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IBMi海外記事2021.11.10

少し早めのIBM i テクノロジー リフレッシュ

Alex Woodie 著

先週、IBMが行った、IBM i 7.3および7.4向けのテクノロジー リフレッシュ(TR)の発表は、ミッドレンジの世界には、多少、驚きをもって受け止められたようです。これらのTRは、金曜日から一般利用可能となりました。今年の秋のTR(例年は10月に発表)では、新たなPower10ベースのPower E1080サーバーのサポートと、オペレーティング システムおよび関連するIBM i 製品に対する数多くの機能強化がもたらされました。

新たなTR(IBM i TR 7.3 TR11および7.4 TR5)に関する大きなニュースは、 IBMの高速な新Power10プロセッサーをベースにしたサーバーがサポートされたことです。これは、7ナノメートル プロセスをベースにした初のPowerチップです。今月中の出荷が予定されているハイエンドのPower E1080に始まる、 新たなPower10サーバー の使用を希望する企業は、7.3 TR11または7.4 TR5の稼働が必要となります。また、2021年内の発表が見込まれているミッドレンジおよびエントリー レベルのPower10モデルについても、これら2つのオペレーティング システムのいずれかが必要となります。

しかし、IBMは、さらに多くの新機能をこれらのTRに詰め込んでいます(COVIDパンデミックの期間で4回目のTRとなります)。大半のIBM i のショップの興味を引くのは、こちらの方でしょう。というのも、私たちの99.9%は、大型の新たなエンタープライズクラス マシンをすぐに導入することはないからです。この記事では、これらの新機能について概観してみようと思います。また、いくつかの機能については、今後の記事でより詳しく紹介する予定です。

TRの機能強化のリストのトップに来るのは、管理者がIBM i システムを監視および管理するのに使用する主要ユーティリティである、IBM i Navigatorが全面的に刷新されたことです。IBMは、今回のリリースで、徹底的にNavigatorの全面見直しを行いました。AngularおよびPrimeで書き直し、完全にSQLサービスをベースにすることとしました。

Navigatorは「SQLサービスを介してシステムを管理できるようにするための戦略的な製品となっており、NavigatorはSQLサービスをベースとして構築されているため、自分で料理したものを自分で食べている格好になっています」と、IBM i アーキテクトのSteve Will氏はブリーフィングで『 IT Jungle 』に述べています。

IBM i Navigator
IBMは、Angular、Prime、およびSQLサービスをベースにしてIBM i Navigatorを全面的な刷新を行いました。

「けれども、長い間、クライアントが要望してきたことをNavigatorが行いやすくしようとしている面もあります。すなわち、1つの画面、1つのペイン、1つのブラウザ インターフェース内で、Navigatorに複数のIBM i イメージを管理させるということです」と彼は述べます。

グリーン スクリーン コマンドで利用可能な、あるいは従来のバージョンのNavigatorでサポートされていたすべての機能が、IBMが「New Nav」と呼んでいるこの新製品で利用可能というわけではありません。しかし、IBM i プロダクト マネージャーのAlison Butterill氏によれば、新たなNavigatorは、将来に向けてのIBMの戦略的方向性を表すものであり、どのような新機能もその方向に向かうことになります。一方、従来のNavigator製品は安定へと向かいます。

「ゆっくり時間を掛けて、新バージョンのNavigatorへ向かって行くことになります」とButterill氏は述べます。「クライアントにもそこへ向かっていただきたいものです。長い時間を掛けて人々が抱えてきた多くの懸念に対処することになるのは間違いないでしょう。そして、ご想像の通り、従来バージョンは少しずつ段階的に廃止して行きます。従来バージョンには、たとえば、複数のシステムを管理するための複数のタブがあるからです。」

SQLサービスについて言えば、IBMは、それぞれ特有のタスクのための14件の新たなSQLスクリプトを追加しています。これらは、以前はSQLサービスを呼び出すために使用していたものですが、今ではIBM i サービスを呼び出すのに使用するようになっています。こうした新たなIBM i サービスのうちの12件は、監査ジャーナルを対象としたものであり、これらは、IBM i プロフェッショナルが監査ジャーナルからより有用なデータを取得する手助けとなることが意図されています。

また、IBMは、数多くの既存のIBM i サービスの強化も行っています。その1つは、QSYS2.NVME_INFOであり、これは「基本的にNVMeデバイスの燃料メーターのようなもの」と、先週の COMMON主催のWebプレゼンテーションでWill氏は述べています( こちらのリンクからご覧になれます)。

また、QSYS2.SECURITY_INFOという名前で知られるIBM i サービスも刷新されました。「SECURITY_INFOサービスにさらに多くの情報を追加したことで、セキュリティがどのように構成されているかについて、より多くの情報を得られるようになっています」とWill氏は述べています。

SECURITY_INFOサービス
ACSは、コミットされていないデータベース変更がある場合にユーザーに警告するようになりました。

これら2つのTRでは、数多くの新たなDb2サービス(データベースを対象とするSQLサービス)が提供されています。 IBM Support Webページによると、IBMが提供した11件の新たなDb2サービスは、SQL開発者が、RESTを使用して、データベースとの間でデータの読み書きを行うHTTPリクエストを処理できるようにします。IBM Support Webページには、「これらのサービスは、JVMを作成するオーバーヘッドなしで、SYSTOOLS HTTP関数と同じ機能を提供します。」と記されています。

