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IBMi海外記事2023.04.26

IBM i のPower10アップグレード サイクルの見通しは良好な模様

Timothy Prickett Morgan 著

IBMの第4四半期の財務業績について取り上げた先週の記事で述べたように、 2022年のPower Systems事業の売上は6.5%伸びています が、これは、2021年秋にハイエンド マシンで始まり、エントリーおよびミッドレンジPower10マシンが市場に登場した2022年夏に弾みがついたPower10へのアップグレード サイクルによるものでした。

IBMは、「インフラストラクチャー」事業グループの売上は、アップグレード サイクルが始まる四半期には増え、終わる四半期には減ることから、全体としてフラットになることが見込まれるとウォール街に伝えるのが通例です。IBMのSystem zおよびPower Systemsの顧客ベースにおける処理能力の消費量が、四半期ごと、1年ごとに着実に増加していても(メインフレームでは、信じられないほど直線的に着実に増加しています)、それぞれの顧客ベース自体はおそらくあまり拡大していないことからすると、これは至極妥当なことです。

Fortra社(旧HelpSystems社、その前はHelp/Systems社)主催の、昨年の「IBM i Marketplace Survey」調査では、一般的にアップグレードの予定について尋ねた後に、2つ目の質問を追加して、調査開始の1か月前に発表されたばかりだったPower10ベースのシステムへのアップグレードの予定について詳しく尋ねています(「IBM i Marketplace Survey」では、質問が尋ねられるのは毎年10月で、翌年1月に、翌年版のレポートとして発表されることになっています。したがって、2023年版のレポートは、実際には、2022年が終わりを迎える4か月前の時点の空気感が反映されたものということになります。その点に留意が必要です。2023年が始まった時点の空気感が反映されたものではありません)。

今年のレポートでは、300人を超える回答者のうちの6%が、今年、ハードウェアのみをアップグレードすると回答しています。これには、Power8またはPower9マシンに新たなプロセッサー フィーチャーを追加するケースも、中古市場で旧式のPower7およびPower7+マシンを購入するケースも、あるいは、IBMやリセラーから新品のPower9またはPower10マシンを購入するケースも含まれます。これは意図的に曖昧にされています。以下に示す円グラフには、過去3年分のレポートのデータを赤字で追加しています。この6%という数字は、過去4年間の平均と比べると、大きくは変わらないものの、やや少なめな数字と言えそうです。

2023年におけるアップグレードの予定
2023年にハードウェアまたはソフトウェアのアップグレードを行う予定がありますか。
2023年におけるアップグレードの予定

別の25%の回答者は、今年、ソフトウェアのみをアップグレードすると回答しています。これは、おそらく、オペレーティング システムのリリースまたはバージョンのアップグレードということだろうと思われます(が、これに限られるものではありません)。このパーセンテージは、平均に比べて少しだけ多い値ということになりますが、以前の年と比べて、今年の調査回答者数がやや少ないことを考慮すると、おそらく統計的に有意な差とは言えません。通例、回答者数はおよそ500人以上です。たとえば、2021年の場合、回答者の総数は733人で、完答者数は472人でした。企業の規模や、IBM System zメインフレームが使用されている割合が通常目にするよりも高いことからすると、この調査の回答者には大規模ショップが非常に多いように思われました。

興味深いのは、また別の35%の回答者が、2023年にIBM i プラットフォームのハードウェアとソフトウェアの両方をアップグレードすると回答したことです(平均と比べて6%~7%程多い)。そして、何もアップグレードしないと回答したのは、34%のみということになります。

要するに、IBM i ベースの2/3は、今年、何かしらのアップグレードを行う予定であり、41%はハードウェアをアップグレードし、60%はソフトウェアをアップグレードする予定だということです。これは 願望意向を調べたものであって、実際の 予算導入について調べたものではないことに留意することが重要です。しかし、世界経済が恐慌に陥らないとすれば、今年は、IBM i のショップにとって非常に忙しい年となりそうです。もっとも、多少の波乱はあるとしても、そこまでに至るとは思いませんが。

それでは、Power10について詳しく見てみましょう。ハイエンドの「Denali」 Power E1080システムのみが利用可能だった2021年末の時点で、回答者の73%がPower10への移行を検討していると回答し、27%が検討していないと回答しています(このデータは、2022年版のレポートに示されています)。

2023年におけるPower10へのアップグレードの予定
Power10へのアップグレードを検討していますか。
2023年におけるPower10へのアップグレードの予定

2023年版レポートの基になる2022年10月の調査では、設問に少し変更が加えられ、より正確な尋ね方になっています。回答者のうち、74%がPower10へのアップグレードを検討していると回答し、別の16%がPower10マシンへアップグレード済み、またはアップグレード作業中であると回答しています。合わせて90%の回答者がアップグレードを検討していることになり、これに対して、前年の調査レポートでは73%のみでした。合計で17%の非常に大きな変化です。改めて、意向と購入注文はイコールではありませんが、これは、顧客がアップグレードする心積もりがあることを示す非常に良い兆候です。少なくとも、ニュースレターを読み、調査に回答し、ベンダーやIBMのウェビナーに参加し、ハードウェアおよびソフトウェアを比較的最新状態に保っている、IBM i ベースのアクティブな側のメンバーはそうだということです。

たとえば、世界中の約120,000のIBM i 顧客のうちの約30,000のショップが、IBM i ベースのアクティブな側であるとしましょう。これらの顧客の多くが、ローカル ハイ アベイラビリティー クラスタリングを導入している(IBM i ベース全体の約4分の1だが、これらのアクティブな顧客に集中)とすると、今年、IBM i ベースのPower Systemsが、平均50,000ドルで、約35,000台販売されると考えることができるかもしれません。その場合、IBM i アップグレード サイクルによって16億5,000万ドルがもたらされることになります。これは、IBM i ベースで何年も見たことのないほどの売上高となるでしょう。

私たちは、そうしたIBM i ベースのアクティブ部分すべてがアップグレードを行うだろうと考えているわけではありません。おそらく、12,000近くの顧客、あるいはIBM i ベース全体の10%程度であろうと思われ、Power10購入者の大半は、IBM i ベースのアクティブ部分(30,000)からだろうと考えているということです。

Power Systemsの売上高の最大部分はAIXがもたらし、Linuxはおそらく20%を超えています。私たちの想定するところでは、IBM i ベースの売上高は、2022年のおよそ5億ドルから2023年には6億ドルへと伸び、Linuxは約3億ドルで横ばい(HPCベースのLinuxマシンは減、SAP HANAベースのLinuxマシンは増)となる可能性が高いと思われます。たとえば、Power Systemsの売上高が少し減少(仮に7%)するとしたら、それは、AIXベースがすでに2022年に多くのアップグレードを終えており、2023年には30%程度の減となるということになります。

言い換えれば、私たちの想定が正しいとすれば、AIX以上に多くのPower Systemsの売上高をもたらすのは、今年はIBM i の番であるかもしれないということです。

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