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IBMi海外記事2024.05.14

モダンを極める:IBM i のクラウド移行のための実践的手引き

Lief Morin 著

クラウドは、1960年代および1970年代のIBMメインフレームの共有サービス時代に遡るそのルーツから、著しい進化を遂げています。いくつか似ているところはあるものの、今日のクラウドを取り巻く環境では、従来の、IBM i プラットフォームのようなコンピューティング リソースの買い切り方式よりも、柔軟なキャパシティ料金モデルに重きが置かれています。Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud、およびIBM Cloudなど、主要なクラウド プラットフォームへと向かう支配的なトレンドでは、費用対効果および事業の発展に向けての共有型アーキテクチャー アプローチの重要性が強調されています。

ほとんどの企業は、コアとなるビジネス アプリケーションを、大幅に修正されたソリューション頼みにしているため、継続的運用性を確保するのに必要となる、インフラストラクチャー、セキュリティ、およびその他のリスク軽減機能を提供する共有型クラウド ソリューションに大きなメリットを見出しています。そうしたメリットは、今では、IBM i クラウド市場で完全に実現されています。また、IBMおよび同社のクラウド パートナーの長期にわたる関与・尽力により、クラウドへ移行するには、これまでにない絶好のチャンスを迎えています。

IBM i プラットフォームの特質は、当初から、ビジネスを稼働するミッション クリティカルなアプリケーションを展開するのに必要となる、OS、データベース、プログラミング言語、アプリケーション開発ツール、およびセキュリティがすべて詰め込まれた、完全に統合されたシステムであることです。これは、他のプラットフォームとは非常に対照的だったことです。IBM i は、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)アーキテクチャーであり、これまでも常にそうでした。 このことが、IBM i システムを魅力的なものにしてきました 。組織はビジネスを駆動するアプリケーションの稼働に集中できるからです。

30年が経ち、クラウドは、テクノロジー利用の性質を永久に変えました。次は、アプリケーション、ビジネス モデル、そして業界全体の番です。堅牢なクラウド オファリングにより、IBM i はクラウドとともに変わっています。

クラウド アーキテクチャーを解読する

クラウド アーキテクチャーはたくさんありますが、クラウド プロバイダーはさらにたくさんあります。そうした傾向が弱まる気配はありませんし、複雑さの増大は指数関数的に高まっています。この記事では、IBM i コミュニティで最も利用されている3つのタイプ、すなわち、プライベート、パブリック、およびハイブリッド クラウドを中心に見て行きます。まず、 NIST(米国国立標準技術研究所)によって提供された、クラウドについての権威ある定義 を見てみましょう。以下の5つの重要な特性が述べられています。

  • オンデマンド・セルフサービス(On-Demand Self-Service)
    ユーザーは、クラウド プロバイダーからの人的介在なしで、必要に応じて自動的に、コンピューティング能力、ネットワーク、およびストレージを設定できる。
  • 幅広いネットワーク アクセス(Broad Network Access)
    クラウド機能は、ネットワークを通じて、標準的なクライアントを使用して利用可能である。
  • リソースの共用(Resource Pooling)
    クラウドはリソースを集約し、それらを複数のテナントに販売する。リソースは、需要に応じて、ダイナミックに割り当てられたり再割り当てされたりする。ユーザーは、自身のキャパシティが具体的に所在する場所を指定することができないが、データセンターのリージョンまたは国を指定することができる。
  • スピーディな拡張性(Rapid Elasticity)
    キャパシティは即座に拡大することも、必要に応じてキャパシティをプールに返してゼロに戻すこともできる。
  • サービスが計測可能であること(Measured Service)
    クラウドは、計測能力を利用して、サービスの種類(ストレージ、処理能力、帯域、アクティブ ユーザー アカウント数)に適した管理レベルでリソースの利用を自動的にコントロールし最適化する。リソースの利用状況はモニターされ、コントロールされ、報告される。それにより、サービスの利用結果がクラウドにもユーザーにも明示できる。

このクラウド定義は、主要な特性は踏襲しているものの、NISTのオリジナル版に比べると、より柔軟であるかもしれません。たとえば、IBM i クラウド プロバイダーは、アプリケーション安定性のためにプロビジョニング コントロールを管理しています。巨大なキャパシティで知られるパブリック クラウドは、当初は一時的なワークロードをホスティングしていましたが、今日では様々な業界の主要なアプリケーションにとって極めて重要な存在となっています。IBM i プラットフォームはステートフルなERPおよびカスタム アプリケーションを稼働しているため、それらは組織にとって不可欠なものになっています。プライベート クラウドはパブリック クラウドとよく似ていますが、特定のケースを除いて、共有テナンシーはありません。ハイブリッド クラウドは、IBM i コミュニティでクラウド パートナーへプラットフォームを複製するためのDRaaSのように、パブリックおよびプライベート アーキテクチャーを組み合わせたものです。

