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IBMi海外記事2017.10.12

アプリケーション・モダナイゼーションを牽引するものは何か

Timothy Prickett Morgan 著

計測しなければ管理することはできない、という古い格言があります。そして、常に次の商機を追い求めているIBM iコミュニティの主要ベンダーは、顧客のインストール ベースに対して、彼らが何をしているか、なぜそうしているのかについて尋ねて聞き出すのに、かなりより良い仕事をしています。正直なところ、125,000ものIBM iベースの最大の受益者であるはずのIBMよりも、より良い仕事をしていると言えるでしょう。

IBM i王国で起きていることへの知見が得られないか、我々は常に探し求めています。アプリケーション モダナイゼーションおよびソフトウェア変更管理ツールのプロバイダーである Rocket Software社は、グリーン スクリーンのモダナイゼーション プロジェクトの現状を把握するべく、IBM iベースに対して調査を実施しました。調査結果は、「 How Companies Are Approaching Green-Screen Modernization」というレポートとして公開されています( このリンクからダウンロードできます)。しかし、そうした現状について、さらに詳しく把握するために、Rocket Software社のアプリケーション開発およびDevOps担当バイスプレジデント兼IBM iソリューション担当チーフ テクノロジストであるDan Magid氏に、話を聞かせてもらいました。

Magid氏が『 The Four Hundred』に述べたように、Rocket Software社がIBM iのショップに尋ねた質問に対する回答は、おおよそ予想されるようなものでしたが、中には少し当惑するような反応も見受けられました。調査は今年の3月と4月にRocket Software社の委託を受けたGatepoint Research社によって実施され、87社の参加を得ました。これが代表的なサンプルと言えるかどうかについては、各自ご判断ください。回答者は皆、多種多様な業界からの自発的な参加者でした(電話で参加を勧誘されたり、金銭が動いたりするようなことは一切ありませんでした。もっとも近頃はそのようなやり方はうまくいかないものです)。また、CEO、CFO、およびCIOといったエグゼクティブ(CXO)の調査参加者は、回答者全体の約8%であり、割合としてまずまずの数字と考えられるでしょう(私見ですが、大企業のCXOは、自社のデータセンターでどのようなことが起こっているかまったく把握していないことも多いようですが、中規模企業のCXOは実に詳しく把握していることが多いようです。これは多くの場合、その企業のオーナーだからなのかもしれません)。職位別では、回答者の約15%がバイスプレジデント職、52%がディレクター職、25%がマネージャー職でした。やはりこれも驚きをもたらすような分布のしかたではありませんでした。

同調査での第1問目の質問は、「 あなたの組織では、現在、従来のキャラクタベース/グリーン スクリーン アプリケーションを使用していますか? 」というものでした。不思議なことに、この質問に対する「はい」という回答は、89%にとどまりました。とすれば残りの11%の回答者は、一体、何のためにこの調査に参加したことになるのでしょうか。ともあれ、レポートから選り抜かれたデータには、グリーンスクリーン アプリケーションを使用していると答えた回答者だけが含まれています。それらの回答者のうち、83%は、そうしたグリーン スクリーン アプリケーションをサポートするオペレーティング システムとして、IBM iまたはOS/400を使用していると答えています。そして、Windows上で稼働していると答えた回答者は24%、IBMメインフレームのz/OSオペレーティング システム上で稼働と答えた回答者は21%でした。また、17%は、これらのグリーン スクリーン アプリケーションをUnix上で稼働していると回答しており、16%は、Linuxプラットフォーム上でグリーン スクリーン アプリケーションを稼働していると回答しています。これらすべてのプラットフォームにはキャラクタベース モードがあります。ご存知でしょうが、それらがすべて実際にグリーンの色をしているわけではありません。要は、グリーンスクリーン アプリケーションはIBM iだけのものというわけでないということです(今でもあちらこちらで稼働しているDEC VAXおよびHP 3000アプリケーションのことも思い出されます)。

調査の中で最も良い質問だったのは、企業がグリーンスクリーン アプリケーションを統合および拡張する際に直面している課題について尋ねたものだと言えるでしょう。調査回答者の約47%は、アプリケーションのモダナイゼーションを行うためには、アプリケーション スタック全体を再設計することが必要になるだろうと答えており、46%の顧客がそうするための予算がないと答えています。そして、32%の回答者は、それは混乱を引き起こすと答え、29%の回答者は、モダナイゼーションの作業は複雑過ぎ、その業務に取り組めるだけのスキルがないとしています。Magid氏は、この質問から実情を探り出したいと思っていたようですが、質問の立て方にもうひと工夫できたかもしれないとも述べています(これは調査を実施する際にいつも悩まされる点です)。

