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IBMi海外記事2014.03.18

自社のIBM iビジネスをモダン化する:パート1

Trevor Perry 著

モダン化成功の第一歩は優れた戦略から

自家用車を所有していて定期的に乗っているのであれば、もっと良い車に乗り換えたいと思うときがいずれくるでしょう。それは塗装がくすんできたからとか、少し古くなってきたように思えるとかという理由かもしれません。あるいはA地点からB地点に到達するのに思ったよりも時間がかかるというものかもしれません。または家族の人数が増えたからもっと大きな車が必要なのかもしれません。なんらかの理由で、車が皆さんの期待に沿った働きをできなくなってきていて、できていても最良あるいは最速の方法ではなくなってきているのです。
そこで車両をアップグレードすることにしたのですが、さて選択肢がたくさんあります。新車に買い換えるという選択をしたのであれば、オプションがたくさんあります。新モデルを選ぶこともできますし、アップグレード・モデル、新しい車体のタイプ、まったく新しい車種も選べます。そうではなく今乗っている車を乗り替えずに改良することにしたとしましょう。エンジンをオーバーホールするのか、まったく新しいエンジンにするのか、サスペンションを取り替えるのか、塗装を塗り替えるのか、シートを新しくするか、あるいは洗車してワックスをかけるだけにするのか。あるいはその車を修理に出している間に代車を借りるかもしれません。
新車あるいは修理調整した車を購入する場合、どんなアクセサリーをつけますか。GPSを取り付けますか、それとも紙の地図を使い続けますか。衛星ラジオをつけますか、AMラジオを聴き続けますか。同乗者のために後部座席にビデオ・スクリーンを取り付けますか、それとも旅行用ゲームを買いますか。
現在お世話になっている整備士はどうでしょう。その整備士は今でも新車やアップグレードした車を保守することができますか、その資格を持っていますか。ご自分の運転技術はその車を扱うのに十分ですか。ガレージやカーポートは車を収容して天候やラジオを盗もうとしている車上荒らしから守ってくれますか。
車をモダン化するにはさまざまな決断が必要です。多くの人にとってその過程はまったくもって半端なものではありません。友人や家族の意見を聞いたりしますが、それぞれ意見や好みが異なり、頭が混乱するばかりです。あなたの財布を狙っている数多くのカー・ディーラーや修理工場の中からどこをどのように選びますか。最近の車に付属してくる流行のガジェットはどうしますか。ただただ選択肢が多すぎます。
IBM iの世界でのモダン化も同じ話です。

