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IBMi海外記事2022.06.22

クラウド環境におけるIBM Power:ハードウェアの「リフト&シフト」で得られないメリット

Jason Hardy 著

私は仕事上、オンプレミスのIBM PowerサーバーからIBM Powerクラウドへの移行について、毎週、見込み客となる数社の担当者と話をしています。そうした話の中で一貫して必ず話題の中心となるのは、オンプレミスのサーバーの購入および保守に掛かるコストと、クラウド ベースのサービスで毎月発生する料金との比較です。多くの見込み客は、この移行を、モダナイゼーション戦略としてではなく、単純なクラウド インフラストラクチャーへの「リフト&シフト」として考えているようです。

そして、これは部分的には正しい面もあるのかもしれませんが、移行を行う際にアプリケーションのモダナイズを行わない顧客がほとんどであるため、クラウドが全体的なIT戦略にもたらすモダナイゼーションのメリットは見落されてしまいます。この記事では、クラウドへの移行を検討する際に考慮すべき、付随的なメリットについて見て行きます。

環境:今あるもので行える最善を尽くしているか?

セキュアで、信頼性が高く、弾力性のあるデータセンターを安価で構築できるとしたら、誰でもそうしたいと思うでしょう。現実はそうではありません。企業は、今ある設備と予算が許す範囲のものを活用して、できる限りのことを行うので精一杯です。企業は手元にあるもので何とか間に合わせているというのがほとんどで、状況が最善ではないことは分かっており、後は幸運が続くよう祈るのみです。

クラウド ソリューションでは、購入して費用を支払うのは必要とするものに対してのみ。

定評のあるクラウド サービス プロバイダーと契約すれば、インフラストラクチャー、システム、およびプロセスがすべて備わった、障害発生時にもデータセンターおよび自身のITインフラストラクチャーが常に稼働可能であることが確保されている、それ専用に作られた施設から得られる多大なメリットを享受できるでしょう。これは、多様性、冗長性、および自己修復性を考慮して構築されたアーキテクチャーを通じて実現されます。設計のみならず、認証、監査、綿密な保守計画も提供され、さらに、必要なときには、すべてが想定通りに機能していることを保証するためにテストが実施されることもあります。

バックアップ:極めて重要なのにきちんと実施されていない?

バックアップを実施していない、あるいはバックアップが大事だと思わないと言う人には、まだお目に掛ったことはありませんが、じっくりていねいに実情を調べてみると、バックアップをきちんと実施している企業がほとんどないことが分かります。データ バックアップのプロセスを調査していると、次のようなユーザー事例を目にすることもよくあります。

ある地域型の製造業者が、クラウド環境におけるIBM Powerについて関心をお持ちということで、先方を訪ね、ミーティングを行うとともに同社の「データセンター」をざっと視察させてもらいました。バックアップについて尋ねると、彼らは、IBM i マシンから部屋の反対側に置かれたテーブルを指差しました。テーブルの上には、一般用の「耐火性の」収納ボックスが2つ置かれていました(デジタル メディア保護用に設計されたものではありません)。毎週、それらのボックスをローテーションさせているため、2週分のバックアップ データが常にあるようになっていると説明してくれました。両方のボックスのふたは開いており、どちらのボックスも部屋から出ることはありませんでした。その会社のITインフラストラクチャーとデータは、天井に水漏れ跡のある、その12フィート四方の部屋の中にすべて納まっているということでした。フル システム セーブを実行する頻度について尋ねたところ、なりたてほやほやの管理者の返答は、それがどういう意味なのか分からない、というものでした。

IBM Powerシステムがクラウド環境にある場合、オンサイトで行っているものを大きく上回る機能を備えたバックアップ サービスにアクセスできます。これらのバックアップ サービスを、オファリングの標準料金に含まれる形で提供している業者もいれば、オプションのアドオンとしてバックアップ サービスを提供している業者もいます。Racksquared社のデータセンターでIBM i をホスティングする場合は、結果的に、データのコピーが4つ作成されることになり、そのうちの2つはオフサイトに置かれることになります。これらのバックアップにより、より短い復旧時点とより短い復旧時間の両方が提供されます。ランサムウェア攻撃、ハードウェア障害、または災害が発生した際には、堅実なバックアップおよび復旧プロセスが用意されていれば、ビジネスを稼働可能にするのに要する時間に大きな違いが現れることでしょう。

ディザスター リカバリー:すべてのシナリオについて熟慮しているか?

