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IBMi海外記事2024.01.24

Kyndryl社によるIBM i およびメインフレームショップのモダナイゼーション プラン調査

Alex Woodie 著

IBM i およびメインフレームのユーザーは、アプリケーションのモダナイゼーションおよびデジタル トランスフォーメーションに取り組む際に、どのような方法を選んでいるのでしょうか。また、そうした取り組みは、どのような成果を生み出しているのでしょうか。それらは答え甲斐のある良い質問ですが、Kyndryl社(旧IBM Global Technology Services部門)による新たなレポートでは、それらの質問に対する回答例がいくつか示されているようです。

Kyndryl 社は、Coleman Parkes Research社に委託して、世界各地のIBM i およびメインフレームのショップ500社を対象に、アプリケーションのモダナイゼーションおよびトランスフォーメーションのプランについての調査を実施しました。その調査結果を基に、その名もずばり、「 メインフレーム モダナイゼーション状況調査レポート 2023年」と題するレポートがまとめられました( こちらからダウンロードできます)。

(このレポートは、タイトルにも「メインフレーム」という単語が含まれており、言及されているのは「メインフレーム」のみですが、調査の回答者にはSystem zの顧客とIBM i の顧客が混在していると、Kyndryl社のSVP、CTO、兼コア エンタープライズ& zCloud担当エンジニアリング リードのRichard Baird氏は『 IT Jungle』に述べています)

この調査でKyndryl社は、ビッグ アイアン(メインフレームおよびIBM i サーバー)のユーザーが選ぶ、アプリケーションのモダナイゼーションおよびデジタル トランスフォーメーションのアプローチとして、主なものを3つ示しています。すなわち、「Modernize on(メインフレーム上でのモダナイゼーション)」、「Integrate with(他プラットフォームとの統合)」、「Move off(メインフレームからの移行)」の3つです。「調査では、ほとんどの企業が変革に取り組む際にこれらのアプローチを組み合わせていることがわかりました」と同社はレポートで述べています。

これらのモダナイゼーション アプローチがビッグ アイアンの顧客にとってうまく機能していること、そしてメインフレームおよびIBM i サーバーがしばらくは顧客のIT環境における中核的な存在であり続けることが調査から見て取れるとKyndryl社は述べています。具体的には、調査回答者の90%は、IBMサーバーが「依然としてビジネス活動に不可欠である」と回答しているということです。

メインフレームおよびIBM i モダナイゼーションの結果として実現した、企業ごとの年間平均コスト削減額(画像提供: Kyndryl社)。

しかし、そのことは、ビッグ アイアンの顧客がCPWおよびMIPSにこだわるのをやめたことを意味するわけではありません。顧客の95%が、「ワークロードの少なくとも一部をクラウドまたは分散プラットフォームに移行している」ことがKyndryl社のレポートで示されました。ビッグ アイアンを使用している組織は、平均で、ワークロードの37%をメインフレームおよびIBM i サーバーから他へ移行しているということです。しかし、すべてのアプリケーションをIBMプラットフォームから他へ移行しようとしているのは、顧客の1%未満でした(調査に回答した500社のうちの2社のみ)。

このような調査結果は、メインフレームおよびIBM i はその役割を終えているという、一般に広まっているイメージとは相容れないように思われます。一般的なIT系メディアには、古めかしいグリーンスクリーン アプリケーションが企業のデジタル化の進展を遅らせているという、恐怖心を煽るような言説が溢れています。古びた高価なIBMハードウェア上で稼働するモノリシックなCOBOLおよびRPGプログラムから、どれでもお望みのクラウドベースのサーバー(X86のみ)へすぐに移行することができる、ピカピカの新しいKubernetesコンテナで稼働する、洗練された最新のRESTベースのマイクロサービス アプリケーションへと移行するより他に道はない。そのように言われています。

それでは、そのような今が旬の輝かしい代替製品があるのに、なぜ、ビッグ アイアン ユーザーは、自分から進んで昔ながらのコンピューティングという恐怖の環境に自らを晒そうとするのでしょうか。もちろん、その答えは、ビッグ アイアン ハードウェアおよびビッグ アイアン ソフトウェアには、業界標準の他社製品に対して一定の優位性が依然としてあるということです。少なくとも、上述の3つのモダナイゼーション アプローチによってそれらに投資し続ける企業ではそうなのです。Kyndryl社の調査はこのことを裏付けています。

Kyndryl社は、「メインフレーム上でのモダナイゼーション」プロジェクトにより(IBM i サーバー上でのモダナイゼーションも含めて)、「これまでに収益性が9%向上し、統合および移行のプロジェクトでも、収益性が11%向上した」と述べています。「調査に回答した組織は、平均で年間2,500万ドルのコスト削減を見込んでおり、どの方法を選択してもモダナイゼーション戦略により高い投資収益率が得られるという議論がさらに加速しています」 Kyndryl社の調査に回答した500社のビッグ アイアン ユーザーは、モダナイゼーションの取り組みを通じて合計で年間125億ドルものコストを節減していると同社は述べています。