ITのモダン化

ムーアの法則は、コンピュータの世界一般で起こっている急速な進歩の速度に合わせるかのようなテクノロジーの進化の現象を述べています。より小さく、よりパワフルなチップの出現によりビジネスが利用できるパワーの量が増える一方で、サーバーをホスティングするのに必要な物理的空間の大きさは小さくなってきています。世界がいままで以上にお互いにつながり、そしてその接続の速度が速まるにつれて、任意のアプリケーションを稼動している任意のサーバーの設置場所がこの地球上のどこでもかまわなくなってきています。この進歩の結果、ITはより良いものにそしてより速いものにならなければなりません。適切なスキルをもった開発者を探すのは、サーバーのすぐ近くに住んでいたり働いていたりする必要がないので以前に比べれば大変ではありません。テクノロジーの改良はアプリケーションの使い勝手や機能をIT顧客、ここではエンドユーザーになりますが、に提供します。皆さんも目にしてきた通り、ビジネスのありかたを変えるようなテクノロジーによって人間とコンピュータのやり取りに飛躍的な変化が訪れています。
情報技術(IT)という用語の簡単な定義では、「データを取得、管理、保管し、データを情報に変換するためのメカニズムを提供するための技術を使用すること」となっています。これらがITの製品です。どんなビジネスでも、顧客のために製品を改良することができるのであれば改良しなければなりません。そうした改良をしなければ時代遅れになってしまいます。したがって、新しいツールが使えるようになったとき、IT部門はその新しいツールを採用するのかしないのかという選択肢を持つことになります。これがモダン化なのです。
当然のことですが、そうした新しいツールを使用することで恩恵を得ることができるのか否かを正しく判断することが重要です。新しいツールを使用すると自社の製品に新しい機能や使い勝手を組み入れることができます。しかし、新しいツールが登場したからといって、すぐにそれを採用しなければならないというわけではありません。新しいツールを採用するかどうかを決めるということは、それによる恩恵と利点、費用と欠点を理解しそれらを比較検討することです。この意思決定のプロセスがモダン化なのです。
テクノロジーの進歩とは別の視点で考えてみましょう。アプリケーションがあるレベルの機能を備えていてそこに機能強化の余地があり、その機能強化によりエンドユーザーに対して何らかの支援となる場合、IT部門は自社のビジネスに恩恵をもたらす既存のツールあるいは新しいツールを使用して新しい機能や使い勝手を提供することができます。このアプリケーションの改良がモダン化です。
実世界では、最適な状態で機能しているとはいえない部分を切り離し、より良く機能するように再構築することができます。ITにおいても同じことが言えます。たとえば、アプリケーションをモジュール化してサービス化できるように変換するとアプリケーションの操作性が改善されます。データストアのアーキテクチャを改良するとアプリケーションの効率が向上します。アーキテクチャの個々のコンポーネントに対して操作性を大幅に強化する方法はいくつかあります。このアプリケーションの活性化がモダン化なのです。
新しいツールの中にはより高速にそしてよりよく作業する手段を提供してくれるものがあります。開発に対する新しいアプローチでもっと効率を向上させることができます。新しいスキルやテクニックを学ぶことでコードの効率を向上させたり、保守に必要な手間を削減したり、敏捷性を改善したりすることができます。これらはいずれも長い目で見たときにビジネスによい効果をもたらします。開発プロセスを改善することはモダン化なのです。
モダン化にはいろいろあります。多くの場合、モダン化とは製品をより良くしたりより高速にしたりするためのアクションを意味します。何をもってより良い、より高速とするのかを勝手に決めることはできませんし、一人の人間、一社のベンダーや特定のテクノロジーだけに恩恵をもたらすものであってはいけません。モダン化を単に「何かする」というだけで着手してはいけませんし、自社の重役が言ったという理由だけでモダン化の旅の途についてはいけません。

まとめると、モダン化は次の二つの率直な疑問に答えることに要約されます。

  1. より良くそしてより高速にできるのか?
  2. ビジネスに恩恵をもたらすのか?

これらの質問に答えることができる単一のソリューション - アプリケーション、プラットフォーム、テクノロジー、方法論 - はありません。それぞれの企業には管理しなければならない独特な条件があります。アプリケーション、インフラストラクチャー、従業員、顧客、パートナー、サプライヤー、そして地理的位置などの組み合わせが全く同じというビジネスはありません。オーナーシップ、重役チーム、ビジネス戦略は企業ごとに異なります。明らかに、モダン化のためのソリューションやアプローチはその要件ごとにユニークなものになります。いろいろ誇大宣伝はありますが、あらかじめ準備されたモダン化のソリューションを見つけることは実際不可能です。
本シリーズはこうした疑問に答えるものではありませんし、ある特定のモダン化のソリューションを提供することを意図しているわけではありません。そうではなくて適切なモダン化のための質問ができるようになるための情報を提供するものです。また本シリーズはビジネス、アプリケーション、インフラストラクチャーをモダン化する際の選択肢に関する理解を高め、モダン化の旅の次のステップに進む際に力を与えるものです。冒険の旅にようこそ!

