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IBMi海外記事2009.04.20

IBM Systems Director 6.1:データセンターの次世代管理

グレッグ・ヒンターマイスター 著

お客様たちは長年に渡ってデータセンターにあるすべてのシステムを1つの管理ツールで集中管理するにはどうしたらよいのかを求めてきました。System i Navigator (今はNavigator for i という名前になっています)は確かにすばらしいツールなのですが、IBMのi オペレーティング・システムしか対象としていません。ハードウェア管理コンソール(HMC: Hardware Management Console)もすばらしいツールではありますが、Power Systemsのハードウェアと仮想資源のみを対象としています。Power Systemsを運用しているほとんどの組織ではAIX、Linux、Windows、その他多くの仮想環境を管理しなければなりません。

さあ新しいIBM Systems Director 6.1の登場です。本稿では皆さんのために特別に設計された最高の組み合わせの次世代システム管理ツールを紹介します。

IBM Systems Directorとは?

IBM Systems Directorはデータセンターの管理を支援します。メインの管理画面のユーザー・インタフェースはウェブ・ベースです。この画面から管理サーバーと通信し合い、管理サーバーがデータセンターのすべての資源と通信します。データセンターのシステムのインベントリーを探して収集したり、システムの健全性や状態を監視したり、ライフ・サイクル・タスクを実行したり、問題の発生をトリガとして起動されるイベントに基づいて操作を自動化したり、仮想化、構成、アップデート、リモート・アクセス、そして消費エネルギーさえも監視します。

IBM Systems Directorの管理サーバーはWindows、Linux、AIXの各OS上にインストールできますが、IBM i 上にはインストールできません。ミッション・クリティカルなIBM i アプリケーションが稼動しているサーバーとは別のオペレーティング・システム上で管理サーバー・ツールを運用したいというお客様が多いのです。IBM Systems Directorは、IBM i、AIX、Window、Linuxなどのオペレーティング・システム、HMC、IVM、VIOSなどといったPower Systemsの資源、Power Systemsサーバー、System x、System z、BladeCenterなどのハードウェア資源、VMware、MSVS、Xen、z/VMなどの仮想化技術、IBM x86以外のシステムをも含む広範な資源を管理できます。またIBM Systems Directorには自動化を追加するためのスクリプト作成用コマンド・ラインもあります。

IBM Systems Directorの起動

IBM Systems Directorのインストールと構成は簡単です。図1に示した通り、ログオンして最初に目に入るのは[開始]タブと大きな[検索]ボタンです。このボタンをクリックしてユーザーIDと管理対象のシステム用のパスワードを入力します。LDAPサーバーを使用している場合はIBM Systems DirectorはLDAPサーバーにもアクセスできます。

検索が開始されるとIBM Systems Directorはローカル・サブネット内のシステムを探し、アクセスを要求してインベントリーを収集します(データセンター内の他のサブネットについては別途検索します)。ユニークな承認要件を備えたシステムについては、ロック・アイコンの隣にある「xシステムにはアクセスできません」というリンクを選択することで、簡単に個別のアクセスを要求することができます。検索中にIBM Systems Directorを起動することができます。まずはシステムを表示してくれるNavigate Resourcesから使ってみると良いでしょう。

仲間入り

IBM Systems Directorによるシステムの検索が終了すると、サインインした際のデフォルトのタブとして図2に示した[管理]タブが表示されます。このタブにはその日の作業リストが表示されると考えてよいでしょう。アップデートを管理したい場合もあれば、自動化や仮想化を実行したいときもあるでしょう。またPower Systems関連の作業に集中したい日もあれば、BladeCenterシステムを中心に作業したい日もあるでしょう。管理したい対象が何であれ、リンクをクリックして管理者の概要ページを表示させるだけで特定の作業専用のビューが表示され、作業項目を簡単に整理することができます。

たとえば、最初に実行するタスクはアップデートの管理処理をIBM Systems Directorがどのように進めているかを確認することとしましょう。まず、[管理]タブから[アップデートマネージャ]を選択します。すると図3に示すような概要ビューが表示され、アップデートに対する準拠状況を監視している対象システムはどれか、IBM Systems Directorがどれくらいの頻度でibm.com上の最新情報をチェックしているかを表示し、データセンターに存在するアップデートを検索します。

