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IBMi海外記事2024.05.28

IBM i アプリケーション開発、言語の使用状況について、2024年版市場調査レポートから読み取れること

Alex Woodie 著

IBM i 開発者は、新たなアプリケーションを作成するために、現在、どのような言語、開発環境、およびツールを使用しているのでしょうか。今もなおSEUを使用しているユーザーは、どれくらいいるのでしょうか。そして、数多くのWebベースの開発ツールの中で、VS CodeやMerlinはどんな具合でしょうか。Fortra社は、2024年版の市場調査レポート 「IBM i Marketplace Survey」で、そのような疑問に答えようとしています。その結果には、驚くようなものもあるかもしれません。

Fortra 社は、2023年末に、世界各地の270名のIBM i プロフェッショナルを対象に、「2024 IBM i Marketplace Survey」に向けての調査を実施しています。その調査レポートは1月に公開されており、 こちらからダウンロードできます。

大半の部分に関しては、Fortra社からの質問は毎年同じです。そうすることにより、長い年月の経過とともにIBM i の使用状況がどのように進化し、変遷しているかについて把握しやすいという利点があります。しかしながら、2024年版レポートでは、アプリケーション開発ツールおよびIDE(統合開発環境)の使用状況についての調査方法に関して、少し変更が加えられたようです。

Fortra社(旧HelpSystems社)は、2018年版レポートから、IBMのIBM i 向け主力IDEであるRational Developer for i(RDi)を使用しているかどうかについて質問してきました(もっとも、RDiは、両社のパートナーシップの一環でFortra社によって開発されていますが)。2024年版レポートでFortra社は、「どのようなアプリケーション開発ツールを使用していますか」と質問しています。

結果としては、実に80%ものユーザーが、ADTS(Application Development Tool Set: 適用業務開発ツール セット)を使用していると回答しました(これには、レガシーなグリーンスクリーン プログラミング ツールのSEUおよびPDMが含まれ、また、長年、アップデートがなされていません)。

どのようなアプリケーション開発ツールを使用していますか。
2024年版 「IBM i Marketplace Survey」。

IBM i チーフ アーキテクト兼CTOでDE(Distinguished Engineer)のSteve Will氏は、ADTSの根強さについては達観しているようでした。

「クライアントと話したところでは、概して、彼らの大半は大規模な開発プロジェクトを行うのにADTSは使用していませんが、顧客の80%では、SEUやPDMをちょっと立ち上げて、何かをすばやく処理するというニーズがまだあるということです」と、Will氏らが調査結果の解説を行った1月23日のウェビナーの中で述べています( YouTubeでご覧になれます)。

昨年6月、オープンソース担当IBMビジネス アーキテクトのJesse Gorzinski氏が、SEUの提供は終了した方がよいかどうかを IBM i コミュニティに尋ねた ところ、投票者の約72%は、「まったくそう思わない」または「あまりそう思わない」と回答していたようです。これに対して、「まったくそう思う」または「ややそう思う」は28%でした。Allan氏とGorzinski氏はいずれも、IBM i からSEUを取り除くという方に投票しています。

RDiは、調査回答者の56%によって使用されていますが、前年からは12%減となっています。RDiの最盛期は、71%がRDiを所有していると回答した、2022年版レポートだったようです。

Fortra社によれば、VS Codeを使用している調査回答者は、37%に上ったということです。このことは、このオープンソース製品が、現在のところ市場で実際に成功を収めていることの裏付けとなっていると言えるでしょう。VS Codeの成功は、IBMがコンパイラーから デバッガーを切り離す ことを決めたことだけでなく、Liam Allan氏の Code for i(開発者がILE言語でプログラムを書くことを可能にするVS Codeプラグイン)によるところも大きいように思われます。Fortra社がVS Codeについて尋ねたのは今年が初めてですが(それゆえ確かなデータはほとんどありません)、VS Codeが幅広く採用されたことも、RDiの使用率減少の一因になっているようにも思われます。