IBM i OS

IBM i OSには、そのルーツを中小企業ビジネスに持つという輝かしい過去があります。そうした組織に対するこのプラットフォームがフォーカスしていることは、常にアプリケーションです。企業は、会計、流通、財務、製造、その他のビジネス・プロセスを管理するため、IBM i以前のアプリケーションをインストールしていました。IT開発チームはそうしたアプリケーション用に多数のカスタム・プログラムを開発していました。企業は、IBMを含むさまざまなベンダーの選択肢の中からアプリケーション・パッケージを購入していました。こうした企業では、購入したアプリケーションを修正して特定のビジネス・プロセスやビジネス要件に適合させるのが一般的でした。アプリケーションの幅広さは一時数万個にも上り、CL、RPG、COBOLなどといったHLLコードの行数は(おそらく数えることができないくらいに)膨大なものになりました。
ビジネス・アプリケーションが主要なビジネス機能に対して重い荷物を持ち上げる役割を果たしながら、それを支えるプラットフォームは信頼性が高く、安全、スケーラブル、完全で堅牢であるという名声を得ました。多くの企業でIT部門は単一のプラットフォームですべてのアプリケーションを稼働していました。このアプローチは新しいアプリケーションがWindowsやLinuxなどといった他のサーバー上に本拠地を見出すまで続きました。ファイル共有は一台のPCから提供され、メール・サーバーは他にインストールされるなどといった具合に、最終的にはスタンドアロンのサーバーの集合体がファームとなったのです。
さまざまなサーバーがあっても、今日のビジネスは依然としてIBM iに依存して主要なビジネス・アプリケーションを提供し、プラットフォームはスケーラビリティ、完全性、信頼性をもって確実に依然として提供し続けています。IBM iは非常に良くできたOSであり、しかも長きに渡ってそうあり続けてきたので、忘れ去られたプラットフォームとなっています。

IBM iのモダン化

私たちが利用しているプラットフォームはそれ自体が何らかのモダン化を経ています。System/34やSystem/38は元々ビジネス・コンピューティングの世界では革命的なサーバーでした。1988年にAS/400がこれらの2つのプラットフォームを置き換えた時、アプリケーションのプログラムコードを時々再コンパイルする程度では済みませんでした。1995年にテクノロジーがCISCコンピューティングからRISCコンピューティングに移行する際は、プログラムコードの再コンパイルが必要でした。しかしデータベースについては変更せずに移行することができました。
2008年にIBMは「Power Systems」という新しいサーバー・プラットフォームを発表し、OSをアップグレードしてPower Systemsサーバーの新しいアーキテクチャ群を活用しました。IBMは「i」という文字を使ってOSの名前を変更し(より一般的にはGoogleで検索されやすいように「IBM i」と記述)、新しいハードウェア・プラットフォームに適したブランドにしました。同時に、こうしたアーキテクチャの変更により、OSのバージョン5.4からバージョン6.1へアップグレードするときに時々プログラム・コードを再コンパイルする必要がありました。
IBM iが登場してから約30年になりますし、それと同じくらい長くビジネス機能を提供するアプリケーションを書き続けてきた開発者もいます。ほとんどのプログラム・コードも同様の長い期間にわたって運用環境に存在しています。IBM iのコミュニティーは同じアプリケーションを30年間稼動できることを利点と認識しています。というのは、IBMが新しいOSをリリースしたり新しいツールセットを発表したりするたびに新しいスキルを必要とされないからです。しかし、長年に渡るIBM iコミュニティーでの結果は自己満足でした。開発者やプログラマーは既存のアプリケーション・セットをサポートし続けたり、同じような機能や使い勝手を追加したりするのに新しいスキルを必要としませんでした。地球規模の金融危機が起こり予算が厳しくなると、企業は予算削減の手段としての必要なトレーニングが明らかに欠如していることに気づき、自己満足は幾重にも続く景気停滞の波の中に消えていったのです。
一部のコミュニティーではより少ない予算でより多くのことを実施でき、アプリケーションを強化して機能追加や使い勝手を改良したところもありましたが、IBM iのプロフェッショナルたちのほとんどは今もっている能力を超えて前進することをやめてしまいました。しかしその次にユーザーたちがもっと良いUIを要求し始めました。というのも自宅にあるPCのUIの方が仕事場のデスクトップのUIの方より優れているからです。基本的なウェブ・ページでさえも仕事で使う緑色画面のエミュレーターよりも使い勝手は優れています。GUIに対する需要が会社の中で最も大きな声となってきていて、IT部門は緑色画面のアプリケーションを「モダン」なものにアップグレードするように求められました。その需要が拡大するにつれ、ベンダーは「モダン化」という用語を使ってあらゆる種類の開発ツールを売ろうと決めたのです。
時を現在に戻してみると、私たちは新しいテクノロジーの世界に住んでいて、タブレット端末が強力な位置を占め、あらゆる場所からモバイル端末で情報にアクセスすることが遍在化しています。IBM iのモダン化は依然として、アプリケーションを端末により良く対応させるためにアップグレードしたいというユーザーからの声に押されています。ベンダーはモダン化の神話を払いのけ、自社のソリューションがどのようにモダン化の課題に対する答であるかを語ります。これでは混乱に支配されてしまいます。神話の正体を明らかにし、モダン化を定義して仕事に取り掛かるときが来たのです。