ページの右上にある「はじめに」のリンクに注目してください。このリンクは、IBM Systems Directorの基本を理解するためのウィザードを提供しながら、機能についてはあとでより深く学べるように詳細なタスクも提供しているという良い例です。「はじめに」ウィザードを使用すると、選択した任意のシステムに関するお知らせがibm.com上にないかチェックできます。Power Systems、HMC、System x、BladeCenterのファームウェアやドライバーのアップデートに加えて、IBM i、Linux、AIXなどのオペレーティング・システム用のアップデートもチェックできますので、重要なシステムをすべて選択して数回クリックするだけで必要なアップデートを探し出すことができます。IBM Systems Directorは新しいアップデートを見つけると、準拠ステータス(この概要ページにもありますし、任意のシステム・リストにその列があります)でそれを知らせてくれます。準拠上の問題があるシステムが表示された場合は、IBM Systems Directorを使用してそのアップデートをインストールすることができます。さらに、IBM Systems Directorは自分自身に関するアップデートも管理します。

ウェルカム・ページにある[学習]タブにはIBM Systems Directorやその主要な概念について学習するためのチュートリアルが豊富に用意されています。このチュートリアルをざっと眺めるだけで、IBM Systems Directorのパワーを余すところなく活用できるようになります。

システムの探索と操作

さまざまな動作が共通化されているためIBM Systems Directorはデータセンターの資源を効率的に探索して操作することができます。[資源の操作]オプションを使用すると事前に定義されたシステムのグループがいくつか表示されます。こうしたグループは多数存在しますが、IBM Systems Directorはこれらを整理して管理者の操作を簡素化してくれます。このグループのことを表示のためのメカニズムと考えるとよいかもしれません。たとえば、[システム・タイプ別グループ]-[オペレーティング・システム]-[IBM i Systems]というのも一例です。事前に定義したグループを追加してあるもう1つの理由は、[資源の検索]を選択したときにHMC、AIX、VIOS、IBM iなどといった一般的な単語で検索ができるからです。まずは[すべてのシステム]というグループから詳細に見ていくと良いでしょう。

システムを一覧表示させると、関連する情報やシステムのステータスなど多数の列が表示されます。表の一番上には検索用バーがあり、ここに入力された文字列を、表示されているすべての列に対の中から検索します。「AIX」と入力すればオペレーティング・システムがAIXのシステムを探しますし、「128.45」と入力すればIPアドレスがこの数字で始まるスシステムをすべて検索します。また「sys34」と入力すればホスト名にsys34を含むシステムをすべて検索します。自由に列をカスタマイズしてみてください。この機能を使用すれば、必要なデータの検索を最適化できます。

システム名をクリックすれば、いつでもそのシステムのプロパティを表示させて、何か異常があればそれを見つけることができます。図4に示した通り、システムに関する有益な情報がいくつかのタブに分けて提供されています。

一般:
システムの概要情報を表示します。システム名やシステムの説明などの共通項目を編集できます。また、仮想化やロケーションの詳細などといった他のプロパティが保存されているプロパティ・コールアウト・ボックスもこのタブに表示されます。

アクティブ・ステータス:
システムで起こっているすべてのアクティブな問題や準拠上の問題を表示します。

実施済みアクティビティ:
スケジュールされたジョブ、実行中のジョブ、完了したジョブを表示します。また、システムに対して適用された閾値や自動化計画もこのタブに表示されます。

構成:
リアルタイムの構成設定が表示され、その設定が構成テンプレートとして保存されます。

イベント・ログ:
システムが生成したイベントを表示します。

インベントリー:
システムのインベントリーを表示します。

表、トポロジー・マップ、プロパティのどこからでも、システム名を右クリックするとコンテキスト・メニューが表示され、そのシステムに対して(ロール・ベースのセキュリティに基づいた)実行権限のあるすべてのタスクが表示されます。

IBM Systems Directorは特定のシステムに関連するすべての資源のトポロジー・マップを表示することができます。トポロジーの視点としては基本、ネットワーク、ストレージ、ストレージ・エリア・ネットワーク、アップデート、仮想化基本、仮想化共通、仮想化詳細があります。どの視点を選択するかは、対象とするシステムと他の資源との関係をどのように表示させたいかによって決まります。上記の視点は実際に問題が起こったときにその真の原因を探る際に役に立ちます。

健全性、ステータス、自動化のチェック

IBM Systems Directorがフォーカスを当てているものの1つがシステムの健全性とステータスの管理です。何か問題が発生していないかを監視して、発生していればそれを知らせるということをIBM Systems Directorが適切に実行すれば、発生している問題をより適切に修正し、より価値のある自動化を計画することができます。[ステータス・マネージャ]と[自動化マネージャ]はこれを支援するためにIBM Systems Directorに組み込まれているプラグインです。

