SEUの運命、IBM i V8、そしてPower13の可能性
先日のCOMMONのPOWERUpカンファレンスで、『 IT Jungle 』は、何人かのIBMのエグゼクティブにインタビューする機会を得て、IBM i ビジネス、今後のPowerの発表、およびその他の様々なトピックについて話を聞くことができました。たとえば、IBMはいよいよSEUを終了させる準備を始めたのか、IBM i 8.0が出るのはいつなのか、Power13の「13」という数字は気にならないのかなど、様々な話を聞かせてもらえました。以下は、インタビューの模様を簡単にまとめたものです。
IBMロチェスターは、このところしばらく大掃除モードにあるようです。不要な物を片付け、21世紀に向けて製品ライブラリーの再編成を行っています。こうした取り組みの一環で、IBMは、サブスクリプション モデルへ移行し、オープンソース ソフトウェアのアップデート方式をモダナイズしました。IBMが、顧客にVS CodeやRDiなどのモダンな開発ツールを採用してモダンなアプリケーションを作成するよう急き立てるのに合わせるように、広範囲にわたるレガシーなADTS(適用業務開発ツールセット)の一部のツールは お払い箱にされています 。
IBM i 7.6の発表は、ADTSの一部のツールや他の20以上のIBM i ツール(Fax/400やCICS for i など)の 命運が尽きたことを示しました 。また、IBMは、IBM SupportのWebページに、このオペレーティング システムの次のリリースでサポート終了予定の 製品が記入される欄 を設けています。このことが、IBM i ツールボックスで最もよく使用されている(と同時に非常に嫌われてもいる)2つのツール、すなわち、SEU(原始ステートメント入力ユーティリティー)とPDM(プログラム開発管理機能)をお払い箱にする準備をIBMがとうとう始めたのかという臆測を呼びました。
しかし、IBM i CTOのSteve Will氏によれば、そうはならないということです。
「絶対ないとは言えませんが」とWill氏はPOWERUpでのインタビューで述べています。「しかし、そもそもSEUを終了させるべき理由が見当たりません。」
SEUは、IBM i 顧客にモダンなアプリケーションの開発に投資してほしいと考える人には広く嫌われていますが、数十年前に作成されたレガシー アプリケーションを今も稼働している人によって広く使用されています。IBM i 市場調査で示されているように、SEUは、このプラットフォームにおける圧倒的にナンバーワンの開発ツールです。調査からは、それらの古いアプリケーションがどれほど広く使用されているかが見て取れます。それに加え、SEUは、状況によっては、すぐにシステムにアクセスして、ちょっとした応急的な変更を行うには最適なツールです。
IBMの上層部は、こうした相反する要望のバランスを取る必要があります。「SEUをオプションから外したい理由も理解できます」とWill氏は述べています。「しかし、すぐに応急的な変更を行わなければならない場合は、SEUはそうするための最適な手段だという声を数多くのクライアントから聞かされています。」
SEUのサポート終了に関する問題は、SEUは、単にIBM i にアクセスするための最適な手段であるだけでなく、状況によっては唯一のアクセス手段となるということだと、開発ツールおよびNavigator担当IBM i アーキテクトのTim Rowe氏は述べています。
「SEUのサポートを終了することはできません。制限状態にあるときに、システム マネージャーは、どうやって編集することになるのでしょうか」とRowe氏は述べています。「顧客に、SEUを使用してRPGおよびCOBOLコードを開発してもらいたいとは思っていません。しかし、SEUは、システム管理エディターとして残しておいて、そうした作業を行えるようにしておく必要があります。したがって、そのような観点から、SEUであれ、PDMであれ、終了させる予定はまったくないということです。」
では、IBM i 8.0についてはどうでしょうか。
4月の春のIBM i テクノロジー リフレッシュに先立つ3月の記事では、どのような発表がありそうかと 私たちは予想を行いました 。IBM i 7.6の発表なのか、はたまた、IBMは覚悟を決めていよいよバージョン8に移行するのか。なにしろWill氏は、「IBM i に関する大きな発表」を公言していました。ドット リリース(.Xリリース)は「大きな発表」だったのでしょうか。