また、どのWebブラウザでも動作するJavaベースのクライアントであるIBM Access Client Solutions(ACS)にも、7.3 TR11および7.4 TR5で動きがあったようです。メモリー管理の向上により、ACSバージョン1.1.8.8では、「SQLスクリプトの実行」で作業する際のユーザー満足度が向上するはずです。また、顧客が利用してカスタマイズ可能な用例についても新たな追加があり、「SQLおよびIBM i サービスをより効果的に利用しやすくなります」とIBMは述べています。

しかしながら、一番ワクワクするACSの新機能はと言えば、新たな「コミット」および「ロールバック」オプションと言えるでしょう。これらは、ACS画面上の新たなコントロールおよびインジケーターを補完するものであり、データベースに対する変更がまだ完了していないことを示します。

「「SQLスクリプトの実行」を使用してデータベースに対して迅速な変更を行うようになっていますが、ときには、トランザクションの途中に入り込み、それが完了していないということもあります」とWill氏は述べています。「アイコンを使用して、ACSを介して行われた変更を簡単にコミットまたはロールバックする方法が加わりました。画面に視覚的な警告が表示され、トランザクションの途中であることが示されます。「まだコミットされていません。この画面を閉じる前にコミットしますか」といった具合です。」

誰か「オープンソース」と声を上げる人がいたのでしょうか。新たなTRでIBMは、新たに数多くのオープンソースをIBM i に導入しているからです。たとえば、Node.jsバージョン16、Pythonバージョン3.9、GNUコンパイラー コレクション(GCC)の更新、Source Forge tn5250プロジェクト、dos2unixユーティリティ、hexdump、Ghostscript、Free TDS、新たなbashビルトイン、そして最後にchronスケジューラーなどです。

2021年後半のIBM i ロードマップ
2021年後半のIBM i ロードマップが更新されました。

他にもまだまだあります(いつものことですが)。IBMは、ユーザーがIBM i データをクラウドで稼働しているオブジェクト ストアへバックアップすることを可能にする、Cloud Storage Solutions for iオファリングを更新しています。IBMは、 Amazon Web Servicesの超ポピュラーなSimple Storage Service(S3)、およびS3互換の Google Cloud Storage(GCS)オブジェクト ストアを公式にサポートするようになりました。これは、 IBM Cloudのサポートへの追加として、およびIBM Spectrumのサポートへの追加として導入されます。これについては、今年すでに こちらの記事で取り上げています。

また、IBMは、オブジェクトの最大サイズを増やし、クラウドへのオブジェクトの送信のパフォーマンスを改善したことによって、同社のCloud Storage Solutions(5733-ICC)のパフォーマンスが強化されていることも見込んでいます。

あなたはIBM i 開発者でしょうか。あるいは、お知り合いにIBM i 開発者はいるでしょうか。いずれにしても、IBMが同社の中核的な開発オファリングである、Rational Developer for i(RDi)IDE、およびRational Developer Studio for i(RDS)(別称、「コンパイラー」)の両方の強化を行ったことは喜ばしいことでしょう。

RDi 9.6.0.11で、IBMは、グリーン スクリーン開発者を対象に、「デスクトップ ツール エクスペリエンスへ移行する際により容易な移行」を提供するために設計された「新たなユーザー エクスペリエンス」とIBMが呼んでいるものを提供しています。その他にも、ほとんどは小さいものの、数多くの機能強化(多くはIBMのRFE(機能拡張の要望)プログラムを通じてIBM i ユーザーからの要望を受けてのものです)が、この新リリースに賑わいを添えています。RDiの機能強化の全リストは、 こちらでご覧になれます。

IBMは、データ構造配列に対するSORTA命令での%FIELDSのサポートや、一組の新たなRPG関数の追加などにより、RDSの強化を行いました。この新機能により「プログラマーはデータ構造を複数のサブフィールドでソートできるようになります」とIBMは述べています。また、DEBUG(*CONSTANTS)関数に新機能が追加され、デバッガーで名前付き定数を評価できるようになりました(また、IBMは、新たな%MAXARRおよび%MINARR組み込み配列関数も発表しましたが、これらはどうも、今年 すでに発表されていたもの のようです)。

新たな暗号化コプロセッサー4769(9月30日に出荷されます。これはまさにハードウェアそのものですが)を除けば、IBM i 7.3 TR11および7.4 TR5についての概観としては、こんなところでしょうか。これらのTRは、9月10日より利用可能となりましたが、一部のPTFには、リリースされていないものもあるようです。

今回の記事は、ここまでとします。今後の記事で、TRの個々の項目ごとに深く掘り下げる予定ですので、今しばらくお待ちください。それまでの間は、詳細については、IBM i Technology Updates Wiki( https://www.ibm.com/support/pages/node/1119129)を参照してください。IBM i 7.3 TR11のIBM公式の発表レター(PDFファイル)は こちらで 、IBM i 7.4 TR5のIBM公式の発表レター(PDFファイル)は こちらでご覧になれます。

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