メニューボタン
IBMi海外記事2015.05.27

OpenPower CloudがIBM iをハイパースケールに

Guild Companies, Inc.
mothy Prickett Morgan 著

数年前、IBM iプラットフォームがiSeriesと呼ばれ、IBMがLinuxの悪いバグに捕まったとき、我々の多くがIBMはOS/400オペレーティングシステムをオープンにするべきであり、エンドユーザーのコミュニティーによってそれを直接推進させるべきだと考えました。この考えかたはLinuxカーネルの成熟を促進したオープンソースコミュニティーとLinuxディストリビューションに進出した他の多くのプロジェクトを模倣することでした。いまIBMはハードウエアをオープンにすることから取り掛かっており、3月第3週にSan Joseで開催されたOpenPower Summit を見るとPowerベースのプラットフォームを手始めにしています。

OpenPower Summitで展示されたプラットフォームは、主にPower8チップのTurismoファミリーをベースにしたプラットフォームでした。TurismoはIBMが2013年8月に設立したOpenPower Foundationを受けて開発した商業用のバリアントです。スペックとファイルをオープンにすると第三者が複製あるいは派生品を作成する可能性が有り、IBMはPower8チップのソースをオープンにしていないのですが、OpenPower Foundationに参画しているメンバーには有償でチップスペックの使用を許諾しています。現時点では、IBMのローエンドPowerPCプロセッサーのバリアントを製造していた中国企業からスピンオフしたSuzhou PowerCore社が唯一Power8チップの許諾を得ている企業です。Suzhou PowerCoreは最終的にPowerチップの自身のバージョンを製造して、そのチップをベースにしたデータセンター用のサーバーとストレージを構築する種々のOEMとODMに販売しようとしています。Suzhou PowerCoreの最初のチップはCP1と呼ばれ、多分近々にChina Power 1の製品名になりますが、このサミットのイベントに展示されました。この財団のプレジデントであり、またIBMのPower Systems開発部門のバイスプレジデントであるBrad McCredieによれば、このチップはIBMが製造しているPower8チップとほとんど同じですが、唯一の相違点は中国政府の意向によりセキュリティー機能が微調整されていることです。

重要なのは、Suzhou PowerCoreがIBMのチップ開発ツールの使い方を習得しつつあり、昨年IBMから継承したGlobalFoundriesとの共同作業でこの微調整されたPower8チップを生産使用に組み込み、パッケージしようとしていることです。ただ、いざというときには、いま64ビットPower8プロセッサーの2次供給者が存在しており、IBMがこのチップ上のIBM iを公式にサポートしないとしてもIBM iの顧客にとって重要です。IBM iはこれらのプロセッサーで稼働し、AIXさらに種々のバージヨンの正式にサポートされているLinuxもこれらのプロセッサーで稼働するようです。

また、使用可能なマシーンの多数の供給者と多数のマザーボード市場が有り、これらは現在1ソケット及び2ソケットマシーンに焦点を絞っています。理由は、これらのマシーンはIBMとそのOpenPowerパートナーが彼らのマシーンでターゲットにしているハイパースケールとスーパーコンピューティング市場に最も一般的にデプロイされているからです。朗報は、IBM iショップの圧倒的多数が1ソケットあるいは2ソケットのマシーンを使っており、これらOpenPowerクローンのいずれもがRPG、Java、PHP、COBOL、あるいはRubyアプリケーション及びリレーショナルデータベース用DB2を稼働させるに十二分な力を供給できることです。しかし、私はこれが起きるであろうとは思っていません。理由は、IBM iとAIXはオリジナルのIBMマイクロコードに依存おり、またPowerVMのハイパーバイザー上で稼働しているので、IBM iとAIXをこれら他のPowerシステムに移植することは幾つかのドライバーを変更するだけでは終わらないからです。

長期的に見ると、IBMはチップとハードウエアの製造の全てを外部委託して、Powerプロセッサーの製造を他の複数の会社と共同作業することが起りえます。これによってIBMはコストを削減するとともにPowerマシーンの販売から得られる収入の全てを確保することができます。したがって、IBM iを稼働させる将来のPower Systemsは中国で製造されるだけでなく、オープンソースのマイクロコードを稼働させるPowerプロセッサーの中国バリアントによって中国で設計される可能性が有ります。これによってヨーロッパと米国における企業がセキュリティーのバックドアをチェックするチャンスが得られます。これが起きれば間違いなくPower Systemsの異なる種類の市場になります。