IBMがバージョン7.6を選んだのは言うまでもありません。そこで疑問が生じます。すなわち、バージョン8はいつになるのでしょうか。IBM i バージョン7.1のリリースは、2010年のことでした。IBMは、本当に20年間、1つのバージョンのまま過ごすつもりなのでしょうか。
Will氏によれば、20年どころか、30数年以上になることもあり得るということです。次のリリースはIBM i 7.7になるでしょうし、当面、8.0へ移行する計画は「まったくない」と彼は述べています。「7.9が済んだら、8.0について考えなければならないでしょう」とWill氏は述べます。
そこで別の疑問が生じます。すなわち、これまでに、IBM i またはその前身のオペレーティング システム(i5/OSおよびOS/400)で、X.9リリースとなったケースはあったでしょうか。答えはノーです。ポイント リリース(.Xリリース)で一番大きかった数字は、V3R7の「7」でした。IBMが、予想されているペースで、3年おきにマイナー リリースを出荷するとしたら、2028年にIBM i 7.7、2031年に7.8、そして2034年に7.9ということになります。そして、ようやく2037年には、IBMはカウンターの数字を「0」に戻すことについて考えるのかもしれません。
あるいは、そうはならないかもしれません。結局のところ、Will氏は、しつこいレポーターのインタビューに付き合ってくれていたのだと思います。通常、IBMは、製品リリースについて、これほど突っ込んだ話をすることはありません。それでも、私たちは尋ねるのが仕事であり、これが、Will氏が答えてくれたことです。
数字について言えば、IBMが、IBM i リリース番号とPowerプロセッサーのバージョン番号を揃えるのを止めてからしばらくになります。最後に番号が揃ったのは、2010年のPower7とIBM i 7.1でした。当時は名案だと思えたと、IBM Systems担当バイスプレジデント兼ビジネス ライン エグゼクティブのSteve Sibley氏は述べています。
「私たちとしては「7」へ移行する必要はありませんでした」とSibley氏は述べます。「それでも「7」へ移行したのは、「7」の付くハードウェアを発表したところで、そうすれば番号が揃うと思ったからでした。」
IBM内では、IBM i 8.0(実際は8.1。ドット オー リリース(X.0リリース)は誰も使いたくないので)への移行を急ごうとする雰囲気はないように見えます。以前は、より大きい数字の方が、マーケティング上、メリットがあったのかもしれません。顧客が使用しているのが、最新かつ最高のソフトウェアであることを示せたからです。しかし、今日では、そうした心理はIBMに逆向きに作用するというのが実際のところのようです。あまりに劇的な変化がもたらされると考えると、顧客は移行をためらうからです。
「少なくとも私見では、「まだIBM i 7を使用しているなんて時代遅れだ」と言われるような市場の圧力はないと思います。むしろ、「8」へ移行するとしたら、IBM i 7を稼働しているユーザーは、大きめの一歩と考えます」とSibley氏は述べています。「実際は、前に進むのを促す誘因というよりも、前進を抑制する要因になる可能性もあるわけです。」
Powerの世代の命名法に関しては、別の心理が働いているのかもしれません。Powerの世代番号は、IBM i オペレーティング システムのリリース番号に比べて、はるかに速いペースで進んでいます。IBMは、Power11の発表を目前に控えていますが、IBM DE(ディスティングイッシュド エンジニア)で、Powerプロセッサーのチーフ アーキテクトのBill Starke氏は、Power12以降に関する初期開発状況について、COMMONで包み隠さず話してくれています。
数を数えられないのかと思われる覚悟で、こう尋ねました。Power12の次は何ですか。Power13でしょうか。言うまでもなく、「13」という数字を使用するのは、多少、ためらわれるものがあるものです。迷信深い人は不吉な数字と考えるからです。多くのホテルでは、13階を設けないようにして、本来の13階を14階としています。
IBMのマーケティング部門は、「13」という数字にまつわる迷信に打ち克つことができるでしょうか。あるいは、 PHPマニュアルのあるページを引き合いに出すなどして 、縁起の良い数字を使用するようにした方がよいのでしょうか。
「なるほど、良い指摘ですね。そのようなことは考えにありませんでした」とSibley氏は受け止めます。「やはり、「13」という数字は飛ばした方がよいのかもしれません。」