ITモダン化戦略

モダン化のためのテクノロジー、ソリューション、ツール、テクニックの選択肢が数多くある中で、一部のIBM iのIT組織が停滞して当惑しているのも無理はありません。私たちの業界は20年以上に渡ってアプリケーションをモダン化してきたのに、まだ終わらないのはなぜでしょう。個々の企業が足踏みせざるを得ない要因としては、財源の不足、会社のオーナーシップあるいはマネジメントからのサポートの欠如、新しいスキルの不足などがありますが、それよりも抗うことのできないITビジネスの混乱があります。モダン化しなければならないのはわかってはいるのですが、どこから始めたら良いかがわからないことがほとんどです。
多くの人たちは駆け引き上手で、いつでも言われたことに対し反応して対応します。もちろん、われわれの仕事や家族は約束を要求しますし、定期的なイベントや行事に対してはあらかじめ計画を立てますが、しかし一日、一週間毎の生活に追われているのです。モダン化の計画を持たないIT組織はいつも言い訳を言っているように見えます。多くの場合、そうした言い訳は、他にたくさんやることがあるせいにする傾向があります。典型的なのは「木を見て森を見ず」という決まり文句です。

神話の正体を明らかにし、モダン化を定義して仕事に取り掛かるときが来たのです。

ほとんどのビジネスで必要とされるモダン化に対する取り組みの簡単な例を見れば、この現象が理解しやすくなるでしょう。ユーザーはデータの分析が可能なツールを使いたがります。こうしたアプリケーションに加え、IT部門はレポート、それも大量のレポートを提供します。日常茶飯事のようにユーザーから最も要望が多いのが、追加のレポートです。ユーザーは、このレポートこそが正しい情報を提供してくれるのだと主張します。はたして、翌週あるいは翌月にはそのレポートについて変更(あるいはまた別の新しいレポートを)を要求してきます。要求者の今回の思いつきのために再編されたものと同じデータを示しているレポートに対する変更要求なのです。
新しいレポートを作成したり既存のレポートを変更したりすることは、IT部門にとって時間がかかります。我々はレポートを作成する専門家ではあるのですが、その自分たちの開発見積もり時間数は常に「30分!」なのです。しかし個々のレポートの開発や変更に要した時間をすべて見直してみると、経過時間は1週間あるいはそれ以上になり、コーディングの時間も1日(もちろん1日12時間換算です)かかっています。見積もり時間の30分が正しかったことは一度もありませんが、新しいレポート作成要求が来たとしてもこの見積もり方法をやめてもっと良い計画を作成しようという開発者はほとんどいません。
興味深いことに、こうしたレポートの開発を専門に雇用されている開発者はほとんどいません。ユーザーが依頼してくる要求に応えることが開発者の他の作業に悪影響を与えているのです。無理な約束をしてしかもその約束を果たせない結果、残業をしたり、週末に出勤したり、祝日をオフィスで過ごしたりすることになるのです。「モダン化」という用語が登場する前に、IT部門はすでに守勢に回っていたのです。
そしてスプレッドシートの登場です。レポート・ツールのモダン化の典型です。ユーザーはスプレッドシートのツールを一旦使いこなせるようになると、ツールに入力しているデータがデータベース上にあるべきだと気付きました。スプレッドシートはアプリケーション・データから自動で生成されるべきとユーザーが声高に叫び、モダン化が起こりました。開発者の最初のステップがスプレッドシートのツールについて研究することだったのは当然のように思えるかもしれませんが、しかし今日でさえこうしたツールを巧みに使えるようになることはIBM iの開発者のスキルには含まれていません。さらに、ユーザーは自分たちが使うツールをモダン化しましたが、IT開発者はレポート作成プログラムではなくスプレッドシート作成プログラムを開発し始めたのです。ユーザーがツールを使いこなす能力がますます高まるにつれ、ユーザーはもっと多くのスプレッドシートを要求するようになり、レポートを要求していた時と同じような状況を悪化させているのです。
