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IBMi海外記事2016.11.28

新たなOpenPowerサーバーが示す興味深いIBM i の可能性

Timothy Prickett Morgan 著

長期的に見て、IBMがPowerベースのサーバーやSystem zメインフレーム ラインのうち最大のもの(いわゆる大型コンピューター)を除くすべての製品の製造から手を引くことになるだろうとますます思われるようになってきました。もちろん、IBM iのショップにとってこの戦略は多くの影響がありますが、ここは真実を受け入れて考えましょう。点と点をつないでみれば、このことは避けられそうにありません。

AS/400の時代には、IBMは、自社製のプロセッサーおよび補助プロセッサー、自社製のメモリー、および自社製のディスク ドライブを備えたカスタムマシンを製造していました。1990年代末に同じPowerPCプロセッサーでAS400およびRS/6000ラインの統合を始めたとき、IBMはまた、共通のI/Oアーキテクチャーへの移行も行いました。これにより、AS400と他の種類のシステムとの違いを明確にしている非対称型プロセッシングやI/Oプロセッサ(IOP)はほとんど使用されなくなりました。IBMは、すべての種類の周辺機器カードを徐々にAS/400とRS/6000との間で共通化していっただけでなく、それらの製造を止め、他のサーバー メーカーと同じカードを使用するようにしました。チップの製造を、Globalfoundries社のような他社に任せることは、International Business Machinesであることからまた一歩遠ざかることを意味します。IBMが、2017年にエントリー マシン向けのPower9チップで、2018年にスケールアップ マシン向けのPower9チップで標準メモリーに移行するとしても、何の驚きにも当たりません。金属を折り曲げてサーバーを作るのは他でもできるし、やってくれるところもある。IBMが行うのは面白い部分だけ、つまり、システム アーキテクチャーと、それを実装するプロセッサーを設計する部分だけです。

そのため、マザーボードやホワイト ボックス サーバーのメーカー、Supermicro社が現在、Power8プロセッサーをベースにしたシステムを製造していて、Wistron社が大きな影響力を持つキラーCPU-GPUハイブリッド ボックスを製造しているのを目にするのは、実に興味深いことでした(これらのマシンについては、『Next Platform』で詳述しています)。

しかし、あまり興奮し過ぎてはなりません。たとえ、こうしたPower Systems LCマシン上でIBM iを稼働することは技術的に可能であるとしても、IBMが顧客にそうさせようとするはずは絶対にありません。それ相応の理由がない限り無理なのです。ちなみに、私なら理由を挙げられます。ちょっとやってみましょう。

これら2つのSupermicro社のシステムは、スケール アウト クラスター市場でX86システムに挑戦することを狙いとしています。そして来週、出荷が開始される3つめのシステムでは、GPUとCPUをつなぐNvidia社のNVLinkハイ スピード インターコネクトをサポートする改良型のPower8チップを採用しています。このシステムは、特に、GPUを使用して大規模並列処理シミュレーションの処理能力を向上させるスーパーコンピューティング クラスターを狙いとしています。

Power Systems LCとして知られる後者のマシンは、ほとんどのIBM iショップにとっては高性能過ぎであり、GPUを使用して処理を加速する必要性は(今のところまだ)なさそうです。あるいは、一見したところでは、そう思われるでしょう。しかし、GPU上で稼働し、こうした補助プロセッシング ユニットに並列ルーチンをオフロードできるように新たに書き直されたデータベースは数多くあります。そのため、IBMがハイブリッド コンピューティングやアクセラレーターを本当に信頼しているなら、GPUを使って、自身のDB2データ ベース管理システム(1つはIBM i用、1つはWindows、Linux、およびUnix用、最後の1つはSystem zメインフレーム用)を高速化するのが賢明なことだと思います。あまり遠くない将来に、Javaも並列ルーチンをGPUにオフロードできるようになるでしょう。これはIBMとJavaコミュニティが長年取り組んできたことであり、この機能がJavaに加わるのであれば、IBM iオペレーティング システム上で展開されるRPGおよび他の言語にも加えられない理由はありません。

しかし、私がIBM iでハイブリッドCPU-GPUセットアップを行いたいのには、別の理由があります。私は、Power Systemsマシンの下にデスクトップ端末を取り戻したい、つまりは現代版の5250グリーン スクリーンを作成したいのです。5250端末プロトコルおよびダム端末またはエミュレートされたものを使うというのではなく、IBMには、Powerサーバーから仮想PCインスタンスを提供して、GPUを仮想化して仮想化グラフィックスを提供できるようにしてもらいたいと私は思っています。そうできれば、すべての会社の机の上に本格的なPCが置かれる必要はなくなり、それぞれのPCインスタンスの絶対的なセキュリティおよび保守性がもたらされることになります。これには、デスクトップ オペレーティング システムとして、Powerチップ上で稼働するLinuxへの切り換えが必要となります。しかし、そうなるとエンド ユーザーにとってはマスクされてしまうか、Windowsデスクトップのように見えてしまうかもしれません。MicrosoftがOfficeスイートをLinuxで利用できるようにする(良いことです)のも、もうすぐでしょうから、そうなれば議論は終わったようなものです。私が言いたいのは、データセンターを収めた箱であるだけではなく、使用するほとんどの企業にとってPower Systems-IBM iのコンビがそうであるように、こうしたハイブリッドなIBM iマシンは、すべてのビジネスを収めた箱であるということです。これこそ、いうなれば真のInternational Business Machineです。

