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IBMi海外記事2025.12.10

IBM i 7.6 TR1およびIBM i 7.5 TR7で提供されるもの

Alex Woodie 著

10月初旬を迎え、木々の葉は色を変え、夜はひんやりするようになっています。ミネソタ州南部では、IBMの開発者が、IBM i オペレーティング システム向けの秋のテクノロジー リフレッシュの準備に勤しんでいるようです。

先週のIBM i 7.6向けTR1およびIBM i 7.5向けTR7の発表(提供開始は11月21日)で、IBMは、アプリケーション開発から管理まで、広範なIBM i システム ソフトウェア全体にわたる数多くのアップデートおよび新機能の提供を表明しています。

IBM i の個別の機能領域に入る前に、入出力処理に関して行われた全般的な機能強化について見てみましょう。まず、IBMは、ファイバー チャネル マルチパス設定の挙動を変更しています。

以前のリリースでは、IBM i は、障害が発生したファイバー チャネル リンクの修復を絶えず試みていました。しかし、障害が発生したパスを再開しようとしてシステムがループにはまり込んだ場合、システムが使用不能となることもよくありました。「Fibre Channel Multipath Automatic Path Disable(ファイバー チャネル マルチパスの自動パス無効化)」と呼ばれる新機能により、ユーザーは、障害が発生したリンクをシャット ダウンする前に、システムがリンクの修復を試みる最大回数を設定できるようになりました。これにより、システムの不安定化が回避されます。

また、IBMは、VIOSホストの仮想SCSI(vSCSI)ディスクがIBM i サーバー内で入出力を処理する方法に対するアップデートも提供しています。タイプ6B22-050または6B23-050のvSCSIディスクを使用する場合、「IBM i 固有のストレージ要件」(すなわち、IBM i が通常の512バイトのディスク セクターに追加する余分な8バイト)のために、ディスク読み取り応答に余分なCPU処理時間が必要となります。これにより、大規模な読み取りワークロードでは、応答時間が非常に長くなる場合がありました。これを修正するために、IBMは、ディスク応答をマルチスレッド化し、これにより、複数のディスク応答が並列処理されることが可能となります。

それでは、IBM i および関連ソフトウェア スタックの個別の領域について見て行きましょう。まずは、誰もがお気に入りのDb2 for i です。

Db2 for i の機能強化

IBM i サーバーはデータベース マシンです。そのため、IBM i 7.6およびIBM i 7.5向けTR7でも、データベースのアップデートがいくつか行われています。

データベース本体に対するアップデートという点では、IBMはいくつかの興味深い修正を行っています。たとえば、VALUESを使用したINSERTで名前付き列をサポートするようになりました。また、URL-ENCODEおよびURL-DECODEスカラー関数のサイズが1 MBから2 GBへ拡張され、はるかに大規模なドキュメントをサポートできるようになりました(これは今後の生成AI機能に向けての拡張かもしれません。続報にご注目ください)。さらに、Visual Explain機能は、科学的記数法ではなく、普通の10進数形式を使用するようになりました。これにより、先端科学の学位を持たないベテランの普通のデータ エンジニアにとって理解しやすくなるはずです。

また、IBMは、Db2 for i サービスのアップデートも行っています。SQL Error Logging Facility(SELF: SQLエラー ロギング機能)およびDb2 for i 索引アドバイザーは、データがどのように保持されるかをユーザーがより制御できるように強化されました。また、ANALYZE_CATALOG(SQL)表関数も強化され、IBM i がIBM i(SQL)サービスを実行する準備が整い、使用可能かどうかを確認する手段が提供されています。これは、IPL後のあまりに早い段階でSQLサービスが呼び出されないようにするのに役立つとIBMは述べています。

新規追加および機能強化されたIBM i サービスがないTRは、TRとは言えないでしょう。IBM i サービスは、データベースが一般的な管理タスクを自動化できるようにするSQL関数です。今回のTRでも、10個近くのIBM i サービスが新規に追加されています。

