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IBMi海外記事2021.04.14

流れるままに: Flowによる、終わりのないモダナイゼーションの利点

Alex Woodie 著
トップイメージ図(流れる)

「ビッグ バン」アプローチは、ここのところ、ITプロジェクト管理の世界で支持を減らしつつあるようです。一方、Micro Focus社による新たな調査によれば、レガシー アプリケーションの継続的改善または「終わりのないモダナイゼーション」というコンセプトを取り入れている組織は、レガシー アプリケーションの全面的リプレースまたは全面的なリライトを試みる組織に比べて、より優れた成果を挙げているそうです。

この調査は、 Standish Group社によって実施され、12月上旬にリリースされました(Standish Group社は、「 Endless Modernization: How Infinite Flow Keeps Software Fresh(終わりのないモダナイゼーション: Infinite Flowによってどのようにしてソフトウェアのフレッシュさが保たれるか)」レポートの作成を Micro Focus 社から受託しています)。この調査は、ITプロジェクトの成功と失敗の背後にある条件やパターンのドキュメント化を目指した、Standish社の長期に及ぶ「Chaos Report」シリーズが基になっています。

新たに生まれる需要に応えるべく、クリティカルなビジネス アプリケーションのモダナイズを試みる組織が増えるにつれて、最も高い成功の可能性をもたらすベスト プラクティスを採用することに期待が寄せられています。そうした組織が検討するべきである、新たに生まれたベスト プラクティスの1つは、継続的改善またはInfinite Flow方式(終わりのない流れ。非プロジェクトベースのソフトウェア開発実装環境で、連続的プロセスを通じてソフトウェア開発を管理する手法)であると、Micro Focus社のプロダクト マーケティング担当ディレクター、Ed Airey氏は述べます。

「ここ数年の間に従来型のプロジェクト管理で起こったことは、このような取り組みが指揮統制型の構造になっているということです。始まりと終わりがあり、プロジェクトは完結します」とAirey氏は述べます。「しかし、ソフトウェアというのは、特にこのようなデジタルの時代では、ありとあらゆる場所に遍在しています。ソフトウェアは、言ってみれば、常に進行しています。必ずしも終了日があるわけではないのです。Standish社がまさにこのレポートで、連続的または継続的なモダナイゼーション アプローチを推奨しているのは、そのような理由からです。」

アプリケーションのモダナイゼーションにInfinite Flow方式が適用された場合、プロジェクトは小さく始まりますが、その過程でより大きくなって行きます。「Infinite Flow方式は、多くの点で、プロジェクト デリバリー方式と対極的です」と、Airey氏は『 IT Jungle 』に述べます。「アジャイルおよびDevOpsの戦略から受け継いでいる点が数多くあり、より大きなプロジェクトを最小コンポーネントに分解し、より迅速に具体的な価値を企業に還元することが可能です。」

コード レベルでは、Infinite Flow方式をベースとするモダナイゼーション プロジェクトの特徴は、アップグレードの対象となる、モノリシックなアプリケーションの部分を開発者が選択する点にあります。これらのアプリケーション コンポーネントに含まれるビジネス ロジックは、その後、多数のマイクロサービスに組み込みし直されます。これらの独立的なマイクロサービスは、迅速に再構築されて展開されるため、企業およびITチームがより迅速に機能をテストおよび検証することができ、よりターゲットが絞られた機能性や全体的なアジリティの向上につながるフィードバック ループがもたらされます。

Standish Group社のレポートでは、アプリケーション モダナイゼーション プロジェクトにInfinite Flow方式を採用した組織で達成された成功レベルと、より従来型のウォーターフォール方式を採用した組織で達成された成功レベルを比較検討しています。レポートのデータは、Standish社のCHAOS 2020データベースからのものであり、25年以上にわたって同社が追跡調査してきた50,000件を超えるプロジェクトが反映されています。

プロジェクト タイプ別のモダナイゼーションの成果

また、「モダナイゼーション」成功の定義(予算通り、時間通り、顧客満足)によっても、他のプロジェクト タイプに比べて、Flow方式のモダナイゼーション プロジェクトの方がはるかに良い結果を挙げていることが示されています。この図は、CHAOS 2020データベースの50,000件のプロジェクトをベースに作成されたものです。

Standish社は、選択したITデリバリー方式別の、アプリケーション モダナイゼーション プロジェクトの成功率および失敗率を追跡調査しました(出典: 「Endless Modernization: How Infinite Flow Keeps Software Fresh」)。

この調査によれば、ソフトウェア アプリケーションをリプレースし、スクラッチ開発に取り組んだ組織では、成功率は26%、失敗率は20%という結果が示されているようです。これに対して、「Flow方式のモダナイゼーション」を採用する組織では、成功率は71%、失敗は1%のみでした。

