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IBMi海外記事2020.11.11

IBM i およびメインフレームでは、モダナイゼーションはマイグレーションに勝る、IDC調査

Alex Woodie 著

Rocket Software社の委託を受けて実施されたIDC社の調査によると、IBM i およびSystem zアプリケーションをモダナイズした組織は、それらのプラットフォームから他へマイグレートした組織に比べて、満足度がより高く、コストがより少なく済み、さらには、AI、IoT、およびモバイル対応といった、より高いレベルのイノベーションから恩恵を受けることもできた、とのことです。

「The Quantified Business Benefits of Modernizing IBM Z and IBM i to Spur Innovation(IBM ZおよびIBM i をモダナイズしてイノベーションを促進することで得られる企業利益に関する調査)」の中で、 IDC 社のアナリスト、Peter Rutten氏とRandy Perry氏は、 IBM製の大型マシンにまつわるモダナイゼーションおよびマイグレーション プロジェクトの様々な側面、影響、および効果を定量的に測定し、比較を試みました。このアナリスト グループは、オーストラリア、インド、ニュージーランド、英国、および米国の440の組織の経営幹部とITリーダーを対象に調査を行いました。

IDC社は、4つの群(モダナイズしたIBM i のショップ、マイグレートしたIBM i のショップ、モダナイズしたSystem zのショップ、マイグレートしたSystem zのショップ)すべてに対して、以下の様々なメトリクスに関して、移行の前後での満足度について尋ねました(カスタマー エクスペリエンス。全体的なパフォーマンス。セキュリティ、アベイラビリティー、およびディザスター リカバリー機能。アジリティ、マイクロサービス、およびDevOps。人材の見つけやすさ。AIおよびIoTの統合性。API、モバイル、およびWeb対応性)。

「レガシー」システムをモダナイズしたIBM i およびSystem zのショップは、システムから離れるマイグレーションを選んだIBM i およびSystem zのショップに比べて、7つすべてのメトリクスでより高いスコアを示しました。さらに、マイグレーションではなくモダナイズした組織は、ハードウェア、ソフトウェア、および人材に関する出費がより少なく済み、おまけにより高い収益を上げた、ということです。

「こうした結果からは、「レガシー」と呼ばれることもあるプラットフォームに留まり、それらのプラットフォームで利用可能となっている、豊富なハードウェアおよびソフトウェア イノベーションを活用する企業は、それらのプラットフォームから他へマイグレート(リプラットフォーム)する企業に比べて、量的にも質的にも、全体的により良好な結果が得られる、ということがはっきりと見て取れます」とアナリストはレポートに記しています。

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モダナイズしたショップは、マイグレートしたショップと比べて、全般的により良い結果が報告されました(IDCの調査レポート)。

IBM i およびSystem zアプリケーションをモダナイズするためのツールを販売している Rocket Software社の経営幹部にとっては、多少、意外な結果だったようです。約6か月前に同社に加わった後、データ収集作業を通じてレポートの陣頭指揮を執った、Rocket社CMOのJeff Winter氏は、このユニークな調査に関して『 IT Jungle 』に次のように述べています。

「事前の仮説としては、留まるほうがリスクは少ないだろう、というものでした」と彼は述べます。「どのようなトランスフォーメーション プロジェクトや「リプラットフォーム」でも、行うにはリスクを伴うのは言うまでもありません。費用対効果についてはよく分かっていませんでした。プラットフォームに留まることで節約になるのか、あるいは、リプラットフォームすることで節約になるのか。」

また、Winter氏と彼の同僚は、デジタル イノベーションに関してデータからどのようなことが分かりそうか、ということについてもよく分かっていなかったそうです。

「実際、大きなトレードオフに直面することになるだろうと考えていました。確かに、モダナイズして留まることで資金を節約し、リスクを減らすことはできるのかもしれません。しかし、それだと、あまりイノベーションを起こせなくなるというトレードオフがあると思いました」と彼は述べます。

「しかし、回収したデータを見て分かったことは、リプラットフォームした企業に比べて、モダナイズした企業は、コストがより少ないだけでなく、リスクがより少ないだけでもなく、実際、より迅速にイノベーションを行い、成長することができたということです」とWinter氏は述べています。

調査からは、これらのIBMプラットフォームについてのよくある誤解も露わになりました。IBM i およびSystem zは、重ねた年数のせいで(どちらも系統を前世紀の中頃まで遡ることができます)、「レガシー」プラットフォームというレッテルを貼られることがよくありますが、そのことは、ほとんどのマイグレーションの行き先となる今日のX86プラットフォームに比べて、先進的でないとか、高機能でないということを意味するわけではありません。

「IBM i およびSystem zは、実際、今日の市場でも最も高機能で、最も先進的なプラットフォームです」とIDCアナリストは記しています。「そのため、どの企業もITインフラストラクチャー戦略を検討する際には、リプラットフォームすることによって、大事なものを要らないものと一緒に捨ててしまうことにならないか慎重に検討する必要があります。IDCの調査で明らかになったのは、リプラットフォームへとつながる最もよくある間違いの1つは、IBM ZおよびIBM i で利用可能なイノベーションに気付いていない、ということでした。少なくとも、避けられるコストについてだけではなく、今のプラットフォームでモダナイズを行うことから得られる様々な機能についても、じっくり分析してみることが必要です。」

