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IBMi海外記事2011.11.24

IBM i管理者向けのIBM Systems Director 6.2.1

グレッグ・ヒンターマイスター 著

管理業務を容易にするSystems Directorの機能

私が執筆してきた今までのコラムでは、IBM Systems Director 6.2.1の機能がどのようにしてクロス・プラットフォームのデータセンターを管理する業務を支援するかについてたびたび触れてきました。本稿では、IBM iの管理者である読者の方々をSystems Directorがどのように支援するのかについてもう少し正確に述べてみたいと思います。

業務開始

IBM Systems Director 6.2.1を使用してIBM iの管理業務を開始するのは簡単です。決めておかなければならないのはたったの2つだけ。管理サーバーをどこにインストールするのかと、管理対象の各システムに対してどのエージェントのサポートが必要なのか、です。IBM Systems Director はIBM iをうまく管理しますが、AIX、Linux、Windows上には管理サーバーがインストールされていなければなりません。管理サーバーが一度インストールされてしまえばIBM Systems Directorエージェントがプリインストールされていますので、IBM i OSを管理する準備が整います。ただし、IBM i用にどのエージェントのサポートが必要なのかによって適切なTCPサーバーを起動しておく必要があります。以下にオプションを示します。

エージェントなし:

エージェントを使用せずに(SSHだけで) IBM iを管理すると、ディスカバリ、インベントリ、ナビゲーション、PTF(アップデート)の管理などといったコア機能がいくつか提供されます。追加の機能としてはIBM iファイルシステム上のファイルの管理があります。SSHを有効にするには次のコマンドを実行します。
STRTCPSVR *SSHD

プラットフォーム・エージェント:

プラットフォーム・エージェントを使用してIBM iを管理すると、上記の機能の他にCIM監視とアセットIDの機能を利用できます。アセットIDを使用すると、保証情報や当該IBM iのインスタンスに関するその他のカスタム情報をインベントリに追加することができます。そして、インベントリがいったん収集されるとそのカスタム情報を使用して動的グループを作成したり、Systems Director内のサーバーを識別したりすることができます。プラットフォーム・エージェントを有効にするには次のコマンドを実行します。
STRTCPSVR *SSHD, STRTCPSVR *SLP, STRTCPSVR *CIMOM.

共通エージェント:

このレベルでは、エージェントなしおよびプラットフォーム・エージェントのすべてのオプションの機能に加えて、メッセージ・キュー監視、プロセス監視、ジョブ監視、詳細パフォーマンス監視などのオプションも利用可能になります。また、共通エージェントを使用するとGENEVENTコマンドが使用でき、このコマンドにより独自のイベントを生成してSystems Directorが自動化計画の中で反応する事象をカスタマイズすることができます。共通エージェントを有効にするには次のコマンドを実行します。
STRTCPSVR SERVER(*HTTP) HTTPSVR(CAS)

IBM iの管理者はおそらくIBM i OSだけでなく、HMCやIBM iが稼動している物理サーバーも管理したいという点を指摘しておきます。こうした管理対象システムに対してはエージェントなしが必要になります。必要なことはHMCを発見してそのHMCへのアクセスを要求するだけです。アクセスが可能になればHMC、物理サーバー、仮想サーバー(パーティション)がすべてSystems Director 上に表示されます。

さて、IBM iの管理者が活用できるIBM Systems Director 6.2.1の機能について具体的にみていきましょう。

インベントリ

Systems Directorの機能で最初に活用できるのはIBM i上のインベントリを収集する機能です。View and Collect Inventoryタスクを使用すると1つあるいは複数のIBM iシステムの現在のインベントリを表示することができ、図―1に示す通りインベントリのカテゴリごとに表示したり、インベントリのリスト全体を後で表示したり、レポートに使用するためにファイルへエキスポートしたりできます。

図―1のリストをご覧いただくとおわかりの通り、ディスク・ドライブから最新の累積PTFパッケージ、インストールされているライセンス・プログラムに至るまでかなりのインベントリがあります。