また、レガシー アプリケーションを、商用オフザシェルフ(COTS)のビジネス アプリケーションへと全面的にリプレースすることを選んだ組織では、成功率は44%でしたが、また、失敗も20%でした。

アプリケーションの全面的なリライトやCOTSによるリプレースを伴うモダナイゼーション プロジェクトの5件に1件が失敗に終わる原因としては、主として、レガシー アプリケーションが実際にどのような処理を行っているのかについての理解不足が考えられるとAirey氏は述べます。

「考えてみれば、多くの失敗は、きちんと理解していないことによって引き起こされているようです。また、一部には、以前に使用していたアプリケーションのドキュメンテーションによって引き起こされているケースもあるようです」と彼は述べます。「そのアプリケーションがどのように機能するのかについて十分に理解できていないまま、それをリライトするプロジェクトに着手するというのは、かなり危なっかしいと考える人がほとんどでしょう。」

「求められるのは、価値の増加、顧客満足の向上、コストの低減です」と、Standish Group社の創業者であるJim Johnson氏は述べます。「役割モデルについての幅広い調査および観察を踏まえて言えば、Infinite Flow方式へ移行することで、こうした3つのニーズはすべて満たされると考えられます。」

Infinite Flow式のITデリバリー方式
Standish Group社によれば、Infinite Flow式のITデリバリー方式は、オーバーヘッドを大幅に削減します(出典: 「Endless Modernization: How Infinite Flow Keeps Software Fresh」)。

Standish社のレポートがリリースされたのは、競合企業である Rocket Software 社による同様のレポートが2020年に一足先にリリースされてから、しばらくしてのことでした。 IDC 社によって実施され、 9月にリリースされたRocket Software社のレポートで示されたのは、レガシー アプリケーションをモダナイズする方が、それに取り組む組織にとってリスクがより少ないだけでなく、長期的にはコストが少なく済むということでした。

Micro Focus社のレポートでは、従来型のウォーターフォール方式に対して、Flowベースのモダナイゼーションの利点に重点が置かれているようにも見受けられますが、全面的なリライトやリプラットフォームを実施するリスクとメリットに関しては、Rocket社の調査と同じような結論に達しています。これはAirey氏にとって驚きではないようです。

「アプリケーションをリライトしようとしている場合は、成功の可能性は、あまり高いというわけではありません」と彼は述べます。「アプリケーションのリライトを試みたものの、うまく行かなかったクライアントがいますが、結局、戻って来て気付いたのは、やはり、長い時間を掛けて積み重ねてきた成果を足掛かりとすることで、同じくらいの成功は収めることができるのかもしれないということでした。もしかしたら、さらなる成功を収めることさえできるのかもしれません。」

Micro Focus社は、世界最大手のCOBOLツールのプロバイダーの1つですが、同社が主に重点を置いているのは、おそらくSystem zメインフレームです。しかし、同社はIBM iシステムおよびRPGアプリケーション向けのモダナイゼーション ソリューションも手掛けています。これらの伝説的な IBM システムは両方とも誤解されているとAirey氏は述べます。

「古いものは悪く、新しいものは良いという認識は間違っています」と彼は述べます。「より古いというだけで、必ずしも価値がないというわけではなく、そのような認識は、見当外れであることがほとんどです。」

これらのプロプライエタリなIBMシステムは、デジタル トランスフォーメーションを急ぐ中で、見落とされてしまいがちです。無理もないことですが、どの組織でも、コアとなるアプリケーションを新たな需要やビジネスの新しいやり方に適応させたくてウズウズしています。多くの場合、企業の存立が懸かっているからです。けれども、「急いては事をし損じる」ということわざもあります。

「そうしたことが、このような発言や考えにつながるのだと思います」とAirey氏は述べます。「ビジネスの変革について考えようとすると、やはり、あのCOBOLアプリケーションをC#でリライトすることからやり直すか、Amazonの AWS サービスを使用してあのアプリケーションをリライトすることからやり直すということになるはずです。

「もちろん、別の考え方もあります」と彼は続けます。「そして、そうした考えの一部は、組織が立てる戦略に影響を及ぼすと思います。しかし、ともに歩んできた私たちの顧客の多くも同感していただけることだと思いますが、私たちが強く言いたいのは、今あるものを活用し、今あるものを段階的にモダナイズさせることによって、業務運営を危機にさらすことなく、ずっと早く目的を達することができ、より小さいコストで成功の可能性をぐっと高めることができるということです。調査の数字でも優勢です。」

このレポートのダウンロードは、 こちらで申し込むことができます。

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