IBMは、デスクトップ用の演算と仮想GPUの両方を同時に行うために、Nvidiaから微調整が施されたTesla GPUアクセラレーターを入手する必要があります。何らかの理由のため(様々な顧客から最大限の利益を引き出す)、Nvidiaでは、演算に限定されたTeslaアクセラレーターと、仮想デスクトップ用の仮想GPUに限定されたGRIDアクセラレーターの2つに製品ラインを分けています。このケースでは、システムは両方とも行う必要がありますが、2種類のGPUアクセラレーターをインストールするのは実に愚かなことです。デスクトップを仮想化する同じエンジンが、データベースや他の機能を向上させることもできるのであり、IBMはこれを行うべきです。IBMは、自身の最も忠実な顧客の未来を信じる必要があります。そして私は、GPUを用いたデータベース アクセラレーションが、DB2 for i上でまだ利用可能でないことに多少苛立っています。コード化ベクトル索引のようなものが、IBMミッドレンジ プラットフォームに最初に登場した頃のことが思い出されます(最後ではなくて。もっと言えばもう二度と登場してほしくありません)。また、機械学習のトレーニングおよび推論ルーチンもGPUへオフロードできるでしょうし、トレーニングされたニューラル ネットは、レコメンデーション エンジンおよびあらゆる種類のデータ操作および商用の自動エンコード アプリケーションを実行するのに使用できるでしょう。IBMにはよく「THINK」してもらう必要があります。

Power Systems LC for HPC(IBM内でのコードネーム「Minsky」)は、3.25GHzで8コアまたは2.86GHzで10コアの、2基のPower8プロセッサーを搭載したキラー ボックスで、4基の最新の「Pascal」Tesla P100 GPUアクセラレーターを搭載しています。並列処理能力は尋常ではなく、それら4基のTesla P100を用いての倍精度浮動小数点数処理能力は21.2テラフロップス、単精度浮動小数点では2倍、半精度浮動小数点(これは、ニューラルネットワークをトレーニングする際や、いったんネットがトレーニングされた後に、ニューラル ネットワーク推論エンジンを稼働する際に重要です)では4倍となっています。そうした演算能力と128GBのメイン メモリーを搭載した20コアのPower8システムが、50,000ドル未満で利用できるとのことです。IBM iでは1コアにつき2,000ドル、Linuxでは1コアにつき500ドルであり、これは、何でも行える、目を見張るようなミッドレンジ プラットフォームとなるかもしれません。

もう一度提案します。IBMは人の言うことを聞いてIBM iに機械学習を組み込むべきです。ぜひとも。

System/38は、IBM初のリレーショナル データベース エンジン(メインフレームでない)でした。そしてAS/400は、リレーショナル データベースを手頃な価格で大衆に広めた最初のマシンであり、ユーザーがハッカーのようにならなくても済むような形で利用できるものでした。どうしてIBMが機械学習やコグニティブ コンピューティングをIBM iプラットフォームに追加するべきなのかについて議論するのは、今はよしとしましょう。真の問題は、それがどうして数年前に行われず、結果としてこのような見事なハードウェアが市場に現れたときに準備ができていなかったのか、ということです。どうしてなのでしょうか。その答えは、IBMが125,000ほどのIBM iの顧客を、最新のすべてのビジネス ツールが必要となるほど洗練されているとはみなしていない、ということにあるに違いありません。またIBMは、自身の類まれな能力を忘れてしまってもいるようです。しかし、遅過ぎるということはありません。IBM i 9.1およびPower9プロセッサーは2017年に登場するため、最新のコグニティブIBM iプラットフォームの基礎はまだ構築可能です。

それでは2つのSupermicroマシンはどうかと言うと、これらはより従来型のサーバーに近いと言えます。コードネームは「Briggs」と「Stratton」で、これは芝刈機の2サイクル エンジン メーカーにちなんで付けられたものです。Strattonマシンは、1Uフォーム ファクターで、3.5インチSATAドライブを4台収容可能な2ソケットの1Uサーバーです(製品名、Power Systems S821LC)。Strattonマシンは、2.09GHzで動作する10コアの、または2.32GHzで動作する8コアのギア ダウンされたPower8チップを使用します。いずれも130ワットの熱設計枠に収まるものです。Strattionマシンの価格は、基本構成で約5,500ドル、2つのPower8チップ、128GBのメモリー(最大512GB)の構成で約10,500ドルです。StrattonサーバーのCPUは、Power8をチップ上のNVLinkポートとともには使いませんが、PCI Expressリンクを使用してPower8コンプレックスに以前のTesla K80 GPUを接続することができます。

Briggsマシンは、製品名がPower Systems S822LC for Big Dataで、12台の3.5インチSATAドライブを収容でき、プロセッサー スピードおよびコア数がMinksyマシンと同じの2Uボックスですが、Strattonマシンと同じようにNVLinkはサポートしていません。Briggsマシンの価格は基本構成で約6,000ドル、10コアのチップ2つ、128GBのメモリーの構成で約11,500ドルです。

BriggsおよびStrattonマシンは、明らかに、IBM iが稼働できる一般的なPower Systemsマシンに比べてかなり低価格ですので、IBMは、IBM iクラウドを構築しているホスティング業者がこれらを使用できるようにするべきであると思います。Supermicro社は、IBMのSoftLayerクラウドのサーバーの供給元です。それだからこそ、これら2つのPower Systems LCボックスの構築に最初に声が掛かったわけです。IBMがこれらのマシンでIBM iをサポートできない理由もありませんし、ビジネスパートナーがより費用効果がよいクラウドを構築するのを支援できない理由もありません。IBMは、そのようにするだけでよいのです。このままでは時間の無駄使いです。

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