テクノロジー・リフレッシュ)と呼びます。自動インストールされることはありませんが、Windowsのアップデートに近いものです。対象になるのは最新版とその一つ前のバージョンですので、バージョン7.2はサポート期間内にはありますが、今後の機能強化は行われずTRのリリース対象にはなりません。昨年夏に登場した9番目のTR9が最後でした。

イメージ図(夏)

さてハイライトするべき新機能をいくつか見ていきましょう。開発部門が戦略製品としてまず取り上げるのは、Db2 Mirror for i と呼ばれる、本番機データをリアルタイムでバックアップ機に複製するように稼働するソリューションです。新しい製品番号5770-DBMが割り当てられています。

これまでもデータ複製を前提とするHA製品は他にもありました。日本において採用実績が多いのは、リモート・ジャーナル方式によるものです。本番機側でデータを更新したら、バックアップ機はその内容(ジャーナル)を受け取ってシステムに反映させます。Db2 Mirror for i では高速のメモリ間通信の仕組みを使って、本番機とバックアップ機上で同時にデータを更新します。単一の更新データについて、あたかも二台の本番機データベースが同時かつ能動的(アクティブ)に稼働・処理していると見なせるので、アクティブ-アクティブ方式と呼ばれています。バックアップ機のデータ更新における遅延が無いという優位性を実現するために、本番とバックアップの両システムの間をRoCE(RDMA -Remote Direct Memory Access- protocol over Converged Ethernet: 「ロッキー」と読むようです)という高速通信テクノロジーで接続します。このケーブル長は最長で100メートル、中継地点にスイッチを介在させることで総延長200メートルが限界とされていますので、HA構成向きではありますが、DR(Disaster Recovery : 災害対策)には適していません。必要であれば既存のDRソリューションと組み合わせることも可能です。

最近の多くのJDBCドライバは、本番用データベース・サーバーへの接続が失われた場合に、バックアップ・サーバーに自動的に接続を切り換えられるようなオプション機能、すなわちAlternateServers(代替サーバー)を備えています。従来は手作業による切替えを実施しなければなりませんでした。これをDb2 Mirror for i と組み合わせることで、極めて優れたHAシステムを構築できます。AlternateServersに代えて、サーバー負荷分散のために利用されるロードバランサーを介在させる構成も同様に有効です。

セキュリティ機能も強化されています。先のバージョン7.3では権限情報を収集するAuthority Collectionが登場しました。オブジェクトに対して各ユーザーに付与されるアクセス権は、必要最低限レベルに抑制するべきなのですが、利便性を損ねてしまうのを恐れて、ともすると過剰になってしまいがちです。これはセキュリティ上望ましいことではありません。Authority Collectionにより、実際に付与されている権限と必要最低限の権限を一覧として出力・比較することで、適切なセキュリティ管理を行えるようにします。これまではユーザー毎にあらゆるオブジェクトの権限情報が出力されていましたが、バージョン7.4ではオブジェクトを特定することができるようになり、利便性が向上します。

イメージ図(進化)

稼働するオープンソース(OSS)環境にも進化が見られます。今回発表以前から実現されていた事ではありますが、変化の激しい製品群を迅速にIBM i 上に取込み管理するために、5733-OPSという製品番号に代えて、OSSの世界では標準的なRPMとyumパッケージマネージャを利用します。そして新たなOSS製品として、Node.jsバージョン10や統計解析に最適なR言語などが利用可能になりました。また、従来からIBM i 上で利用されていたPython言語向けに、人気の高いライブラリである、数値計算のNumpyや機械学習のScikit-learnなども、RPMパッケージによって提供されます。

RPGも機能強化されます。可変次元配列や、サブファイルの位置を指定するためのSAMEPOSキーワードのサポートが追加されています。これらはアプリケーション開発者からあげられた要望に基づくものです。英語サイトではありますが、RFE(Request For Enhancement)経由で、どなたでも要望を開発部門に直接投げ掛けることができます。詳細については、Webサイト上のガイド「RFE Community で機能拡張の要望を登録する方法について」を参照する事をお勧めします。

今回のカラムで取り上げたのは新機能のごく一部に過ぎません。プログラマからシステム管理者まで、基幹業務からオープンな環境まで、その内容は多岐にわたります。開発部門の意向だけでなく、ユーザーから寄せられた声も今回の機能強化に色濃く反映されています。IBM i に対する投資が継続されているのは喜ばしい事です。待ちの姿勢だけでなく、積極的に要望をあげるなどして皆で製品を作ってゆく、という姿勢も今後は必要になるのだろうと思います。

ではまた

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