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IBMi海外記事2015.12.09

ERPの緩やかな衰退を示す兆候と将来

Alex Woodie 著

過去20年間、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)として知られるアプリケーションがビジネス・ソフトウエアの市場を支配してきました。しかしながら、現在は諸々の要因で衰退しつつあり、一部の人々はERPの全盛期が過ぎたと言います。此処で浮上してくるのは、企業は次に何を行うべきかという問題です。

相当規模の企業(例えば年間売上が5千万ドル以上)であれば、単にプランを立てるだけではなく実際にプロセスを実行してビジネスを動かすERPシステムには依存する価値が有ります。従来から製造業、小売業、金融サービス、ヘルスケア、教育、物流にかかわらず、(ERPと呼ばないとしても)いくつかの大規模で垂直的に統合されたアプリケーションが存在していました。

現在もなおERPパッケージはビジネス・アプリケーションの市場を支配しています。しかしながらERPの重要度は明らかに低下しつつあり、その兆候は至るところに見られます。

ライセンス収入の減少

調査機関IBISWorldの調査によれば、企業がERPソフトウエアに支払う費用は2012年以来、1年につきほぼ2パーセント減少してきています。同社は、顧客が今日ERPのソフトウエア・ライセンスに支払うと予測される平均価格は1ユーザー、1年について約$1,911と言います。さらに、この先3年間、ERPソフトウエアの価格にプレッシャーが掛かり続けて下落し、2018年迄に年間ライセンス料は1ユーザーにつき平均$1,800まで下がると予測しています。

クラウドへのマイグレーション

software as a service(SaaS)への移行がERP価格の下落をもたらしたとIBISWorldは言います。「SaaSは運用のコストが安く、ベンダー間での競争が激化したので、SaaSの普及がERPの価格を押し下げる圧力となった」とIBISWorldは分析しています。

この傾向はERPの大規模ベンダーの四半期ごとの業績に反映されています。Oracleの8月31日までの四半期におけるソフトウエア総収入(新ライセンスとメンテナンス)は4パーセントの減収でした。他方クラウドの総収入は27パーセントの増額となっています。過去4年間におけるInfor社のソフトウエア・ライセンス収入は年率3.3パーセントの減少であったのに対し、SaaSによる収入は55パーセントの伸びとなっています。

Panorama Consulting社の最新のERP調査によれば、クラウドベースのERPのデプロイは飛躍的に伸びています。2015 ERP Reportは2014年の4パーセントから2015年は33パーセントに急増したことを報告しています。

継続する予算超過

多くの人々の意識のなかで、「ERP」という語句は「予算超過」と同義語になっています。Panorama Consulting社の2015 ERP Reportによれば、過去3年間、ERPを実装したユーザーの58パーセントが計画していた予算を超過しています。同レポートによれば、多くのユーザーがERPを実装した結果によって得られた利益は予測していた利益の半分以下であったと回答しています。

少ない新機能

ERPスイートが成熟したので、ベンダーが追加する新機能が必然的に少なくなっています。そのなかで一部の刷新的なベンダーは消費者のテクノロジーの傾向に目を向けて、モバイル・アプリケーションやコラボレーション性能といった機能を追加しています。例えば、Infor社は同社のMing.leソフトウエアのユーザーが顧客あるいは資産といった関心項目をハッシュタグの使用によって追跡することを可能にしています。

ERPの売上が下降しているので、ソフトウエア・ベンダーはERPスイートにユーザーを引き付ける新しい機能を追加するための資本投資に意欲が湧かない状態になっています。顧客が新しいリリースのメリットを享受せず古いリリースに長く留まることを選ぶために、ベンダーの新機能への投資意欲の衰退傾向が加速しています。ERPソフトウエアをRimini Streetのようなサードパーティーのメンテナンス・プロバイダーの保守サービスを受けて10年以上使っている企業は珍しくなく、これらの企業は無期限に使い続ける可能性があります。

アナリティクスに焦点を絞る

CIOたちは投資に対していっそう大きな利益が得られる他のITソリューションに目を向けています。それはビッグデータとアナリティクスです。ビジネス・インテリジェンス製品からアウトプットされてきたレポートはもはや期待に沿わなくなっています。企業がWebとアプリケーション・ログ、ソーシャル・メディア、モバイルフォーン、センサーのようなソースから得られる外部データと併せて、ERPシステムといった内部アプリケーションからの既存データを役立てる方法を見出しているからです。

スイートの脱構築

ERPが衰退傾向にあるとはいえ、オール・イン・ワン型ERPスイートの一部は重要なアプリケーションとしていまなお多く使われ、強化されています。人材管理(HCM)、顧客関係管理(CRM)、製品と在庫計画、スタンドアローンの金融、出荷、支払に特化した専用のアプリケーションなどがそれに該当します。Gartnerは2015年7月のレポートで「HCMユーザーの増加はERPスイート脱構築の大部分を構成しており、頻繁なアップデート、迅速なデプロイ、優れたユーザー・エキスペリエンスによる刷新的なクラウド・ソリューションによって加速されている」と報告しています。

IBM iの場所

垂直統合化ERPスイートの盛衰は、同時にIBMのPower Systemsといった大規模完全対称型マルチプロセッサー(SMP)サーバーの市場を上下に動かします。フォーチュン500社の多くは、IBM、Sun Microsystems、Hewlett-Packardの大型RISCハードウエアでERPシステムを稼働させてきました。

しかしながら今日、その統合されたスタックが、ERPシステムを稼働させているサーバーとデータベースからUI(通常GUI)を表示する機器に至るすべてのレベルで分割されつつあります。

いまX86ベースのシステムがサーバー市場を支配しており、特にIBM SoftLayer、Amazon Web Services、Microsoft Azureといった巨大なクラウド・プロバイダーがこのシステムを使っています。オープンソースはこれに対する競合者と見られており、RESTful APIはあらゆる接続を保持して、レガシーという語句が適用されています。

この情勢でERPソフトウエアとERPソフトのメーカーはどうなって行くのでしょうか。ERPは確実になおも強い勢いを保っています。新しいライセンス売上は過去ほどではありませんが、このソフトウエア分野はいまなお数十億ドルのメンテナンス収入を生み出しています。そして、今もERPは実際に物を作り、動かし、維持している企業におけるビジネス・プランの決定的に重要な機能となっています(現実離れしているゆえに馬鹿げた評価を得ているUberとAirbnbのようなWeb装備とは対照的です)。

ERPソフトウエアは間違いなくIBM iサーバーの販売における最大の原動力となっています。カスタム開発がこのプラットフォームで堅調である一方、ランダムサンプリングの調査結果はパッケージ・アプリケーションが徐々に強い力を持ちつつあることを示しています。ERP市場が長く、緩やかな下降を続けているので、ポイント・ソリューションのプロバイダーからいっそうの力強さが現れてくることを期待します。

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