IBM i およびSystem Zメインフレームのモダナイゼーションへの主なアプローチ(画像提供: Kyndryl社)。

「メインフレーム上でのモダナイゼーション」を選ぶ顧客は、主な利点として、セキュリティ、パフォーマンス、および信頼性を挙げています。

「メインフレーム上でのモダナイゼーション」アプローチを選んでいるビッグ アイアン顧客の2/3は、主要な目的として、パフォーマンスとキャパシティを最適化し、ソフトウェアを合理化すること、つまり、どのアプリケーションを維持し、置き換え、廃止し、あるいは統合するかを選択することを挙げているとKyndryl社はレポートで述べています。また、「メインフレーム上でのモダナイゼーション」派の56%の間ではDevSecOpsの手法が人気となっており、48%は、パフォーマンスを向上するために、ビッグ アイアン アプリケーションを最新バージョンに再コンパイルしているということです。

「他プラットフォームとの統合」アプローチを選ぶビッグ アイアンのショップは、データの可用性の向上とイノベーションを求める傾向があったとKyndryl社はレポートで述べています。具体的には、モダナイゼーションへのアプローチとして「他プラットフォームとの統合」を選んでいるショップの48%は、「より迅速にイノベーション」できることを挙げており、41%が柔軟性の向上を挙げているということです。また、48%は、ビッグ アイアン データをクラウド アプリケーションと統合していると述べており、一方、24%が、ビッグ アイアン アプリケーションをクラウドと統合していると述べています。

「メインフレームからの移行」派のショップは、「その戦略によって新たなセキュリティ上の懸念が生じたとしても」、市場投入までの時間の短縮やパフォーマンスの向上を主な理由に挙げているとKyndryl社は述べています。レポートでは、「メインフレームからの移行」派のショップの51%が、市場投入までの時間での優位性を求めており、47%がパフォーマンスの向上を挙げており、44%は「イノベーションの向上」を求めていることが明らかになっています。

ただし、調査回答者は、クラウドへの移行については慎重な姿勢も示しているようです。56%はセキュリティについて懸念を抱いており、46%はコストが予測不可能であることを懸念しています。とは言うものの、クラウドの魅力は強力であり、ワークロードをクラウドへ移行しないという回答者は5%のみでした。

レポートには、中南米の金融サービス企業のCTOの発言が引用されています。「メインフレームには、膨大な量の財務データを扱い、処理するキャパシティがあります。しかし、クリティカルではないアプリケーションの一部をクラウドに移行することで、データを取得、保存、分析する際のワークフローを合理化することができました。」

モダナイゼーション プロジェクトを完了するのに必要な時間と費用は、調査回答者全体にわたって「驚くほど一貫していた」とKyndryl社は述べています。モダナイゼーション プロジェクトの平均コストは、組織のIT予算の3.9%であり(「メインフレームからの移行」の3.7%が一番低く、「メインフレーム上でのモダナイゼーション」の4.3%が一番高い)、完了までの平均的な期間は24か月でした。

ビッグ アイアンのショップは、モダナイゼーション プロジェクトで直面した課題として、同じような課題を挙げています。「メインフレーム上でのモダナイゼーション」派のショップの20%は、計画立案の欠如に苦労したと述べています。18%はパフォーマンス問題を克服するのに苦労し、16%はコード品質に影響が及んだと述べています。「他プラットフォームとの統合」群では、22%が不十分な専門知識を挙げ、18%が不適切なベンダー ソリューションについて不満を述べており、15%が、スコープ クリープないしはプロジェクトの予算や期間の超過を挙げています。「メインフレームからの移行」派では、スコープ クリープないしはプロジェクト超過は20%が挙げており、不十分な専門知識は17%、およびテストの負担は15%が挙げています。

調査結果は、メインフレームが「依然として世界経済の技術的バックボーンの1つである」ことを示しているとKyndryl社はレポートで述べています。「メインフレームによって、世界中の企業と政府は大量のデータを処理でき、同時にミッション クリティカルなアプリケーションを実行できます。数十年前も現在も同じように、多くの大手企業にとってメインフレームは強力で信頼性の高い、安全な選択肢です。」

もちろん、こうしたことは、IBM i サーバーの長年のユーザーなら、すでに誰もが知っていることです。しかし、IBM i 顧客向けのサービスの世界最大のプロバイダーの1つであるKyndryl社の口からそれを聞けるのは、やはり喜ばしいものです。

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