企業がクラウドへ移行する理由

多くのIBM i クライアントは、 サービス、信頼性、可用性、およびセキュリティを高めるために、クラウド戦略を推進することを選んでいます。また、クラウド サービスを、コスト節減の手段と考えるクライアントもいます。これらの要因は、評価されている現行の環境のプロファイルを基にしてリストアップされることもありますが、これらの特性や経済性を優に超えるメリットが得られることもよくあります。

クラウド ソリューションは、上述した5つの特性と関連がある実体的でないメリットを提供することもできます。主なものとしては、拡張性、リソースの共用、および自律的最適化です。根本的には、必要なもののみを利用し、リアルタイムでクラウド インスタンスへリソースを追加または削除できることの方が、手間暇をかけて過度に装備される専用の機器に投資することより、合理的と言えるでしょう。

IBM i クラウド プロバイダーの現況を探る

長年にわたる開発を経て、現在では、信頼性の高い、成熟したIBM i クラウド プロバイダーが世界各地にあります。成熟したIBM i クラウド プロバイダーの模範的な例を以下に示します。

  • キャリアグレードのデータセンターにホスティングされている
  • それらの環境のセキュリティおよび安定性の確保を任務とする、専任のネットワーク エンジニアを雇用している
  • 経験豊富なIBM i アーキテクトによって設計および展開されている
  • 高い技術を持つ人材から成るチームによって管理され、24時間、週7日、365日、利用可能である
  • 外部の監査およびコンプライアンス機関によって検証および認証されている

とは言え、この市場は、X86クラウド インフラストラクチャーの市場と比べると、はるかに小規模です。多くのプロバイダーは、小規模事業者であるか、または、受容不可能リスク プロファイルを作成している同じような小規模事業者の融合体です。他には、SaaS専門のプロバイダーや、ハイパースケーラー クラウドとつながりのあるプロバイダーもあります。さらに、IBMにも、独自のオファリングがあります。

ただし、ほとんどのプロバイダーには、制限事項があります。一部のプロバイダーは、マネージド サービスを提供していません。その場合、貴重な社内リソースを解放してビジネスの稼働に集中するという目的や、退職するかもしれない人的リソースに対する防衛策を講じるという目的には適しません。さらに、ほとんどのIBM i クラウド プロバイダーは、組織に特有のアーキテクチャー要件に柔軟に対応できません。Intelインフラストラクチャーに低遅延の相互接続性を提供して、それらの環境間で大容量のデータを移動できるプロバイダーは、さらに少数です。

すべての成熟したIBM i プロバイダーは、以下の基本的サービスを提供できる必要があります。

  • IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャー)
  • BRaaS(サービスとしてのバックアップおよびリカバリー)
  • DRaaS(サービスとしてのディザスター リカバリー)
  • マネージド サービス(リモートも同様)

すべてが、実際のDRイベントの処理の現場での実績がある必要があり、技術的なディザスター リカバリー計画の策定を支援できる必要があります。

一部には、たとえば、V5R4のような古いオペレーティング システムをサポートしたり、クライアント機器(アプリケーションを移行できない古いPower Systemsなど)を共存させたり、オンプレミスのレプリケーション ソリューションでバックアップおよびDRの保存先の役割を果たしたりするなど、上述したものよりさらに先を行くものもあります。

リソースが限られていて、プログラマーがシステムの安定性やセキュリティまで管理できない場合には、クラス最高のプロバイダーが提供する、基幹業務のサポートも含められる特別仕様のマネージド サポートを利用することもできます。

マイグレーション プロセス:熟慮すべき要因

IBM i ワークロードをクラウドへ移すことを検討している場合、自社のデータセンターから、選択したサービス プロバイダーのデータセンターへアプリケーションをリフト&シフトすることで、それを実現できます。しかし、実際には、それほど簡単なことではありません。まず、クラウドへの移行には、確実に移行を成功させるために、経営陣の理解・協力と企業文化の変革が必要です。技術的要素を定義でき、移行プランを実行できるのは、そのような場合のみです。