図5に示した[健全性概要]はカスタマイズすることが可能なワークスペースで、データセンター全体の健全性を俯瞰することができます。左上のスコアボードにはデータセンターで発生している問題と準拠違反がすべて表示されます。最新のアップデートが適用されていないという準拠違反があることを2つのエントリが示していますが、これはハードウェアの障害や閾値を越えているという問題とは異なります。[問題]リンクをクリックすると、データセンター内で発生しているすべての問題を確認することができます。これを元に、まず問題を取り除いてから他の作業に移るという作業リストを効率よく整理することができます。

図5 インスタンス上で実行されているジョブの数を表示させる、という具合です。ビュー上で数値を監視している項目はどれでもこのダッシュボードに追加できます。測定項目名をクリックするだけでグラフを拡大表示させることができます。

ダッシュボードの下には表やサムネイルがいくつかあり、対象とする任意のグループのコンテンツが表示されています。IBM Systems Directorはデフォルトで[お気に入り]と[問題のあるシステム]の2つのグループを表示しますが、たとえばHMCとManaged Power Systems、IBM i System、自分で定義したカスタム・グループなどを選択することもできます。サムネイル名をクリックするとグループ全体のすべての列が確認でき、システム名をクリックするとそのシステムのプロパティが表示されます。

管理下にあるシステムのすべてのモニターを表示できるという機能は、ステータス管理上で新たな主要部分となっています。実際のモニターはプラットフォームごとに異なるかもしれませんが、選択肢は何十とあります。これらのモニターに対して閾値を設定しておくことで、その閾値を越えたというイベントがログされることになります。

もちろん最終的な目標は問題を修正することです。これには[自動化マネージャ]が役立ちます。[自動化計画]ウィザードは最も一般的な自動化計画を作成してくれます。このウィザードでは、着目したいシステム、監視の対象としたいイベント、イベント・ログにそのイベントが発生したときに実行するべきアクションを選択するのをガイドしてくれます。このウィザードには一般的なイベントが表示され、CPU利用率、メモリ使用率、ディスクの使用率などに対する閾値の作成もサポートしてくれます。また、自動化計画にいつ監視を開始させるのかも尋ねてきます。夜間であれば利用率が20%を下回っても気になることはないでしょうから。また、必要に応じてより高度な計画を作成することもできます。重要なのは、必要なものに閾値を設定し、健全性概要からステータスの詳細を表示させ、自動化計画を使用して通知あるいはタスクを実行させることができるということです。

仮想化

物理的な環境と仮想環境をより効果的に管理する方法を学ぶのがIBM Systems Director のもう1つの主要なフォーカスです。仮想化マネージャ・プラグインがIBM Systems Directorに組み込まれていますので、物理的な環境と仮想環境の両方に対するビューやタスクを最適化することができます。

たとえば[資源の検索]をクリックすると、ハードウェア管理コンソールなどといった物理的な資源を検索することができます。HMCと入力すると事前に定義されたグループが一覧表示されます(図6)。リンクをクリックするとHMCの一覧を検索するだけではなく、HMCが管理している物理サーバーや各物理サーバー内に設定されている仮想サーバーも検索できます。さらに内部仮想レイアウトを表示させたい場合は、物理サーバーを右クリックして[トポロジー視点]-[仮想化一般]を選択すると、実行されている仮想化環境全体を構成している資源を含んだトポロジー・マップを表示させることができます。

表示されるウィンドウにはHMC、物理サーバー、仮想サーバー、VIOサーバー、仮想ディスク、物理ディスク、VLANなどの詳細が表示されます。これらの各資源のプロパティを詳細パレットに表示させたり、ステータスを確認したり、右クリックすることで資源に対する任意のタスクを実行することができます。仮想サーバー上で問題を見つけた場合は、その1つの仮想サーバー用の仮想資源、あるいはホスト全体用の仮想資源を編集することができます。[ホストの編集]を選択すると仮想ディスクを管理することができ、プロセッサとメモリを編集する仮想サーバーを俯瞰表示させることができます。1つの仮想サーバー上の仮想資源を修正する場合は、DVDドライブなどの物理資源を割り当てることもできます。