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IBM i のショップで最もよく見られるデジタル トランスフォーメーションの取り組み(IDCの調査レポート)。

メインフレームおよびIBM i サーバーがどれほど先進的であるかについては、「著しい認識不足」が見受けられるとIDCは述べています。「IBM Zからリプラットフォームしたあるショップは、たとえば、IBM Zのハイブリッド クラウド機能を知らないと述べています」とアナリストは調査レポートに記しています。「IBM i からリプラットフォームした別の企業は、2007年から2017年までIBM i のアップグレードを一度も行わなかったため、IBM i の新技術に付いて行けてなかったと述べています。同社は、そのプラットフォームがその10年の間にどれくらい進化してきたかを知らず、リプラットフォームを基本に置いて取り組んできました。ある企業の代表は、「これは古い技術だというのが実感です。もう過去のものという印象があるのです」と述べています。」

IBM i およびSystem z向けのアプリケーションのモダナイゼーション ソリューションのプロバイダーとして、Rocket Software社は、こうした誤解に日々直面しています。取り巻く環境はそれぞれ異なるため、IBM i またはメインフレームから他へマイグレートすることが正しいビジネス判断である時と場合もありますが、伝統あるシステムの機能について慌てて結論を出したせいで、性急な意思決定の報いを受ける羽目になる組織があまりに多いのです、と先日、Rocket社のPower Systems Business Unitの プレジデントに就任した Chris Wey氏は述べます。

「レガシー マシンには不当な烙印が押されているのだと思います」とWey氏は述べます。「IBM i またはAS/400でこうしたレガシー アプリケーションを稼働している組織の組織構造を考えてみてください。レガシー システムのシニア マネージャーまたはディレクターがいるとします。そして、分散型システム、クラウド、その他のIT資産を管理するより大きいIT組織があるとします。そこへ、新たなCIOが着任します。クラウド重視派である彼はこう言うかもしれません。「取り除いてしまいましょう。異論は認めません。AS/400を取り除いてしまえば、それで十分です。」

「これはリスクの高い判断です」とWey氏は続けます。「IDC調査を通して伝えようとしていることは、1番目は、リスクについてです。そして、2番目は、経済性です。すなわち、(このプラットフォームから他へマイグレートする)選択をしなければ、売上も損益も上がるということです。」

もちろん、この調査の結果については、多少、割り引いて考えるべきでしょう。委託を受けて実施されたどのようなレポートでも同様でしょうが、レガシー アプリケーションをモダナイズすることが、どれほど大変で無益なのかと、IDCが物申しに戻って来ることなどあり得ないでしょう(もし、戻って来たとしても、そういう趣旨の話を聞かされることはないでしょう)。また、IDCは、プラットフォームの変動要因、性質、および特徴を数値化する作業をきちんと行ったと思いますが、プラットフォームが先進的かどうかを判断する上で同じく重要と思われるいくつかの重要な要素が、調査対象に含まれていませんでした。たとえば、そのプラットフォームのコミュニティ(特にそのプラットフォームをターゲットとしているアプリケーション ベンダーなど)による技術的投資の状況などです(IBM i がどれほど素晴らしいかという話を、 OracleSAP から最後に聞いたのは、いつだったでしょうか)。

しかし、そうは言っても、IDCの調査結果は、『 IT Jungle 』が長年にわたってIBM i コミュニティから聞いてきた話と符号するところもあります(小誌ではSystem zはカバーしていないことはご存じの通りです)。そして、Rocket Software社のレポートはいくぶん利己的な面はありますが、この種のレポートで高い水準を保っているIDCのようなグループを選んだことについては賞賛すべきでしょう。Rocket社がこの調査を行わなかったとしたら、どこかが行ったことでしょう。なぜなら、こうした調査は、IBM i が数十年経った後も存在し続ける理由や、IBM i コミュニティのメンバーが、この風変わりだが素晴らしいマシンに彼ら自身と彼らのキャリアを捧げ続ける理由の核心に迫るものだからです。

IDCのレポートは、すでに大型マシン プラットフォームから離れる決断をした組織を納得させるものではありませんが、まだ態度を決めかねている組織を揺さぶるのには役立つかもしれません。多くの場面でモダナイゼーションはマイグレーションに勝り、アプリケーションには(古いアプリケーションでさえも)、何らかの固有の価値があるという十分な証拠があります。それのアプリケーションが、モダナイズすることができ、IBMがこうした強力かつ高機能なビジネス プラットフォームに追加してきた最新の機能を活用することができる場合は特にそう言えるでしょう。

「実際のアプリケーションは古いものであり、何年も前、場合によっては何十年も前に書かれたものです」とWinter氏は述べます。「しかし、Rocket社や他の企業が提供するツールを利用すれば、ほとんどソース コードに触れることなく、そうしたアプリケーションを構築したり、そうしたアプリケーションからデータにアクセスしたり、これらのアプリケーションでアナリティクスを実行したりすることができます。そして、もちろん、直接それらのアプリケーションをモダナイズしたり、拡張したりすることもできます。しかし、企業がこれらのプラットフォームでモダナイズしたり、イノベーションを行ったりするのを妨げるものは、本当は何もないのです。」

もう繰り返し言う必要もないですね。

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