実行可能なソリューションは2つのみです。すなわち、論理レプリケーションか、あるいは、テープ バックアップからのリストアという長く続いてきた戦略かのいずれかです。すべてのクラウド プロバイダーが、両方のアプローチを提供しているわけではありません。クラウド パートナー候補については、両方のアプローチをサポートする能力を基準にして評価する必要があります。

どちらのアプローチにも、それぞれメリットとデメリットはあります。論理レプリケーションは、リアルタイムでデータを複製したり、極めて限られたダウンタイムでカットオーバーを実行したりする機能を提供します。ただし、レプリケーション ツールがまだ導入されていない場合は、より費用が掛かります。テープ リストアは、実証済みの確実な方法ですが、カットオーバー時点で大幅なダウンタイムを伴います。どちらのアプローチでも、接続性やアプリケーションなど、確実にすべてが元通りになるように、カットオーバーに先立って十分にテストを行うことができます。両方のソリューションを使用したマイグレーションの実績をきちんと証明できるIBM i プロバイダーを選択する必要があります。

しかし、乗り越えなければならない、1つの最大のマイグレーションのハードルは、シリアル番号移行に伴い請求される場合があるサードパーティ ライセンス料です。これが大きな影響を及ぼす場合もあります。社内で開発されたコードには、このような制約はありません。この問題はIBM i エコシステムに特有なものであり、多くにとって乗り越えるべき打開しがたい障壁となることもあります。クラウド ソリューションの経済性評価の一環として、利用しているアプリケーションをリストアップし、ソフトウェアのプロバイダーに問い合わせてみることは極めて重要です。

IBMは、仮想シリアル ナンバー(VSN: Virtual Serial Number)の実装により、これらの影響の軽減に向けて前進してきました。しかし、多くのサードパーティ組織はこれには加わらず、特定のシリアル番号にバインドされる代わりに、オペレーティング システム環境をフィンガープリントするようにライセンス モデルを変更しています。

仮想シリアル ナンバーには、PowerHAを使用してローカルなハイ アベイラビリティーを実装する機能を著しく制限したり、ディザスター リカバリーのテストおよび実際のリカバリー イベントの妨げになったりするという望ましくない副作用があります。そうしたアクティビティの発生に先立って、それらのライセンス キーが必要となるためです。

数多くのマイグレーションの実施経験のあるクラウド パートナーを選ぶようにすべきです。このことは、きちんと設計された、優れたソリューションを確保するためには極めて重要です。

移行に適した時機

移行のタイミングを検討する際は、自社のビジネス モデルを念頭に置いて検討を行います。考慮すべき点としては以下のようなものがあります。

  • 予算の編成はいつ行われるか。
  • 繁忙期はいつか。
  • 移行を促す可能性のある、予想されるリソース制約はあるか。
  • 容認できない、ビジネス、アプリケーション、またはシステム リスクで、確認済みのものがあるか。
  • 組織のテクノロジー ロードマップに、他にどのようなプロジェクトおよび優先事項が記載されているか。

最近提供されたPower10アーキテクチャーのパフォーマンスの向上、新たなIBMフラッシュ ストレージ アレイ、および強力な監視ソフトウェアのおかげで、クラウド プロバイダーは、クライアントが享受する便益を拡大できるようになっています。さらに、IBMの 長期ロードマップ では、どのような利用モデルでも(特にクラウドで)、ミッション クリティカルなアプリケーションも含め、現在使用しているアプリケーションが円滑に稼働し続けることが再確認されています。また、サブスクリプション料金も、オンプレミスからクラウド プロバイダーへの継ぎ目のない移行の促進を目指したものです。

あらゆるテクノロジーと同様に、時の経過とともに、必ずパフォーマンスは向上し、機能は強化されます。したがって、クラウドという選択肢を評価するのに適さない時期というのはないのです。

まとめ:クラウド移行の意義とメリット

IBM i アプリケーションをクラウドへ移行することは、サービス レベルを向上したり、組織の効率を高めたりするための絶好の機会を提供します。入念な評価を経た上で、適切なクラウド パートナーを選定することは、移行を成功させるためには極めて重要です。クラウド アーキテクチャーについて理解し、マイグレーションのきっかけを見極め、マイグレーションの要因を評価し、移行のタイミングをうまく計ることによって、事業目標に合致する、円滑かつ効果的なマイグレーション プロセスへの道が開かれます。

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