しかしこれはインベントリのほんの始めの部分に過ぎません。IBM iユーザーのほとんどはHMCを介してPower Systemサーバーを管理しており、Systems DirectorはHMC、仮想入出力サーバー、IBM iを稼働しているパーティションを発見して管理することができます。前述の通り、HMCを発見してしまえば関連するすべての資源のインベントリを入手でき、入出力がIBM iパーティション上でどのように共有されているかのトポロジ・マップを表示させることもできます。

監視

IBM Systems Director 6.2.1を使用するIBM iの管理者は、IBM i OSを多くの種類の属性で監視することができます。システムの統計情報から始まり、CPU使用率%、現在の一時記憶域使用状況(MB)などを監視することができます。その他の属性のカテゴリとしては、ユーザーの統計情報、サブシステム、記憶域プール、ジョブ、ジョブ・キュー、メッセージ・キュー、入出力プロセッサなどの他、ファイルやフォルダも監視することができます。これらの属性の監視のほとんどで共通のエージェントが必要となりますが、プラットフォーム・エージェントで監視できる属性もあります。

ここで注目したいのはメッセージ・キューの監視です。QSYSOPRメッセージ・キュー(およびその他いくつかのキュー)を監視することは大変重要なので、QSYSOPR中のメッセージを検索するイベント・フィルタを作成しても良いでしょう。メッセージ・キューの指定の仕方を図―2に示します。

この例では、IBM Systems Directorに対してEvent Textページ(すべてのCPFメッセージに対しては「CPF」、あるいはメッセージCPF1234だけについて監視するには「CPR1234」)に一覧してあるイベント・テキストと一致するメッセージがQSYSOPRメッセージにあるかどうか探すように指示しています。一致するものを見つけた場合は、このイベント・フィルタを含んでいる自動化プランに指定されているアクションを自動化プランが実行します。

IBM iは物理サーバーに依存しており仮想入出力サーバー、スイッチ、HMCなどと密接に連携しているということはわかっていますので、IBM Systems Directorがこうした資源も監視できるとわかればそれは嬉しいことでしょう。たとえば、ハードウェア・イベントをサーバーからもHMCからも監視することができます。この種のイベントはIBM i OS上でアクションを起動して何らかの反応をするようにできます。

コマンド/スクリプトによる自動化

多くの管理者の最終的な目標は、IBM Systems Directorが特定のイベントに自動的に反応してくれて、その間に自分たちは他のもっと重要な問題に集中できるようにすることです。Systems Director 6.2.1の自動化計画とコマンド定義を使用すると、管理者はIBM iオペレーティング・システム、HMC、物理サーバー、パーティション上などに潜んでいる問題(イベント)を探すようにIBM Systems Directorに対して(図―2の例のように)指示し、イベントに応じてその問題を修正するためのコマンドやスクリプトを使って反応させることができます。

コマンドはCLコマンドでも、イベントを送信してきたIBM I OSネイティブのスクリプトでもかまいません。またコマンドはHMCコマンドでも構いません。別のオプションとして、Systems Directorのコマンドでもよく、これには複数のパーティションに対してプロセッサ/メモリの割り当てを編集する機能などを含む多数のコマンドがあります。

さらに、GENEVENTコマンドを使用すると管理対象のIBM i OS上でカスタム・イベントを生成することができます。たとえば、IBM i固有の問題に対してManagement Centralを使用して監視し、問題が見つかった場合にManagement Central用にカスタマイズしたパラメータをGENEVENTコマンドに渡して実行し、Systems Directorが組み込みの電子メール通知サービスを使って問題を管理者に報告するようにできます。

PTFの更新とコンプライアンス

IBM Systems Director 6.2.1はPTFのインベントリを使用してまだ適用されていない「ハイパー」PTFあるいは累積PTFグループがあればそれを知らせてくれます。さらに、コンプライアンス機能を設定して、IBMがibm.comで提供している最新の更新とIBM iオペレーティング・システム上に現在インストールされているものとを、IBM Systems Directorが定期的に比較するようにできます。未適用のPTFが見つかれば、既存のツールを使用してそのPTFを入手するかまたはSystems Director のUpdate Managerを使用してPTFをダウンロードし、プッシュアウトして管理下にある複数のIBM iオペレーティング・システムにインストールすることができます。