バックアップのイメージが非常にぼんやりしている場合、ディザスター リカバリー(DR)はさらにもっとぼんやりしたイメージになると思われるかもしれませんが、その通りです。堅実なバックアップ戦略を持つには費用が掛かると思われているとしたら、今ある様々なDRシナリオに対して、許容できる目標復旧時点(RPO)および目標復旧時間(RTO)を実現するDR戦略の開発を試みてください。Powerサーバーの使用年数によっては、保守およびサポートの支払いだけで、非常に高額になることがあります。以下は、最近あった、そうした高額な保守およびサポート プランが報われなかった事例です。

POWER7を稼働している、ある地域型の製パン会社がハードウェア障害に見舞われました。すぐにベンダーにサポートを求め、ベンダーは交換用パーツの取り寄せに着手します。数日待ったものの、納入日が保証されなかったことから、同社は修理を諦め、クラウドへの移行を決めました。数日のうちに、業務はオンラインに復旧しています。

これは、建物やキャンパス全体の損害というような、はるかに大きな事態と比べれば、実にシンプルな、ハードウェア障害の復旧がうまくいかなかったケースです。

IBM i がクラウド環境にある場合、様々なDRソリューションから幅広く選択することができます。迅速な復旧が必要な場合は、復旧時間が60分未満のハイ アベイラビリティー(HA)ソリューションを提供できるクラウド サービス プロバイダーもあります。もっと長い復旧時間を許容できる場合であれば、予備のインフラストラクチャーによって、リソースの可用性が保証されます。また、保証付きのDRを購入する予算がないというのなら、多くのクラウド サービス プロバイダーが、利用可能なリソースに応じた「ベスト エフォート」方式のDRを提供しています。

リソース:必要以上の支払いをしていないか?

IBM Powerシステムを購入して、必要とする以上のリソースに対する支払いをしてきたという方は、どれくらいいるでしょうか。よく見掛けるのは、フル プロセッサー、最小構成のメモリー、テラバイトのストレージに対する支払いを行っているものの、結局、それらのリソースの一部分しか使用していない企業です。これは、自分のニーズに基づいた購入のしかたではありません。ベンダー側の条件に促された購入です。

IBM Powerシステムを購入して、必要とする以上のリソースに対する支払いをしてきたという方は、どれくらいいるでしょうか。よく見掛けるのは、フル プロセッサー、最小構成のメモリー、テラバイトのストレージに対する支払いを行っているものの、結局、それらのリソースの一部分しか使用していない企業です。これは、自分のニーズに基づいた購入のしかたではありません。ベンダー側の条件に促された購入です。

クラウド ソリューションでは、購入して費用を支払うのは、必要とするものに対してのみにすることができます。Racksquared社では、一貫して顧客をフルCPUライセンスのマシンからクラウド サーバーへ移行し、そこではプロセッサーの一部分を顧客に割り当てています。現在必要としているスペースに合わせてストレージを構成し、必要に応じてそうしたリソースを増やすことも可能です。メモリーは、必要に応じて1年を通じていつでも構成および調節することができます。クラウドでは、利用されることのないリソースを購入しなければならない理由は何もないのです。

パフォーマンス:広域接続による遅延が問題になるか?

広域接続によってアプリケーションのパフォーマンスがどうなるかについて、見込み客が不安を口にするのをよく耳にします。サーバーがエンド ユーザーから何百マイルも離れていることで、ジョブ実行のパフォーマンスに影響が及ぶのが心配なようです。一部の企業では、パンデミックがそうした懸念を解消する一助となったケースもありました。リモートでの在宅勤務となった際に、ITチームは、IBM i 上で稼働しているアプリケーションのパフォーマンスが実際はかなり良好なことを確認できたということです。これにより、クラウドに関する1つの大きな懸念が払拭され、注目されるようになっています。

世界の至る所からエンド ユーザーがRacksquared社のデータセンターのLPARに接続していますが、顧客からのパフォーマンス低下の報告は一度もありません。実際、多くの顧客からパフォーマンスが向上したとのご指摘が寄せられています。これは、サーバーのストレージを利用しているのではなく、代わりに、ファイバー接続されている外部SANを利用していることによるものだと思われます。これにより、結果として、より高速なI/O、バックアップ時間の短縮、およびより迅速な復旧が実現されます。

クラウド環境におけるIBM Powerに移行するべき時なのか?

クラウドへの移行は、単にハードウェア購入および保守ビジネスの世界から抜け出すことに留まるものではありません。全体的なIT戦略を改善し、パフォーマンスを向上させ、不測の事態からビジネスを保護することにもつながります。したがって、次回、クラウド環境におけるIBM Powerが話題になったときには、ハードウェアにとらわれずに考えてみてください。また、クラウドへの移行によってビジネスにもたらされるすべてのメリットについて思いを巡らせてみてください。

さらに詳しくは

クラウド ベースのソリューションへの移行に付随して得られる様々なメリットの詳細については、Racksquared社Webサイトの「 IBM Power Solutions 」を参照してください。また、同サイトでは、数々の クライアント成功事例 もご覧いただけます。お問い合わせは こちらから

本記事は、 Racksquared社による寄稿記事です。

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