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IBMi海外記事2020.08.06

Administration Runtime Expert入門

Dawn May 著
トップイメージ図(初心者)

ビジネスクリティカルなアプリケーションは、障害が発生することなく、確実に稼働している必要があります。想定外の事態が発生したときは、すぐに原因を特定して修正しなければなりません。アプリケーションを新規開発する開発者であろうと、既存アプリケーションの強化を行う開発者であろうと、レガシー アプリケーションの保守を行う開発者であろうと、あるいはインフラストラクチャーの管理を行う管理者であろうと、私たちは皆、作業を簡単にする方法が知りたいのであり、予想外の事態は楽しいものではありません。障害に対する耐性は低下し続けるものの、より少ない労力でより多くのことを行わせようとする容赦ない圧力は強まる一方のようです。けれども、障害点の特定は、複雑さが増すにつれてますます難しくなる可能性があります。

IBM iは、アプリケーションおよびインフラストラクチャーの健全性を確認するのに役立つ無償の製品を提供しています。IBM Administration Runtime Expert for i(ARE)を使用すると、健全な環境の属性を定義し、それらの定義された属性を使用して、環境が想定された通りであることを検証することができます。検証結果はレポートで示され、属性が想定された通りであるかどうか、または想定された設定値と違いがあるかどうかを確認することができます。一部の変更された属性については、AREで問題修正することもできます。

AREがどのようなケースで有用なのかについて、以下の例で見てみましょう。

  • インストールされているソフトウェアおよびオブジェクト レベルに関して、テスト環境が本番環境とまったく同じである ことを確認したい。
  • アプリケーション障害が発生したため、原因となった変更箇所を特定する必要がある。
  • 複数の区画があり、それらの区画の構成の間で一貫性があることを確認する必要がある。
  • ユーザー プロファイルがすべての区画の間で一貫性があることを確認したい。
  • すべての区画を7.4にアップグレードしており、それらのすべての区画で同じPTFがインストールされていることを確認したい。

AREを開始するには、まずその製品をインストールすることが必要です。前提条件、インストールの操作手順、ARE Webサーバーの起動方法、およびコンソールへの接続方法の詳細については、『 Getting Started Guide』を参照してください。

AREは、2つの部分から成ります。

  1. グラフィカル ユーザー インターフェース。これは、検証したい属性を定義したり、検証のセット アップを行ったり、レポートをレビューしたりするのに使用されるWebコンソールです。5733-AREライセンス プログラム製品(LPP)に付属しています。この製品は、Entitled Systems Support(ESS)サイトから追加料金なしで利用できます。コンソールを起動する区画で製品をインストールする必要があるだけです。
    最新のPTFグループ(特にHTTP Serverグループ(DG1))がインストールされている必要があります。これは、AREに対する機能強化および修正はこのグループで提供されるためです。

  2. AREコア。これは、基礎となるランタイム エンジンであり、任意のシステムで検証を実行して、その結果を返すことができるようにするものです。AREコアは、ベースのオペレーティング システムに付属しています。そのため、5733-ARE LPPをインストールしていない場合でも、システムの検証を行うことができます。

ARE製品のインストールが完了したら、Webコンソールにサイン オンします( http://SystemName:12401/are :ただし「SystemName」はシステム名)。初めてログインすると、デプロイメント テンプレート エディターが表示されます。このインターフェースを使用して、検証したい属性のコレクションである、独自の デプロイメント テンプレート を作成および編集することができます。編集、コピー、削除、エクスポートなどを行うオプションを使用して、いつでもテンプレートの管理を行うことができます。

基本的なテンプレートの作成は非常に簡単です。AREテンプレートは、1つ以上のプラグインから成ります。初期状態で、AREには、テンプレート エディターで非常に簡単に選択できる属性が組み込まれたいくつかの種類のプラグインが付属しています。目的のプラグインと検証したい属性を選択するだけです。

IBM提供のプラグインで利用可能な属性の例には、以下のものがあります。

  • ファイルおよびディレクトリー属性。IFS内のファイルおよびライブラリー内のオブジェクトの両方の存在、サイズ、作成日、セキュリティ属性など。
  • システム属性。システム値、環境変数、TCP/IP構成、PTFレベル、インストールされている製品など。
  • ユーザーIDおよびそれらの属性。

また、AREは、定義済みの属性に加えて、SQL Verifierのサポートも提供しています。列ごとの想定される結果とともに、SELECTステートメントを指定することができます。現在、利用可能すべてのIBM iサービスとともに利用することで、柔軟性が非常に高くなります。また、CLコマンドまたはシェル スクリプトを実行できるようにするScripts and Commandsプラグインもあります。さらに、AREには、Resource Collectorと呼ばれるプラグインも付属しています。Resource Collectorは、検証の一部として追加の情報を自動的に収集することを可能にします。これは、追加のレビューのために診断データを収集したい場合に有用かもしれません。また、この製品によって提供されている属性以外の属性を検証する独自のプラグインを作成することもできます。柔軟性および拡張性により、AREは非常に強力なツールとなっています。

テンプレートを定義しているときに、指定した属性をテストして結果をレビューできる簡単な方法があります。想定した通りに検証が機能していない場合は、簡単に規則を更新して問題を修正することができます。

テンプレートを定義し終えたら、テンプレートをビルドする必要があります。ただし、その点については、この記事では扱いません。

テンプレートの作成が完了したら、AREコンソールを起動して、目的の検証を定義することができます。システムを追加したり、システムのグループをセット アップしたり、検証を実行したりすることができます。また、手動で検証を開始することも、QShellで検証を実行することも、継続的に検証を実行するようAREをスケジューリングすることもできます。ただし、スケジューリングされた検証が実行されるためには、IBMARE Webアプリケーション サーバーがアクティブである必要があることに注意してください。さらに、テンプレートがビルドされているシステムのみを検証することもできますし、あるいは、別のIBM i区画や区画グループと比較することもできます。

検証の結果は、レポートとして提供されます。コンソールは、サマリー レポートを表示するWebインターフェースを提供しており、それぞれのプラグインのステータスがシンプルな「赤-黄-緑」のアイコンで表示されるため、それぞれのプラグインの成否がすぐに判断できます。また、XMLフォーマットでのレポートだけでなく、詳細なテキスト レポートを表示することもできます。さらに、検証のセット アップを行うときに、警告またはエラーが見つかった場合にメール通知する機能を有効にすることもできます。

今後の記事では、AREの使い方の例について、さらに詳しく見て行くつもりです。

IBMは、 IBM Administration Runtime Expert for i 製品Webページで、AREのすべての機能に関する説明書を提供しています。

説明書を読んでいると、AREの名称に関して少し混乱することがあるかもしれません。というのも、AREが導入された当初は、 Application Runtime Expertと呼ばれており、また、説明書の多くが書かれたのはしばらく前のことだったためです。 Application とすると、AREはアプリケーション開発者にとってのみ有用であるかのように思えてしまいそうですが、もちろん、そうではありません。AREは、システムをまたいでアプリケーション環境を検証するのに非常に有用であるのと同時に、システム構成および環境情報を検証するのにも同じくらい有用です。IBMは、2016年にAREを Administration Runtime Expertへと名称変更しました。それと同じくして、追加料金なしで利用可能となりました。

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