しかしIBM Systems Director 6.2.1はこれにとどまりません。もう一度申し上げますが、IBM iはHMC、Power Systemサーバー、仮想入出力サーバーと緊密に連携しているので、IBM Systems Directorはこれらのシステムに対するPTFやファームウェアも比較して更新することができます。

上記の機能はすべてライセンスが不要であるということを申し上げておきます。インベントリ、監視、更新、自動化機能はすべてのIBMハードウェアの所有者が利用できます。次に、IBM iのユーザーにとって価値のあるオプションのSystems Director プラグ・インについても説明しましょう。

エネルギー管理

Active Energy Managerはオプションのプラグ・インの1つの例で、IBM iと直接やり取りをするわけではありませんが、IBM i管理者がシステムを管理する際に効果的に使用することができます。 Active Energy Managerには2つの機能があります。監視機能はライセンスなしで利用可能ですが、管理機能はライセンスが必要になります。両機能ともIBM iユーザーにとって価値のある機能です。

監視については、Active Energy ManagerはPower Systemだけでなく、たとえばクーリング装置などといったIBM iシステムが依存しているデータセンター内にある他の資源についても、消費電力のワット数と温度を記録監視する機能を提供しています。データセンターのフロア周辺に設置した無線センサーからの温度を記録監視することもできます。閾値を設定してサーバーの温度がどれくらい高くなったか、あるいは消費電力がどれくらいのワット数になったかに応じて反応を自動化させることができます。

エネルギー管理については、電力上限機能を使用してPower Systemの消費電力に上限を設けることができますし、また電力節約機能を使用してプロセッサの速度を下げて電力を節約することもできます。電力節約やプロセッサ速度の低下はパーティション単位で制御することができるようになりましたので、他のパーティションの処理速度を低下させながら、実運用のIBM iパーティションをフル速度で実行させることができます。

仮想化管理

VMControlはIBM Systems Director 6.2.1の仮想化管理プラグ・インで、IBM iユーザーにとってはきわめて便利なものです。無償のVMControl Express Editionを使用すると、通常はHMCで起動しなければならない日々のパーティション操作を実行することができます。さらに、仮想化管理のタスクにはコマンド・ラインに対応するものがありますので、アクションを自動化することができます。

VMControlでパーティションの作成と削除が行えます。また、割り当て済みプロセッサ、メモリ、権利のあるCPU装置などといった仮想化の設定を編集することもできます。たとえば、現在IBM iパーティションに割り当てられている 4つの仮想プロセッサの使用を実際のプロセッサの0.1から0.5に編集することができます。この種の設定変更は1つのパーティションに対しても行えますし、サーバー上のすべてのパーティションに対しても行えます。またDVDドライブをどのパーティションに割り当てるかを制御することもできます。

またVMControlはネットワークと記憶域用の追加の測定基準を多数提供しており、これらの測定においてはオペレーティング・システム中のエージェントを使用する必要がありません。

記憶域の制御とネットワークの制御

IBM iのユーザーにとって価値のあるあと2つのIBM Systems Director 6.2.1のプラグ・インは、記憶域の制御とネットワークの制御です。いずれも名前の通りの仕事をします。つまり、IBM i管理者が、IBM i OSが依存している記憶域やネットワークを制御するのに有用な機能です。IBM i管理者の多くがIBM i OSに深く入って行って毎日の記憶域およびネットワークに対する要請に応じていますが、上記のプラグ・インはIBM i OSが通信している記憶域システムおよびネットワーク・スイッチの健全性についての洞察を提供してくれます。

まとめ

IBM i管理者が気にしていないIBM Systems Director 6.2.1の機能(Linuxイメージの導入、AIX/Linux復元のためのPower Systemsのプール、Windowsの監視、System x構成管理等)もありますが、本稿を通じてIBM i管理者がすぐに使えるたくさんのSystems Directorの機能があることがおわかりいただけたと思います。もちろん、現実には多くの管理者はAIX、Linux、Windowsのマシンの面倒も見なければなりません。そのような場面になった時は、IBM Systems Director 6.2.1がそれら他のプラットフォームの管理も支援してくれます。

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