まず、新たなCERTIFICATE_USAGE_INFOビューは、証明書を使用する登録済みアプリケーションおよび関連する証明書情報に関する情報を返し、一方、JOURNAL_CODE_INFOビューは、各ジャーナル コードおよび各ジャーナル項目タイプのテキスト説明を返します。これら以外の新規追加および機能強化されたIBM i サービスについては、今後の『 IT Jungle 』の記事で取り上げる予定です。

また、IBMは、Db2 for i のサンプルおよびツールのコレクションを提供するスキーマ、SYSTOOLSのアップデートも行っています。SYSTOOLSには、新たなスプレッドシート生成関数、引数が2で割り切れるかどうかを判定する新たな関数、およびSQLまたはNavigatorを使用して行われたセキュリティ適用アクションをアーカイブするのを支援する監査ジャーナル関数など、いくつかの新機能が提供されています。

アプリケーション開発

IBMは、TR全体にわたって、いくつかの魅力的なアプリケーション開発のアップデートを提供しています。Code for i(RPGおよびCOBOL開発者が人気のWebベースのIDEでプログラミングを行うことを可能にするVS Codeプラグイン)は、数多くの新機能によってアップデートされています。

まず、 Liam Allan氏が6月に述べていた 「夢のような素晴らしい」テスト拡張機能のリリース準備が整いました。このCode for i 拡張機能により、開発者は、ローカル ファイルまたはソース メンバーからのテストの実行、個々のテスト ケースまたはテスト スイートのテスト スタブの生成、テスト パラメーターの構成、IDEでのテスト結果のインライン表示といった処理をはるかに簡単に行えるようになります。このツールはIBMのコード カバレッジ機能をサポートし、コードのどれくらいの部分がテストされるかを確認できます。また、開発者がテストをCI/CDパイプラインに統合することを可能にする、テスト自動化機能も提供されています。

Code for i のDb2 for i 拡張機能も、SQLステートメントでのパラメーター バインディングのサポートや、SQLステートメントから直接RPGLEデータ構造を生成する機能など、様々な新しいSQL機能によって強化が図られています。RPGLEサポートは、プロシージャー、プロトタイプ、および組み込み関数(BIF)のサポートなどによって拡充されました。RPG BIF向けにコンテンツ アシストが強化され、また、ユーザーは、データ型に基づいて特定のフィールドから使用可能なBIFを表示できるようになりました。

また、IBMは、主力となる、ILE言語開発向けのJavaベースのIDE、Rational Developer for i(RDi)の新たなリリースも提供しています。RDi 9.9は、Java SE 17をベースにして2024年前半に出荷開始されたEclipse 4.31をベースにしています。RDi 9.9では、「IFS対応RPGプロジェクトのサポートが拡張され、Gitのワークフローとの整合性が向上している」とIBMは述べています。また、Access Client Solutionsのホスト エミュレーター設定とも統合しています。

RPGLEコンパイラーが含まれるIBM i ベースの開発ツール、Rational Development Studio for i も強化がなされています。開発者は、列挙のデータ型をコーディングし、列挙のようにフィールドを定義することができるとIBMは述べています。また、一部のBIFで暗黙的なCCSID変換が行われるようになり、新たな日付形式が、一定のBIFおよび従来の命令コードで使用できるようになりました。

Java開発者にとって朗報があります。IBM i 7.5 TR7でJava 21がサポートされるようになりました。IBMは、 4月の発表時点で、IBM i 7.6でのJava 21(2023年に初めてリリースされた長期リリース)のサポートを提供していましたが、7.5を稼働している顧客もJava 21を使用できるようになりました。Java 21のサポートは、当然ながら、オプション21を介して提供されます。

NavigatorおよびACS

IBMは、管理者に喜ばれそうなアップデートもいくつか提供しています。たとえば、Navigator for i には、HTTPサーバー(ApacheをベースにしたHTTPサーバー)、統合Webサービス(IWS)サーバー、および統合アプリケーション・サーバー(IAS)を管理するのに役立つ、洗練された新たなWebインターフェースが追加されています。Navigatorの別の新機能は、IBM i 7.6で新たに追加された多要素認証(MFA)で使用される時間ベースのワンタイム パスワード(TOTP)が、コピー操作中に新しいエンド ポイントに送信されたかどうかを管理者に伝えます。

