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IBMi海外記事2022.03.23

COBOL on IBM i にルネッサンスが来ているか?

Alex Woodie 著

IBM i 開発に関して言えば、RPGが主流言語であることには疑いの余地がありません。しかし、IBM i 界隈には、COBOLへの関心が高まりつつあるかもしれない兆しがあります。特に、ある一定の規模および業界の顧客の間ではそのようです。

データ統合ソフトウェア開発を手掛ける Eradani社のCEO、Dan Magid氏は、COBOLのことがずっと気になっていました。ある日突然、大手銀行が訪ねて来て、お宅の製品でCOBOLをサポートしてはもらえないだろうかと頼み込まれたとしたら、皆さんなら、どうするでしょうか。Eradani社は、同社のIBM i 向けデータ統合ミドルウェアでそうした依頼に応えています。

「興味深いことに、COBOLサポートについて 最初に検討し始めた のは9月のことだったのですが、突然、こんなにたくさんのご依頼をいただくようになっています」とMagid氏は述べています。「こうした問い合わせを、COBOL開発を行っている開発者の方々からいただくようになりました。彼らにとっての問題は、COBOLが世にある多くのツールの補足のように感じられることがあったり、COBOLのサポートがあまりなかったりすることであるようでした。そこで、こう考えました。そうした分野に取り組めば、柱となるような業務分野にすることができるのではないか、と。」

このカリフォルニア州エメリービルの企業は、同社のAPIイネーブルメント ソフトウェアでそうした案件に取り組みました。その詳細については、 こちらの記事を参照してください。現在、Eradani社には、積極的に協働しているCOBOL on IBM i のクライアントが4社あり、その製品に関心を寄せているクライアントも約100社以上あるようです。 こうしたCOBOL on IBM i の顧客の大多数は、銀行および保険などの、金融サービス業界だとMagid氏は述べています。これらの企業の多くは、元々はIBMメインフレームで開発されたアプリケーションを、IBMメインフレームから移行させることを通じてIBM i プラットフォームにやって来たと彼は述べます。

IBM i でのCOBOL開発者
COBOLで作業していると回答したIBM i 開発者のパーセンテージ(データ出典: HelpSystems社「IBM i Marketplace Survey」 2016年版~2021年版)。

「そのような企業はたくさんあります。実際、その大多数は、一時期、メインフレームを使用していたショップなのかもしれません。だからこそ、COBOLを使用しているわけです」と、Aldon社CEO職や Rocket Software社エグゼクティブ職を歴任したミッドレンジ界のベテランは述べています。「彼らはメインフレームでCOBOLを構築し、その後、IBM i へ移行して、コードを移植しました。」

Magid氏は、 HelpSystems社の「2021 IBM i Marketplace Survey」で、IBM i 開発者の19%がCOBOLを使用していると回答していることを知って驚いたと述べています。「実のところ、私が思っていたより多い数でした」 これまでの「Marketplace Survey」を踏まえて言えば、対前年比で5%の大幅の伸びということになります。COBOLで作業していると回答したIBM i 開発者のパーセンテージは、2016年~2020年の間は、13.6%~15.6%の狭い範囲で非常に安定していましたが、2021年には19%へと急増しています。来週発表予定の2022年版の調査では、COBOLのこうした傾向が継続するのかどうかが興味深いところです。

以前、主要メディアのニュースでCOBOLが取り上げられることがありました。ただし、それは良いニュースとしてではありませんでした。2020年のCOVID-19パンデミックの初期の頃、多くの州政府および地方自治体が、失業手当の申請用アプリケーションの応答時間が遅いと非難を浴びていました。行政側の言い分には、(もう、お分かりでしょうが)COBOLで動く古びたメインフレーム アプリケーションが原因だというものもありました。しかし、『 IT Jungle 』の記事でBrad Thomas氏は、「 COBOLが問題なのではなく、データが問題だ」と論じています。また、『 IT Jungle 』のコラム記事では、Vic Rozekが別の指摘をしています。すなわち、 年数を重ねたシステムをアップグレードする費用を出し惜しみした政治家たちにこそ責任があるということです。

一時的なデータの急上昇であろうと、真のトレンドの始まりであろうと、こうした数字が表していることは、年数を重ねたメインフレーム環境からIBM i に移行して来るCOBOLのショップが増えているということです。これは、COBOL on System zのショップにとって、IBM i が一番合理的で一番ポピュラーな移行先であるからだと、ミシシッピ州ジャクソンでCOBOLマイグレーションを専門に手掛ける Cothern Computer Systems社のビジネス開発担当バイスプレジデント、Walter Camp氏は述べています。