「さて、完全に統合するためにはシステム全体を再設計することが必要だという回答が47%あったわけです」とMagid氏は説明します。「とすれば回答者の53%は、システムを再設計する必要がないと考えているか、または、再設計を行うことが大きな課題になるとは考えていない、ということを意味するのでしょうか。大きな課題にならないと考えているということはなさそうだとすれば、その53%は、システムを再設計する必要がない(私も同意見です)と回答していることになるのではないかと思われます。再設計の道を進む顧客を数多く見てきました。そして、その道はありとあらゆる落し穴や問題がいっぱいの非常に危険な道です。ますます多くの顧客が少しずつそちらの方向へ進もうとしているのを目にしますが、ユーザー ベースの設計を行うケースはますます多くなっています。彼らは、最終的な目標とするユーザー エクスペリエンスを出発点にしますが、そこにグリーン スクリーンにとっての多くの課題があります。まず、グリーン スクリーンそのものです。これは問題です。次に、グリーン スクリーンには、プログラムの動作のしかたに密接に結び付いた高度に体系化されたワークフローがあります。Webおよびモバイル環境では、別の動作が望まれます。そのため、彼らは、思い描くユーザー エクスペリエンスからスタートし、後に、戻ってきてからアーキテクチャーを考えます。」 こうした逆向きのアプローチは、顧客サイトだけでなく、過去数十年間に渡って、無数のIBM iソフトウェア開発者の間でも用いられてきました(そのほとんどは、InforおよびOracleなどの少数の残存するベンダーに吸収されました)。彼らは、コードの要所を抜き取り、たいていはRPGからJavaへと移植します。そして、本質的な変更は行わず、同じルック アンド フィールになればよしとするか、さらには、Webブラウザではなく、高機能のWindowsクライアント上でのみ稼働するものにして終わりとするのです。

企業は、SAP、Infor、またはOracle製のアプリケーション セットに大金をつぎ込んで自家製のアプリケーションを置き換えるという過ちも犯している、とMagid氏は述べます。結果として、自家製アプリケーションや、大量に修正を施したアプリケーションにカプセル化されていた領域知識の価値をひどく過小評価していたことを痛感するだけです。

「よく目にする問題は、すべてを投げ捨ててSAPやOracleを購入するように言うのは、ほとんどがCEOであるという点です」とMagid氏は述べます。「そして、このCEOは、このアプリケーションがどのような経緯を経て生み出されたかについてまったく分かっていません。さらに言えば、ありがちなのは、そのアプリケーションが開発されてきた数十年の間、彼らはここにはいなかったということです。おまけに、IBM iは彼らがよく知っているシステムでありません。したがって、その会社での業務のやり方に合わせてきちんと調整されたアプリケーションを作り出すのにどれほど多くの労力が投入されたのか、こうしたCEOたちは実際のところ分かっていません。しばしばCEOとIBM iプログラマーの意見の食い違いを目にすることがあります。BM iプログラマーはこれでは機能しなくなりますと言うのですが、CEOはそれをやれと言うのです。」

合併・買収をきっかけに、IBM iアプリケーションがOracleやSAPスイートに取って代わられるケースについて、数えきれないほど多くの話を耳にします。そしてそのソフトウェアは、実際のその会社の事業を反映するという意味において、実際にはそれほど適切ではありませんが、アプリケーションを統合するための理由としてそこにあるのは、技術的または経済的というよりはむしろ政治的なものなのです。買収側企業は、そもそも買収を通じて手に入れたいと思っていた企業価値の一部を毀損することになってしまいます。そして、そうなってしまうのは、彼らが人材、業務、およびそれらがどのように相互作用するかをコード化しているアプリケーションの難解な性質を理解していないためです。

アプリケーションのモダナイゼーションを推し進める要因には、多種多様なものがあります。そしてRocket Software社が調査したエンド ユーザーが挙げた要因も、よく耳にするものです。調査対象のショップの約60%は、プラットフォームやデバイスを選ばない、簡単で直観的なアプリケーションを提供したいと答えています。また、52%は、アプリケーションをモダナイズすることで運用効率を向上させたいと答えています。そして、47%は、エンド ユーザーをトレーニングするためのコストと時間を削減したいとしています。近頃のエンド ユーザー多くは、グリーン スクリーンがどのようなものであるかについても、どうして一定の状況では実際に作業しやすいのかについても、まったくわかっていません(たとえば、タブ操作ではRSI(マウス症候群)にはなりませんが、マウス操作はその原因そのものです)。43%は、モダナイゼーションにより、ユーザー満足度を上げたいと答えており、14%は、従業員の離職率を下げるのに役立つと答えています。また、17%は、様々なプラットフォーム上に、5250、3270、およびVTフォーマットなど、各種のキャラクタベースのアプリケーションを統合する必要があると答えています。

「アプリケーションをモダナイズすることを通じて従業員の離職率を下げるという点にほとんど目が向けられていないことには実際、少し驚かされました」と、調査の質問4の結果を読み上げながらMagid氏は述べます。「顧客からは、離職の問題は彼らにとって大きな問題のうちの1つだと聞いています。従業員はグリーン スクリーンで作業をしたがりません。そして、新しい従業員はなおさらそうです。彼らは、先進企業、つまり技術的に何を行っているかを分かっている企業に見せたいのです。こうした考えは、ユーザー満足度を上げ、トレーニング時間とコストを削減するためにモダナイズを行いたいと答えたはるかに高いパーセンテージに反映されているのかもしれません。」

トレーニング時間とコストの削減は、すべての企業にとって一大事であり、アプリケーションをモダナイズしてWebおよびモバイル インターフェースを持たせることは、その要となってくる、とMagid氏は述べます。そのため調査回答者は、既存の機能をWebサービスとして公開すること(57%)や、IBM iアプリケーション周りのWebユーザー インターフェースを作成すること(40%)や、IBM iアプリケーションとインターフェースを取るモバイル アプリケーションを追加すること(33%)に、当然ながら重点を置いています。RPGアプリケーションを他の言語で書かれたアプリケーションに置き換えていると答えたのは、調査対象のショップのかなり少数(16%)だけでした。そういうことなら、それでいいのではないでしょうか。そのような骨抜きにするような作業は不必要であるし、破壊的で、コストもリスクも高いものだからです。

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