ユーザーの要求に対応していくというアプローチは今日でも遍在しています。IT部門はほとんどあるいはまったく計画というものができていません。ユーザーが自分でデータを抽出できるようなツールがいくつか利用可能になり、より多くのデータにアクセスできるツールがいくつか利用可能になりました。開発者たちはいまやユーザーが自分たち自身で解釈あるいは理解できるようなデータへの道筋と視点を作成するのに時間を費やしています。しかし紙の量が減ったという点を除けば、モダン化が起こったようには思えません。
これは単純な例ですが、この行動パターンはその規模や複雑さにかかわらず多くのIT部門やプロジェクトに当てはまります。IT部門は一般的に期限を守らない、予算を守らない、信頼できないという批評を受けます。成功するモダン化プロジェクトとは期日通りに予算範囲内で終了できますし、優れた機能を提供して継続的な保守やサポートの必要性を削減します。しかしそれには計画が必要で、計画作成のためには戦略が必要です。
このような特定の状況に対してビジネス課題は明らかです。ユーザーはデータを分析して自分たちの作業フローのタスクを遂行するのに必要な情報を生成し、正しくて意味のある意思決定をするための手段を必要としています。IT部門からの反応は従来のアプローチを継続するというもので、自社のビジネス課題に取り組むというよりは個々の要求に駆け引きを交えて対応していくというものです。
ここで、ビジネス課題に対するソリューションも明白です。ビジネス・インテリジェンス・ツールとデータ分析ツールを使用することでユーザーは自分たちの作業フローのタスクを自分たちで所有することができ、正しくて意味のある意思決定ができるようになります。課題を解決するのに投資が必要なのは、要件の収集、ソリューションの設計または選択、ソリューションのコーディング/実装、開発したソリューションの社員への展開です。IT部門は何らかの計画を立てることでこのビジネス課題を解決するのに必要な経費を算出し、解決することによる恩恵、経費削減額などを確認することができます。この対投資効果の分析により、モダン化プロジェクトに対する投資を経営層は認めざるを得なくなります。
うまくいっているIT組織は自組織が向かおうとしている方向を理解しています。そうした組織は自社のビジネス戦略を支援するために役割を果たすことを理解しています。テクノロジーが進化するにつれて自部門も常に進化し続けなければならないことも理解しています。モダン化に着手し、IT組織の標準的な一組織になり、成功した組織になるには戦略が必要であることも理解しています。
IBM iコミュニティーの多くでは(中小ビジネスの多くでもそうですが)、日々のオペレーションを遂行するための努力のせいで、企業を正しい未来に導くための長期的な方向の視点がないがしろにされています。戦略とはプログラマーが開発するスキルではありません。戦略はプログラマーが管理者に昇進することで作られるスキルでもありません。戦略は、ビジネスに役立つことよりも思いつきや好みが頭にあるいわゆるITプロフェッショナルが身につけているスキルであることは稀です。多くの企業では報告体制を組織化してIT部門は会計部門に業務報告するため、IT部門は原価部門として認識されるようになってしまっています。CIOを任命しているような企業でさえIT戦略を必ずしも気に止めているわけではありません。

最初のステップ

スキルのレベルやトレーニングのレベルにかかわらず、モダン化の取り組みの最初のステップは戦略です。どこから出発するのか、どこへ向かうのか、目的地にどうやって到達するのかを旅立つ前に認識しておかなければなりません。戦略とはまさにそのことなのです。また戦略を定期的に見直して、テクノロジーの進化、顧客ベースの変化、マーケティングのアプローチ、ビジネスのオーナーシップなどといったあらゆる面での進化を取り入れる必要があります。しかもその対象となる側面のリストは多数に上ります。 モダン化のための3つのステップは、その詳細にとらわれ過ぎると複雑になりますが、そうでなければ容易に理解できます。これらのステップに注意してモダン化のフレームワークを構築してください。このフレームワークがモダン化の取り組みを確実に成功に導くための基礎となります。

今どこにいるのか?