例として、ナビゲーション・エリアのインベントリーのカテゴリから[仮想サーバーとホスト]ビューを選択してみましょう。このビューではホスト中に含まれているすべてのホストと仮想サーバーを確認することができますが、この例の場合はすべてのプラットフォームを表示させています。この1つのビューでHMC、IVM、Vmware、Xen、Microsoft Virtual Server、z/VMホストおよび仮想サーバーを識別することができます。またこのビューにはすべてのホストと仮想サーバーの現在のCPU使用率、割り当てられているプロセッサ、割り当てられているメモリも表示されます。これにより仮想サーバーを追加する際にどのホストが適しているかが判断できます。

Power Systemsサーバーで高度なタスクを実行する必要がある場合は、集中力を途切らせてHMCにとりかかる必要はありません。代わりにIBM Systems DirectorがHMC用のタスクをすべて統合してくれているので、物理サーバーを右クリックして[拡張管理]を選択するだけでよいのです。タスクが実行された後はそのタスクに対する正しいリモートのHMCが起動されます。IBM Systems Directorはシングル・サインオンをサポートしていますので、リモートのウェブUIがシームレスに表示されます。

OS管理の統合

IBM Systems Directorを使用するとオペレーティング・システムの管理を統合することができます。オペレーティング・システムの資源をモニター・タスクからチェックし、プロセス自体を監視(プロセスの管理)して、特定のオペレーティング・システム用に最適化されたコマンド(コマンド定義)やタスクを実行することができます。

IBM i について最も一般的なスタート・ポイントはPower Systems Managementの概要ページ(図7)で、このページはPower Systemsに関連するすべての資源にフォーカスしています。このページは、IBM Systems Directorが1つのプラットフォーム専用に便利にできないかというお客様からいただいたご意見からひらめいたものです。

いずれかのPower Systemsの資源に問題が発生していれば、ステータス・セクションに表示されます。すべてにおいて問題がなければ[管理]セクションの特定のタイプの資源にフォーカスを当てることもできます。たとえば、オペレーティング・システムでIBM i を選択し、すべてのIBM i システムを表示させることができます。そこから、各オペレーティング・システムのステータスやデータの列を表示させたり、右クリックして利用可能なIBM Systems Directorのすべてのタスクを表示させたりすることができます。

さらに、Navigator for i のタスク(IBM i のすべてのインスタンスで稼動している組み込みのウェブ・コンソール)への統合リンクへアクセスすることもできます。このタスクで右クリックして[IBM i 管理]-[作業管理]を選択し、シングル・サインオンを経由してリモートのNavigator for i コンソールを起動し、作業管理タスクを開きます。そこからサーバーのジョブに対して作業したり、ジョブの優先度を変更したり、ユーザーを管理し、セキュリティやパフォーマンスを評価することができます。

またIBM Systems Directorは組み込みAIXコンソール・タスクと統合しており、これを使ってAIXオペレーティング・システム管理を拡張することができます。Power Systems Managementの概要ページでオペレーティング・システムのカテゴリから「AIXシステム」を選択します。これはIBM i システムの場合と同様です。さらにそこでオペレーティング・システムを右クリックしてAIXウェブ・コンソールを選択し、起動します。AIXコンソールの新しいタスクの1つが健全性タスクで、このタスクはシステム構成値や主要なパフォーマンス指標、使用中のトップ・プロセスやファイル・システムを表示します。

アドバンスト・マネージャに注目

IBM Systems Directorはオプションのアドバンス・プラグインを提供してデータセンターの主要なエリアをサポートすることを目的としています。IBMは追加のプラグインが利用可能になり次第、それらを同社のウェブサイト上に少しずつ紹介していきます。アクティブ・エネルギー・マネージャはそのうちの注目すべきものの1つです。この機能はオプションのプラグインで、エネルギー管理状況の表示、監視、指示、自動化まで行うことができます。たとえば、システムを選択してそのシステムが使用している電力データのトレンドを観察することができます。設定された最大電力の上限値が不適切と思われる場合は、[電力上限値]を選択して最大電力上限値を絶対値またはパーセント値で変更することにより、資源のエネルギーを簡単に管理できます。

アクティブ・エネルギー・マネージャ・プラグインはIBM Systems Directorに直接入りますので、追加の監視ビューや列、グループを表示させることができ、エネルギー管理タスクの自動化計画を作成してデータセンターが最小限のエネルギー消費で済むようにできます。

今後の情報にも着目

本稿ではIBM Systems Directorが提供している機能の一部を紹介しただけです。ご理解いただいた通り、Power Systemsを管理するための最適化された機能を全く新たに集めたものです。今後の記事では主要な多数の機能の詳細について触れることにします。

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