我々が以前に幾度も議論したとおり、Power8チップはIntelのXeonプロセッサーに比べて幾つかの有利性を持っています。特にSMPのスケーラビリティー、1コアあたりのスレッドの数、メモリー帯域、低遅延接続性、Coherent Accelerator Processor Interfaceを通した周辺機器との仮想メモリー共有という点です。これらの有利性は、スーパーコンピューティングのコミュニティー、Googleのようなハイパースケーラーと自身のソフトウエアスタックを制御しているピア、OPALと呼ばれる新しいオープンソースのマイクロコードが書かれていた人によって先ず活かされようとしています。(事実、GoogleはOpenPowerのコミュニティーに参画する手段としてこのオープンソースのマイクロコード上で多くの仕事を成し遂げています。)HPCとハイパースケールのコミュニティー、さらに大変高度なITとシステムプログラミングの才能を有した人材を擁している幾つかの大企業は、オープンアップされたPowerテクノロジーの早期導入者になると思われます。Powerプラットフォームは、過去20年間にわたり有してきたパフォーマンスにおける有利性、しかしながらいまは併せて対費用効果における有利性がX86に勝っていることを明示しなければなりません。

IBMはPower8チップ用の商業用シリコンの価格をXeonチップの価格より安くすることをコミットしています。この価格比較はメモリー帯域幅、スレッド数、CAPI I/Oを使ってXeonのパフォーマンスとほぼ同じパフォーマンスをベースにした比較です。
そして中国と台湾における新規のサーバーメーカーが低コストのプラットフォームを製造する道を開くことにより、OpenPowerはシステムレベルでXeonベースのサーバーメーカーと競争できる良いチャンスが得られます。これはOpenPowerシステムの初期ですが、IBMは自身のPower S812やPower S824マシーンではなくSoftLayerのパブリッククラウド上にTyanのHabaneroをデプロイすることが予測され、これは大きな意義が有ります。少なくとも我々が知っている限り、OpenPowerパートナーのPower サーバーノードを使うであろうSoftLayerクラウドはAIXとIBM iをサポートしないでしょう。しかしながら、後にもしAIXとIBM iがOPALとOpenPowerマシーンに移植されればIBMはAIXとIBM iをサポートする可能性が有ります。

いま明らかなことは、OpenPowerのパートナーはビジネスを作り出すことに真剣になっており、Xeonに対して優位性を持つマシーンによってそれを実現しようとしていることです。この動きはいま中国に焦点が絞られています。中国は大型ハードウエアを好み、自身が制御できるセキュリティーと知的財産を所有しようとしています。中国がPowerベースのシステムの使用を増やし、IBMはNvidia、Mellanox Technologies及び2017年の出荷に向けて可能性のあるTyanと共同で開発しているSummitとSierraスーパーコンピュータにつながる数世代のマシーンを展開するので、Powerのエコシステムは成長します。数年前、中国の中央及び地域政府がIBMのPowerベースのシステムへの投資を徹底的に削減していたときに比べればPowerプラットフォームはいま遥かに安泰です。IBMは多くのIBM iのショップに直接恩恵をもたらすためにLinux on Powerに注力しているのではなく、Linux on Powerユーザーの顧客ベースを広げることによってPower全体のエコシステムを堅調にするためです。

私はいつも言っているのですが、Powerのエコシステムを強化することはIBM iの寿命を延ばすことになります。いま重要なことはIBMがIBM iをOPAL及び廉価なOpenPowerプラットフォームに載せることだと私は考えます。Power7あるいはそれ以降をまだ使っていない約100,000のOS/400とIBM iのショップを前に向かって動かすことが望まれます。

もしIBMがモダナイズに役立つマシーンを顧客に直接売ることができないのであれば、OpenPowerをベースにしたSoftLayerクラウドを構築してIBM iのショップを動かすときではないでしょうか。どれくらいの数のIBM iを稼働させているPowerKVM仮想化マシーンがこれら100,000の古いiSeriesとSystem iの顧客を引き受けてサポートできるでしょうか?多分多くても500,000スレッドから百万スレッドでしょう。一個のPower8チップは全12コアを稼働させて96スレッドです。したがって5,000から10,000システムのオーダーです。ハイパースケールの企業は多くのマシーンを使います。そして、例え見込まれるクラウドが使うPower8マシーンのコストが$10,000であったとしても、所詮わずか5千万ドルから1億ドルです。

IBMはそのクラウドにIBM iを販売することができます。仮にIBM iプラットフォームの平均的コアのライセンス価格を、P05、P10、P20のミックスで、$7,500としましょう。3年間のソフトウエアメンテナンス料金を上乗せすると1コアあたり$12,000になります。これをマシーン一台あたりの平均スレッドの数で割って、36ヶ月で割ります。結果は、1か月あたり1スレッドにつき約$50になり、一ヶ月あたり合計2千5百万ドル~5千万ドルになります。これは1年あたり3億ドル~6億ドルになります。

これは単なる計算です。IBM iプラットフォームを、リセラーとパートナーが3年あるいは4年ごとにアップグレードを推し進めるビジネスから、誰もが毎月相当の収入を得るビジネスに変えることになります。この方がIBM iのビジネスとしてはるかに健全といえるでしょう。また、IBMのクラウド事業における重要部分になり得るものであり、このシステムはすでに100,000の顧客が古いバージヨンに留まっているのでIBMの将来にとって意味が有ります。多かれ少なかれ新しいバージヨンにしている約30,000の顧客にとっては、この事態の変化はコストの低減につながるでしょう。

あわせて読みたい記事

PAGE TOP