しかし、もっと意外に思われるかもしれないのは、Merlinのシェアがたった1%だったことです(Merlinは、VS CodeスタイルのWebベースの開発環境と、Git、ARCAD社のIBM i 変更管理ツーリング、およびKubernetesを組み合わせた、IBMとARCAD Software 社との共同オファリングです)。Merlinは、2022年5月に 鳴り物入りで発表され、「何百もの」顧客が購入していると、IBMは 9月にIT Jungle』に述べています。

Will氏はすべて冷静に受け止めているようです。「クライアントの半数以上がRDiを使用しているというのは、素晴らしいことです」と彼は述べます。「開発ツールとして信じられないほど強力なVS Codeが広く用いられていることも、目にすることができて喜ばしく思います。改めて言いますが、これらの数値の合計は100%にはなりません。ほとんどが複数のツールを使用しており、たまに、そうしたADTSツールを使用することが必要になるからです。RDi、Visual Studio Code、Merlinといった別のツールにそれらの機能を組み込んで、SEUやPDMを使用する必要がなくなるようにした方が良いとは思いますが、それでもやはり、それらのツールは除去しません。」

IBM i での新たな開発に現在どの開発言語を使用していますか。
Fortra社 「2024 IBM i Marketplace Survey Results」

言語の分野は、ある程度、穏やかだったと言えるでしょう。2022年末に 突然、RPGの使用率が「飛躍的に増加」 して93%となった1年後、つまりFortra社が同調査を実施した2023年末には、IBM i プラットフォームで最も人気のこの言語の使用率は、89%へと減少しています(それでも、2022年以前の使用率の中では最高値です)。

使用率が前年比で4%減となった言語は、他にも2つありました。CL(Control Language)は66%へと減少し、COBOLは16%へと減少しています。また、他のいくつかの言語も、小幅な減少を記録しています。SQLは1ポイント減の79%、PHPは3ポイント減の18%、Node.jsは2ポイント減の18%、C++は2ポイント減の9%でした。Javaは42%で横ばい、Pythonは20%に留まりました。.NET / C#を使用しているIBM i 調査回答者の割合は、1%増えて10%となり、Perlは1ポイント増の2%となっています。Rubyは横ばいの1%でした。

言語の使用率の増加として報告されたのが、.NET / C#とPerlの1%増だけであったこと、「その他」のカテゴリーが6%で変化がなかったことからすると、論理的には、2023年末の時点で、全体として言語の使用が少し統合されたということになるでしょう。言い換えれば、アプリケーションを開発する際に平均的な開発者が使用する言語の数が少なくなっているということです。

使用される言語のわずかな減少については、Fortra社は気にしていないようです。同社は「Survey Results」で、複数の言語を組み合わせて使用している開発者が増えているように思われると述べています。フリー フォームRPGは、「他の言語のような見た目をしていて他の言語のように動作することにで、教えるのも容易になる」と、2023年版および2024年版レポートで同社は述べています。「このことは、IBM i の将来にとって有益なことであり、IBM i スキルのギャップを埋める手助けとなることもできます。」

Will氏は、フリー フォーマットRPGが幅広く採用され続けていることについて触れ、そのことは、この言語がより強力になり、より幅広く使われるようになるための助力となると指摘しています。

「そのように、若手にとって格段に覚えやすいフリー フォーマットRPGを利用できるというのは、素晴らしいことです」と彼は述べています。「固定フォーマット、さらには非ILE RPGを使用している面々にどう対処したらよいかについてはまだまだ考える必要があります。とはいうものの、そうした言語は彼らのビジネスを動かしているものであり、それらを追い払うべき理由もありませんが、それらを前進させることにメリットがあることは間違いありません。」

RPGは今もなお、IBM i 上で非常に幅広く使用されていますが、オープン言語の採用がもっと増えることも予想できるとWill氏は述べています。

「人々が新しいものを書き続けているのを目にするのは素晴らしいことです」と彼は述べます。「しかし、JavaからPython、PHP、Nodeなどに至るまで、非常に幅広く使用されている、一体となったいわゆるオープン言語の一群があります。そして、サービス指向のモダナイゼーションが行われることが多くなるにつれて、ますます多くのオープン言語を目にするようになるでしょう。」

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