全体像を理解するためには組織についての以下の4つの主要な領域を考慮しなければなりません。

  • インフラストラクチャー: ネットワーク、サーバー、ルーター、などといったすべてのハードウェアのアーキテクチャーのマップを作成します。インフラストラクチャー内のすべてのコンポーネントをハイレベルの要約レベルと詳細なレベルで識別します。
  • アプリケーション: 組織全体にわたって使用しているアプリケーション群のハイレベルなマップを作成します。統合コンポーネントとその要件を理解し、特定のハードウェアやOSの要件を文書化し、現在のアプリケーションによるサポートが欠如しているビジネス機能がどこにあるのかを識別します。このレビューで、ビジネスに対するアプリケーションの価値と重要性を確実に識別してください。アプリケーションがコア・アプリケーションなのかどうか、そのアプリケーションが必要とするアクセスの種類、必要とするセキュリティー要件は何かを確認してください。アプリケーションのユーザーが誰であるかも理解しなければなりません。
  • 顧客: アプリケーションのユーザーを識別してください。これには社内、社外のエンドユーザー、顧客、パートナー、ベンダー、消費者、利害関係を持つサードパーティー、そしてすべての利害関係者などが含まれます。
  • ITスキル: ITチームのスキルセットの幅広さと奥深さを認識してください。今日の企業では使用されないかもしれない技術スキルがあることも認識してください。ただし、そうしたスキルでも将来のモダン化のときには必要となるかもしれませんが。

どこへ向かうのか?

自社のビジネス戦略を理解することで、自社に役立つためのIT戦略を構築するための最善の準備ができます。少し時間をかけてIT戦略を作成し、自分たちのIT組織がどのようにしてビジネスを支援して役に立てるのかの概要をまとめてください。この戦略には、明快な部分もあればより一般的な部分もあります。この戦略は、今後継続的な見直しや修正を必要とする生きた文書であると考えてください。ビジネスの変化と自社の成長の速度に遅れないようにするために必要な俊敏性に合わせた、見直しのスケジュールを予定に組み込んでください。

どうやってたどり着くか?

今どこにいて、どこへ向かおうとしているのかがわかれば、これから先のロードマップを作成するのがかなり容易な作業になることがお分かりいただけるでしょう。このロードマップを作成するときは調査スキルを駆使することになります。特定のビジネス課題に対処するのに必要で利用できるテクノロジーはどれか、そうしたテクノロジーを適用するのに必要なスキルは何か、そしてそのテクノロジーあるいはスキルのどちらかが自組織にないときにどうすればよいかを理解する必要があります。また、自分の業務に取り組んで意思決定過程を支援しなければなりません。ITプロジェクトの優先順位付けは、ビジネスのあらゆる部分を直接代表するものだけに基づいて決めなければなりません。組織全体にわたる定期的で効果的なコミュニケーションを実施することでモダン化の取り組みの成功を確実なものにすることができます。
どのような戦略アプローチを選択したとしても、このフレームワークを構築して運用していくことの価値を過小評価してはいけません。短期的に見ると作業負荷のバランスを図るのに苦労するかもしれませんが、戦略を実装することの長期的な効果により、皆さん自身、IT組織、そして会社を成功に導くことができます。非常に成功した戦略を適用した企業の一人の専門家が、戦略を使用しなければ「同じ場所をくるくる泳ぎ続けるだけだ」と話してくれました。付け加えると、くるくる泳ぎ回っていると鮫に食べられてしまう、ということです。よく見てみると、多くのIBM iの顧客が良いプラットフォームを所有しているのにもかかわらずそのもてる機能を完全に使いこなしていないというのがお分かりいただけるでしょう。鮫がそれらを食べてしまっているのです。戦略を適用すれば鮫のえさになることは決してありません。

モダン化への備えを!

さてこれでモダン化の旅の残りの支度も整いました。道中、歩みを進める度に正しい道はどっちかと選ぶ際に新たな課題に遭遇するでしょう。立ち止まったり再び歩み始めたり、歩きやすい道、歩きづらい道、時たま通り道を外れた冒険もあるでしょう。旅行中はこのシリーズがガイドブックになり、注意点や避けなければならない落とし穴を知らせ、モダン化の冒険を勇気付けるものになるでしょう。

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