IBM、新たな「区画ミラー」テクノロジーでデータ マイグレーションを効率化
IBMの新たなMigrate While Activeツールの一部として、あるIBM i 区画から別のIBM i区画へデータを移行するのに、まったく新しいテクノロジーが利用可能になりました。「区画ミラー」と呼ばれるこの新テクノロジーにより、IBM i のショップは、長距離でも短距離でも、これまでより問題が生じる可能性が少ないやり方で、データの移動を行えるようになります。
IBMは、2024年10月、高可用性製品「PowerHA」および継続的可用性製品「Db2 Mirror」向けの サブスクリプション導入に関する発表の一環で 、新たなMigrate While Active製品を初めて公開しました。当初のMigrate While Active製品が、オンプレミス システムからPowerVS(IBMのPower Systemsでのクラウド オファリング)で稼働しているIBM i インスタンスへデータを移動するのに、Db2 Mirrorプロトコルを利用していたことを考えると、これらを一緒に発表したのも、なるほどと思えます。
ところが、たった数か月の間に、Migrate While Activeを取り巻く状況はがらりと変わりました。まず、IBMは、Migrate While Activeの使用をPowerVSへのデータのロードに限定しなくなりました。IBMでは、オンプレミスからクラウドへ、クラウドからオンプレミスへ、2つのクラウド間で、1つのオンプレミス ロケーションから別のオンプレミス ロケーションへなど、移動元も移動先も限定なしで、顧客がIBM i データを移動させるツールとして、この製品を推奨するようになっています。
もうひとつ、以前と異なる点があります。すなわち、IBMは、Migrate While Activeで、そうしたオリジナルのDb2 Mirrorプロトコルのみに限定することはなくなるということです。IBMのDb2データベース担当ビジネス アーキテクト、Scott Forstie氏によれば、実際のところ、顧客がどのようなことを行いたいかに応じて、IBMは多種多様なテクノロジーを使用することになるということです。
「私たちはこれらをマイグレーション パターンと呼んでいます。そのパターンには、AからBへどのように移動するのかが示されています」と、先日のPOWERUp 2025カンファレンスでForstie氏は『 IT Jungle 』に述べています。「そして、使用できるテクノロジーには様々なものがあり、今後は、さらに増えるでしょう。」
さて、そうした新たに使用できるようになったテクノロジーの1つをIBMが発表するのにそれほど時間はかかりませんでした。7月8日のPower11の大きな発表の一環で、IBMは、Migrate While Active製品ラインアップに「区画ミラー」を加えることを明らかにしました(Migrate While Active単独での発表日は設けられないようです)。
IBMによれば、区画ミラーリングは、IBM i オペレーティング システムの下に位置するTIMI(Technology-Independent Machine Interface)の下で稼働する、ホスト ベースの非同期ストレージ レプリケーション テクノロジーを使用して、システム基本ASP(SYSBAS)内のデータを移動元から移動先へコピーするということです。
Migrate While Activeの当初のレプリケーション方式と比較して、このアプローチはいくつかのメリットをもたらします。まず、区画ミラーリングは、ソース システムでの初期のシステム停止を必要としません。これは「インストール メディアの作成またはフル システム セーブが必要ないから」だとIBMは述べています。そして、区画ミラーリングはTIMIの下に位置するため、「ロックについての考慮も不要で、稼働中の本番ワークロードとの競合も生じません。」
管理者は、Db2 MirrorのGUIから、区画ミラーリングの動作状況を監視および管理することができます(Db2 Mirrorのフル ライセンスの購入は必要ありません)。すべてのデータの移行が完了したら、区画ミラーリングは、引き続き、データに対して行われたすべての変更を複製します。
また、IBMは、区画ミラーリングで、ターゲット システムですべてが問題なく機能しているかどうかをユーザーが確認できる、テスト モードもサポートしています。テスト中は、レプリケーション処理は一時停止し、テスト中にユーザーがデータに対して行った変更はすべてトラッキングされます。ユーザーがレプリケーション結果に問題がないことを確認したら、ターゲット ノードに対して行われた変更はロール バックされ、レプリケーション処理が再開し、本番システムで行われた変更と同期するようにターゲット ノードは元の状態に戻されます。この時点で、最終カットオーバーが実行され、マイグレーションが完了します。
この新たなテクノロジーに関しては、顧客が認識しておくべき注意事項がいくつかあります。このテクノロジーは、暗号化されたデータをサポートしていないため、顧客のASPに暗号化されたデータがある場合、それらは複製されません。また、この新たなレプリケーション方式は、独立ASP(iASP)もサポートしていません。さらに、現時点では、区画ミラーリングは、IBM i バージョン7.4ハードウェア テクノロジー レベル12のみをサポートしています。もっとも、IBMは、間もなくIBM i 7.5およびIBM i 7.6をサポートする旨の意向を表明しています。
IBMのPower Systemsプロダクト マネジメント担当バイスプレジデントのDoris Conti氏によれば、新たな区画ミラーリングは、PowerVSへ移行する顧客にとってのゲームチェンジャーになるということです。
「マイグレーションおよびオンボーディング(製品導入展開支援)は、自信を持って提供できる形になったため、現在、5日間のオンボーディング保証を提供しています」と、まさに7月8日のPower11の発表の際にConti氏は述べています。「ハイブリッド クラウドを導入してビジネスの信頼性を強化したい、アプリケーション モダナイゼーションを加速したい、あるいは、ビジネス ニーズに基づいてワークロードをPowerVSに配置したいという場合、5日以内にPowerVSでの稼働開始が可能です。」
IBMがMigrate While Activeにさらに多くの新たなテクノロジーを導入したとしても、驚くには当たらないようです。
「私たちのチームは、この1年、Migrate While Activeに注力して大きな成果を収めることができました。年末に向けて、さらには来年にかけては、新たなテクノロジーのデリバリーが続く、ワクワクする年になることが期待されます」とForstie氏は述べています。「なぜでしょうか。非常に関心が高いからです。そして、クライアントの要望には様々なパターンがあります。したがって、クライアントのニーズを満たせるように、製品を機能強化する必要があります。ワクワクが止まらない1年になりそうです。」
区画ミラーリングの詳細については、 こちらを参照してください。