管理者にとっては、許可およびプロパティの作成、更新、削除など、Navigator内の権限リストのあらゆる側面を管理する機能も有用となるでしょう。また、Navigatorでは、管理者が、LDAPデータ交換形式(LDIF)ファイルをインポートおよびエクスポートできるようになりました。最後に、新たにサポートされた2つの監査関数(POおよびSFジャーナル項目)がNavigator内でサポートされ、これらもセキュリティ機能の強化の一助となります。

NavigatorのPerformance Data Investigator(PDI)コンポーネントは、ファイルの処理方法に関して1つの比較的小さな修正が施されています。以前のリリースで収集サービスに追加されたファイルは、「収集サービス・データベース・ファイル」ヘッダーの下で処理されるようになったとIBMは述べています。

Access Client Solutions(ACS)にも、負けじとばかりにいくつかの機能強化が追加されています。すなわち、同時に複数のACSコマンドライン プラグインを呼び出す機能、一時ファイルのクリーンアップ機能の強化、構成を管理するための新たなプロパティ、更新のチェックまたは適用時のコマンドライン プラグインの名前の視認性の向上、パスフレーズで保護されたSSH鍵のサポート、およびシステム構成のチェック時のより直観的なデフォルトの挙動などです。「オープン・ソース・パッケージ管理」は、「すべて選択」(WindowsではCtrl-A、MacではCommand+A)をサポートするようになり、構成をコピーするのがより簡単になるはずです。

ACSの「データ転送」コンポーネントが改善され、「cldownload」プラグインで1つのSQL照会を含むUTF-8エンコードされたファイルを実行できるようになりました。ユーザーは、IFSファイルのコピーまたはペーストなど、画面内のハウスキーピングのメニュー項目を実行するときに利用可能なストレージ容量を確認できるようになりました。スキーマ管理コンポーネントに新たな「アクション」が追加され、関連するすべてのジャーナル レシーバーで作業するのがより容易になるはずです。「SQLの生成...」で、以前に使用したディレクトリー パスが保持されるようになり、また、表定義ダイアログにも機能強化がなされています。「SQL Performance Center」には、スキーマおよび表の入力を促してから「Work with Indexes」を起動する、新たな「Index Evaluator」が追加されています。

ACSの超人気コンポーネントである「SQLスクリプトの実行」にも、数多くの機能強化が追加されています。そのうち、とりわけ重要なのは、IBM i 7.6 SQL構文のサポートです(もちろん、IBM i 7.5ではサポートされません)。また、IBMは、「SQLスクリプトの実行」の「例から挿入...」に、「Audit Journal CD review」や「Db2 for i - Update attack vector」など、いくつかのセキュリティ スクリプトを含む、16個の新たな項目を追加しています。

BRMSおよびDb2 Mirror

IBMのバックアップ機能、Backup, Recovery, and Media Services(BRMS: バックアップ・リカバリおよびメディア・サービス)は、いくつかの新機能によってアップデートされています。まず、管理者およびオペレーターは、直接Webインターフェースで、制御グループ属性およびバックアップ リストの詳細を表示できるようになりました。また、ユーザーは、Webインターフェースから、オブジェクト、メンバー、IFS、フォルダー、およびスプール ファイルに関連する詳細情報を含む、バックアップ履歴情報を表示することもできます。

BRMSは、新たな*ULTRIUM10密度を使用するLTO-10テープ ドライブおよびメディアのサポートを追加しています。IBMは、ボリュームの有効期限切れステータスおよび有効期限を表示する、BRMS向けの新たなSQLサービスを提供しています。その他にも、ユーザーがバックアップ履歴情報を表示できるようにする、いくつかのBRMS SQLサービスも機能強化されています。

Db2 Mirrorについては、詳細は明示されていないものの、ユーザー インターフェースおよび製品のパフォーマンスに対して何らかのアップデートが行われているようです。PowerHAに対するアップデートに関しては、何も記載されていませんでした。

IBM i 7.6 TR1の発表レターは こちらで 、IBM i 7.5 TR7の発表レターは こちらでご覧になれます。TRに関する詳細情報については、IBM Support Webサイトの「IBM i Technology Updates」ページでご覧になることもできます。 こちらをクリックすることでアクセスできます。

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