COBOLの初期仕様書
米国防総省によって発行されたCOBOLの初期仕様書(画像出典: 米国防総省)。

「私たちが目にするのは、このような場面です。会長室から命令が下ります。メインフレームを処分せよ、と」とCamp氏は述べます。「担当者はすぐにワークロードを移す場所を探さねばなりません。そこで、すこぶる妥当な選択肢となるのがPower、特に、iSeriesということになります。」

典型的なz/OS COBOLアプリケーションのマイグレーションには、約2,000本のプログラム、約300万~400万行のCOBOLコードが含まれるとCamp氏は述べます。通常、マイグレーションは1年以内に完了します。その後、なりたてほやほやのIBM i 顧客は、以前はIBMメインフレームのハードウェア、ソフトウェア、およびサポートに費やしていた費用を約60~70%節約できることになります。

「一番速いルートがiなのです」とCamp氏は続けます。「私たちが手掛けるほとんどは、IBM Enterprise COBOLからiSeriesまたはAIXへの移行です。お勧めはその2つです。なぜなら、簡潔だからであり、かなりきれいに変換できるからであり、必ず上手く行くからです。 必ず上手く行くのです。そこが重要です。」

Cothern社は、過去40年間にわたって、おそらく200~300件のCOBOLのマイグレーションを手掛けてきたとCamp氏は述べています。現在、同社は、メインフレームCOBOLアプリケーションのIBM i への移行に取り組んでいるクライアントの案件を数件抱えていると彼は付け加えます。IBM i へのマイグレーションの件数は大幅に増えているわけではありませんが、現在取り組んでいるマイグレーションは平均と比べても大型だと彼は述べます。

「5,000本のプログラム、1,000万行のコードがあるような大型のクライアントの変換案件を手掛けるたびに、仲間が1人増えていくわけで、ますますCOBOL on IBM i への関心が深まって行きます」とCamp氏は述べています。「確かに、関心は尽きません。」

Camp氏は、IBM i では、COBOLでの新規開発は、あるにしても、数多く行われているとは思っていません。実際、ほとんどのケースで、COBOLが長期に渡ってIBM i サーバー上で稼働していることはありません。

「iSeriesは終了状態にあるわけではありません。5年間の暫定状態のようなものです。その後、どこか別の場所へ行こうとしています」とCamp氏は述べています。「それがよいのかもしれません。COBOLで新たなコードを書いている人を誰ひとり知りません。既存のレガシー コードの保守を行っているだけです。」

COBOLのIBM i への移行が急増しているとすれば、そのことはまだ、IBM i プロダクト マネージャーのAlison Butterill氏にまでは上がっていないということなのでしょう。おそらく、COBOL顧客は少し増加しているものの、小さくも着実な傾向というところにとどまっているということなのかもしれません。

「差し当たっては、普段は、COBOL開発者の方のお話を聞くことはまったくないところに、4~5人の方々のお話を聞くことができて、大きな収穫でした」と彼女は述べます。「これからは、もっと頻繁にお話を聞く機会が持てると嬉しく思います。」

しかし、このことは、ロチェスターがこうしたCOBOL開発者を蔑ろにしているということ意味するわけではありません。「IBMは、常にCOBOLに関心を持っていました」と彼女は述べます。IBMは、 2019年には、ALLOCATEステートメントによってストレージを管理する新たな方法の導入、新たなEXITステートメントの追加、およびINITIALIZEステートメントの機能強化など、何年かぶりにCOBOLコンパイラーの強化を行っていると彼女は指摘します。COBOLユーザーがその気なら、彼女はそのような仕事をもっと行いたいと思うでしょう。

「要望をお持ちのCOBOLのお客様がもっといらっしゃるようでしたら、すぐにでもRFEを提案していただきたいと思います。彼らは、間違いなく物静かな顧客グループだからです」とButterill氏は述べます。「彼らから要望をもっとご提案いただければと、切に願っています。」

【訳注】 RFE(Request For Enhancement)とは機能改善要求のことです。IBMのWebサイト経由で直接開発部門に要求を投げ掛ける事ができます。ベル・データでは要求を投げ掛けるお手伝いをさせていただきますので、必要がありましたら担当営業にご相談ください。

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